更新日:2024-06-29 13:59
投稿日:2024-06-29 06:00

久しぶりの海外旅行に出かける

 久しぶりの海外旅行だ。まだ「コロナ」といえばメキシコのビールでしかなかった頃に、友人と台湾へ茶を飲みに行って以来である。

 出かけることも、働くこともままならなかった日々は、月日の経過を実感させず、そのせいでパスポートの期限切れに気付かなかった。もう5年も経っていたのだ。

 渡航1週間前に発覚し、遠征先の福井から都内へ戻って更新手続きを行うという痛い出費を生んだのだが、それはまた別の話――。

 踊り子の仕事は、基本的に10日単位である。連続で10日間働けば土日も休みなしだが、休むと宣言すれば10日間の連休が確定する。つまり、旅行がしやすい。

 それも、混雑するGWやお盆を避けて、安値なタイミングを狙える。というわけで、コロナとほぼ同時にデビューした私は、ようやくその特権を使うときが来たのである。

【海外旅行の前に⇒】ラブホテルに泊まりました。

踊り子が海外へ行く目的といえば…

 踊り子が海外へ行くとなれば、まず思い浮かぶのが美容整形である。二重まぶたや鼻のプロテーゼ、脂肪吸引に骨削り。この仕事をするようになって、整形手術はずいぶん身近になった。

 広告まがいのネット情報ではなく、体験した本人から直接話を聞く。さらに楽屋でビフォア・アフターを目の当たりにすれば、効果も一目瞭然だ。

 その上、漫画家のまんきつさんが『そうです、私が美容バカです。』というコミックエッセイで、自身の「切開リフト」体験を公開したのである。

 これが私の中で、整形に対するイメージを決定的に変えた。なにしろ彼女は、私が直接知る漫画家の中で、いっとう美人だったからだ。

パスポート用証明写真に写った私

 彼女は顔面のたるみを解消するために、皮を目いっぱい耳のほうに引っ張って、余った部分を切除する手術を受けていた。確かに顔を両手で引っ張り上げれば、ほうれい線も、たるんだフェイスラインも、気にならなくなる。

 そして実際に会った彼女は、まさにその効果で、肌がぴーんと張って、過去最高に若々しく光り輝いていた。張りって大事。それに引き換え、最近の私ときたら、目の下の“たるたる”がさらにたるんで、だるんだるん……。

 パスポート用に慌てて撮った証明写真を、忌々しい気持ちで見下ろして、私は香港へと旅立った。

新井見枝香
記事一覧
元書店員・エッセイスト・踊り子
1980年、東京都生まれ。書店員として文芸書の魅力を伝えるイベントを積極的に行い、芥川賞・直木賞と同日に発表される、一人選考の「新井賞」は読書家たちの注目の的に。著書に「本屋の新井」、「この世界は思ってたほどうまくいかないみたいだ」、「胃が合うふたり」(千早茜と共著)ほか。23年1月発売の新著「きれいな言葉より素直な叫び」は性の屈託が詰まった一冊。

XInstagram

関連キーワード

ライフスタイル 新着一覧


癒しの漫画/第52回「一難去って…」
 ベストセラー『ねことじいちゃん』の作者が描く話題作が、突然「コクハク」に登場! 生きものたち、その生きものたちをこよな...
何が大変? できるなら避けたい! 子どものPTA活動で苦労する5つのこと
 子供がいると仕事や家事で忙しいうえに、学校でのアレコレに参加しなくちゃいけなくて……。特にPTA役員に選ばれると苦労し...
ロッカン、ロッカン痛ぇ…!
「ロッカン! ロッカン!」という歌に合わせて、シャカリキに踊っている。その「ロッカン」とは「第六感」のことだ。  ...
一息ついて水音に耳を澄まそう 2023.6.30(金)
 あしたから7月に突入。衣替えが終わったと思ったら、今年も酷暑の予感だって。  季節に追いかけられて、頭がぐるぐる...
「図々しい人=自分の損に過敏な人」を撃退する唯一の方法
 もうここでぶっちゃけますが、図々しい人って良識がない人が多くないですか? 良識がないから図々しいのか、図々しいから良識...
新生活の疲れが出る時期です…自分に甘々!とっておきの疲労解消法6選
 新年度が始まり、3カ月が経ちます(1年単位でいえば半分を折り返しました……)。転職や異動などで今までとは違う生活になり...
「日焼けに注意!」夕映えの“たまたま”からのありがたい一言
「にゃんたま」とは、猫の陰嚢のこと。神の作った最高傑作! 去勢前のもふもふ・カワイイ・ちょっとはずかしな“たまたま”を見...
愛用のティファールを2年で買い替えたわけ 2023.6.29(木)
 先日、2年前に購入したティファールを買い替えました。油を敷いてもフライパンがこびりつくようになり、お鍋の底が傷だらけに...
公共便所どうなる?波紋広がるジェンダーレストイレ問題、誰が我慢すべき
 登場から物議を醸す「東急歌舞伎町タワー」(東京・新宿区)のジェンダーレストイレ。多様性に配慮する目的で作られましたが、...
義親はしょせん他人です! 同居時の付き合い方5つとストレス発散のコツ
 義親と同居話が進んでいたり、既に同居していたりする人の中には、不安やストレスを抱えている人もいるでしょう。義親といって...
ユリ好きな花屋もなんじゃこりゃ!香り・デカい・花粉を克服した新種たち
「斑目ネーサン、これどう?」  花市場の競りがある前日、「チョット変な花」の入荷予定があると、市場のワタクシ担当お...
似合わない服を着るのは罪ですか? 2023.6.28(水)
 北海道で暮らす、まん丸で真っ白な小さな鳥「シマエナガちゃん」。動物写真家の小原玲さんが撮影した可愛くて凛々しいシマエナ...
「梅雨時期の洗濯のコツ」生乾き臭とさようなら、洗剤多めは逆効果です
 梅雨時期になると、ただでさえ面倒な洗濯が余計に億劫に! 外で干せないため部屋干しが増え、生乾き臭に悩んでいる人も多いは...
子育てママの風邪引いたあるある! 市販薬で誤魔化せずゾンビになった私
 ステップファミリー6年目になる占い師ライターtumugiです。私は10代でデキ婚→子ども2人連れて離婚→シングルマザー...
卑しい街を男が独り行く時代は終わったね 2023.6.26(月)
 卑しい街を男が独り行く時代は終わったね。 「夜は短し歩けよ乙女」の主人公のように、どこかで李白老人に会えるかも。...
「俺んとこ、こないか」“たまたま”のクールな流し目にキュン
「にゃんたま」とは、猫の陰嚢のこと。神の作った最高傑作! 去勢前のもふもふ・カワイイ・ちょっとはずかしな“たまたま”を見...