そんなえりのボスのもとにはウワサを聞きつけ、今日も悩みを抱えた女性が、ふらりと立ち寄ったようですよ。
1. ここ最近、おならやげっぷが続いているんです
きょうは、真理さん(28歳女性/仮名)の方からご質問をいただきました。
「最近、自分のおならやげっぷが気になっています。回数が多く、おならはニオイも気になるんです」
真理さんは、伏し目がちに言いました。
「昔からそうだったの?」
「いいえ。ここ最近気になるようになったんです。もちろん人前では気をつけているんですが、家族に聞かれるのも嫌だし、ストレスがたまります」
えりのボスは、深くうなずきます。
「そうよね。平気でおならやげっぷを出す人って、普通はデリカシーがない人と思ってしまうわよね」
「ええ、下品な人というイメージを持たれるのが怖くて」
おならやげっぷで精神的にも参っている真理さん。これは放っておけません!
2. おならやげっぷが出るメカニズム
「一般的に『おなら』と言われているものは『腸内ガス』のことなの。
口からとり込んだ空気が大半で、その割合は70~90%。窒素、水素、二酸化炭素、メタンなどで構成されているの。そして、げっぷも同じように口から入った空気が大半だわ」
「へえー! 口からの空気がほとんどなんですね」
「大半は無臭のガスなのよ。ただ、食事内容によっても成分の割合は異なることがあるわ。とくに炭水化物、タンパク質、脂肪などがおならの量や回数、ニオイに関係してくるの」
「食事がとても大事なんですね」
「そう。おならやげっぷが出るのは、腸の健康状態のサインなのよ。
あまりにも多くのおならやげっぷが出る場合や、おなかの痛みなどを伴う場合は、病気が原因の場合もあるから、病院で診てもらったほうがいいわね。
それに、『小腸内細菌異常増殖症』という疾患が原因の場合もあるわ。これは『SIBO(シーボ)』と呼ばれる場合もあるの。聞き慣れないかもしれないけど、さまざまな要因で小腸内の細菌が増殖して、栄養を分解してガスを生み出してしまう疾患なの。
原因不明の下痢、便秘、腹痛やおなかがゴロゴロするなどの症状は、SIBOが原因の可能性があるのよ」
3. SIBOにおすすめの低FODMAP(フォドマップ)食事法
SIBOにおすすめなのが、高FODMAP食を控える食事方法です。
「FODMAP」とは、発酵性の糖類、オリゴ糖、二糖類、単糖類、糖アルコールの頭文字をとったもので、小腸で消化吸収されずに大腸で発酵する糖質の総称です。
低FODMAP食は、FODMAPを多く含む商品を控え、不調原因を特定することで腸内環境の改善をめざす食事療法です。
食品アレルギーの食事制限とは異なり、長期的に続ける方法ではなく、2~4週間ほどの短期間の食事制限を行います。
低FODMAP食品の一例をご紹介します。
<低FODMAP食品の一例>
・穀類:米、玄米、オート麦、米粉類
・野菜類:ナス、トマト、ニンジン、キュウリ、ジャガイモ
・乳製品:バター、カマンベールチーズ、チェダーチーズ
・果物:ミカン、バナナ、イチゴ、キウイ
・飲み物:緑茶、紅茶、コーヒー
低FODMAP食の目的は、不調の原因の特定です。食事制限後、徐々に普通の食事に戻しながら、おなかの不調に関わっている原因を見つけ出します。
食事制限の最中は、栄養の偏りや便秘に気をつけましょう。
4. SIBOの受診目安を知ろう
SIBOの自覚症状は次の通りです。
・おならやげっぷが多い
・おならや便が臭う
・おなかや胃部の不快感
・便秘、または軟便
・牛乳を飲むとおなかをこわす
・排便に時間がかかる
・抑うつやストレスを抱えている
このほかにも、胃腸炎を発症したあとにSIBOが発症しやすいといわれているので、もし最近胃腸炎になったことがあるなら、SIBOの可能性もありますので、以上の症状が複数当てはまる場合は、医療機関の受診を検討してみてください。
SIBOの原因は、消化不良、感染性胃腸炎、神経障害、甲状腺機能低下症など多種多様に渡ります。
まずは消化器内科を受診し、呼気検査、内視鏡検査、培養検査などを受けましょう。
5. 乱れた生活習慣を正すことも大事
「SIBOは、『間食が多くて空腹の時間が少ない』『寝る前に食べる・夜食が多い』『お菓子の食べすぎ』といった習慣がある人がなりやすいともいわれているわ。要は、生活習慣の乱れが腸内環境の乱れにもつながるのよ」
えりのボスの指摘に、真理さんはハッとした顔になりました。
「それ、すべて私に当てはまります…。『まだ若いからいいや』と健康管理もしていなかったけど、知らず知らずのうちに不調の原因になっていたのかも」
「そんな生活をしていたら、たとえSIBOじゃなかったとしても、ほかの病気になってしまうわよ。健康管理に年齢なんて関係ないの」
「そうですね。本当に気をつけます。今日はありがとうございました!」
「またなにか悩みごとがあったら、いつでもサロンにいらっしゃい」
すっかり明るい表情に変わった真理さんを、えりのボスは笑顔で見送りました。
★サロン「コクハク」のオーナー えりの
顔と口調は若いものの、年齢不詳。タヌキか妖怪の噂も囁かれる謎めいた主人だが、ココロやカラダ、健康に関する知識はズバ抜けており、何気にハイスペック。ムスメ時代に苦労してるため、自分より“後輩”の女にはしあわせになって欲しいと願っている。愛称は、えりのボス。
(漫画/腹肉ツヤ子)
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<この記事の監修者>
あんしん漢方薬剤師 中田 早苗(なかだ・さなえ)
デトックス体質改善・腸活・膣ケアサポート薬剤師・認定運動支援薬剤師。病院薬剤師を経て漢方薬局にて従事。症状を根本改善するための漢方の啓発やアドバイスを行う。健康・美容情報を発信するMedical Health -メディヘルス-youtubeチャンネルでは、お薬最適化薬剤師として「無駄な服薬はお財布と体の敵!」をモットーに薬の最適な選び方を解説する動画を公開中。症状・体質に合ったパーソナルな漢方をスマホ一つで相談、症状緩和と根本改善を目指すオンラインAI漢方「あんしん漢方」でも薬剤師としてサポートを行う。
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