“リアル峰不二子”と運命の出会い。俺どうする?局部のコンプレックス #1

蒼井凜花 官能作家・コラムニスト
更新日:2024-06-28 06:00
投稿日:2024-06-28 06:00

ビジュアル由来の期待を裏切れないと…

――気持ちはお察しいたしますが、男性が気にする一方で、『気にしない』という女性もたくさんいると思いますが。

「ありがとうございます。体より人間性や価値観が大事と言ってくれる女性もいました。ただ、僕の場合は『ルックスから好きになってくれる』ケースが多くて…。

 身長も180センチと高く、筋肉質で野性的な顔立ちのため、その期待を裏切ってはいけないと思うほどに、女性と親密になることを自ら避けていたと感じます。

 そんな僕に転機が訪れたのは、38歳の時です。工務店の社長だった父(58歳)が脳溢血で倒れて入院することとなり、副社長だった僕が急きょ社長になりました。

 社員は20名ほど。父は昔気質の昭和の男ですが、情に厚い部分もあり、皆から慕われていましたね。社長になって気ばかり焦っている僕を見て、古株の社員たちが、『オヤジさんには世話になりっぱなしだった。直樹さん、一緒に頑張りましょう』と言ってくれたのが救いでした。

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人生を変える出会い

 そして、人生を変える出会いもありました。事務員として、玲子さん(仮名/当時33歳独身)という女性が入社してきたんです。

 玲子さんはセミロングの似合うエキゾチック美人で、一目で惹きつけられましたね。白いシャツに紺のタイトスカート、ハイヒールという普通のファッションでも、内面からにじみ出る色香というものがあって…。

 会社を守らねばと意気込んでいた矢先の思いがけない出会い――でも心は複雑でした。前述したとおり、僕は下半身に大きなコンプレックスを抱いていました。

 仕事に邁進している時は忘れることができましたが、玲子さんと出会ってからというもの、悩みの種が芽吹いてきたんです。

 そんな僕の心など知る由もない玲子さんは、フレンドリーに『社長って典型的な細マッチョですね。私、筋肉フェチだから見とれちゃう』とか『雑用でもなんでも言いつけてください。学生時代は体育会系だったので、体力には自信がありますから』なんて、気さくに言ってくれました。

 実際、彼女は仕事も早く有能で、来客の時などいち早くお茶出しをしたりと機転が利く女性。その上、『一人旅やドライブが趣味で、休日には必ず出かけるんですよ』と、旅先でのお土産を社員たちに買ってきてくれたりと、本当に気さくで他人を思いやる一面もあり、すぐに会社のムードメーカー的な存在になりました。

 美人なので、弊社を訪れる取引先のみなさんもひそかに喜ぶのが手に取るようにわかってね…(笑)。いい人が来てくれたと、感謝したものです。

 そんな彼女に、気づけば惹かれていました。社長という立場で社員を好きになってはいけないと思うほどに、恋心が抑えられなくなって…公私混同ですよね」

社長としての覚悟も生まれ

――社長として悩むお気持ち、理解できます。でも、気づけば落ちているのが恋ですものね。続けてください

「おっしゃる通り、気づけば彼女に恋をしていました。38歳になっても独身で女っ気のない僕に哀れみを感じていたのかもしれませんが、5歳も年下なのにアネゴ肌で明るくて、切符がいい。ますます惹かれていく自分がいました。


 古株の社員たちが『落ち着いたら、社長就任祝いと、玲子さんの歓迎会を兼ねて飲みましょう』なんて話も出てきたんです。入院から3カ月後には、父の具合も良くなって、自宅療養ができるまで回復していました。

 職場への復帰は無理でも、実家で母と穏やかに暮らしてくれている。家族が健康でいてくれることへの感謝とともに、ますます『この会社を守っていこう』という覚悟が揺るぎないものになりました。

蒼井凜花
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官能作家・コラムニスト
CA、モデル、六本木のクラブママの経歴を持つ異色の官能作家。近著に「CA、モデル、六本木の高級クラブママを経た女流官能作家が教える、いつまでも魅力ある女性の秘密」(WAVE出版)、「女唇の伝言」(講談社文庫)。
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