更新日:2023-10-27 06:00
投稿日:2023-10-27 06:00
婚約者が見抜いた大規模工事
私の問いに、彼は、
――ああ、弓香が楽しみだと言っていた大きな桜がある空き地、来年には潰されて別のマンションが建つらしい。桜も伐採されて、日当たりも悪くなるらしい。工事中は騒音に悩まされることになる。あの物件は内見した時から、僕は反対だったろう?
――ええ、『ここはあまりいい感じがしない』って、最後まで反対していたわね。
――ずっと気になっていて、再度、不動産屋に出向いたんだ。もちろん真正面から聞いてもムダだろうから、かまをかけた。
『近隣に住んでる親戚から空き地の噂を聞いた』って……。そうしたら、大規模工事のことを白状した。払っていた敷金礼金も全額返してくれたよ。
――うそ……。
――ちょっと時間がかかるけど、新居はじっくり探そう。
そう提案してくれたんです」
柔らかな唇を受けながらも…
――驚きました。これも英明さんの霊感がなせるわざでしょうか?
「そこまでは分かりません。ただ……私としては、元カレの件を話題にされず安心しました。
英明さんの肩に身を預けると、彼が優しく手を握ってきたんです。
そして、
――弓香を抱きたい。
顔を引き寄せられ、キスをされました。その温かさ、柔らかさに胸が熱くなって……。
(英明さんの柔らかな唇……)
私はキスを深めながらも、正直、気が気ではありません。
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