嘘でしょ…娘の友達が「キラキラネーム」? 玉の輿セレブの大きな誤算

ミドリマチ 作家・ライター
更新日:2024-08-10 06:00
投稿日:2024-08-10 06:00

【四ツ谷の女・大宮由香31歳 #1】

 都会の中心でありながらも、ハイグレードな住宅街として知られる四ツ谷・番町エリア。

 大宮由香は、小学校に入ったばかりの娘を毎朝マンションエントランスの外まで出て見送るのが日課となっている。

「お母さまー、行ってきまーす」

「行ってらっしゃい、葵さん」

 セーラー服の後ろ襟。錨マークが揺れる小さな背中が見えなくなるまで由香は手を振る。その女の子が、自身の娘だということを近所や道行く人に主張するように。

 人々の羨望が入り混じった眼差しは案の定だ。

 由香はおのずと背筋が伸びる。

 ――カンチガイ? ううん、わかるのよ。

 なぜなら由香はかつて、羨望の眼差しを向ける側の人間だったのだから。

お嬢様学校に通えなかった屈辱

 静岡県の東部地区にある小さな町出身の由香。生まれ育った故郷の小高い丘の上には、地元の名士や駐在員などの子女が通う中高一貫のミッションスクールがあった。

 由香はその学校から見下ろされる場所にある、丘の下の公立中学校に通っていた。所属する卓球部の朝練で地獄の坂登りをしている由香の横を、女学生を乗せたスクールバスは悠々と追い抜いていく…それが日常だった。

 由香はそんな日々に、言いようもない屈辱を覚えていた。

 ――なぜ私はあのバスに乗れないのかな…。

 通学範囲にお嬢様学校があることは知っていた。だけども、その学校に行くという選択肢は家族の誰からも与えられず、気づいたら近くの中学に入っていた。

 実家は町で評判の焼肉店を経営している。そこそこ裕福な家庭のはずだ。だからこそ、両親からその選択肢を提示されなかったことが悔しかった。

 ――私もお嬢様学校に通いたかったのに。

 この屈辱をぶつけるように、由香は大学受験の際、都内のミッション系の女子大学を片っ端から受験し、3Sと呼ばれるお嬢様女子大学の一つに入学した。

 そこで出会ったのが、今の夫・武雄だ。

 彼は今、外資系製薬会社に勤務する研究医である。

夢のようなセレブ生活に

 武雄とはインカレの旅行系サークルで知り合った。同じ年齢ではあったが、どこか大人びていて、時折醸し出す品のいい身のこなしに由香は惹かれた。

 物静かな彼は競争率も低く、由香がアプローチをしたところ、トントン拍子に交際に発展することができた。そして、彼の大学卒業と同時に結婚に至った。

 誰もが憧れる医師の妻の座。

 あまりにも自然な流れで手に入れることができたため、由香は改めて感じた。

 ――やっぱりお嬢様学校に入れば、出会う人も環境も相応しいものが得られるのね。

ミドリマチ
記事一覧
作家・ライター
静岡県生まれ。大手損害保険会社勤務を経て作家業に転身。女子SPA!、文春オンライン、東京カレンダーwebなどに小説や記事を寄稿する。
好きな作家は林真理子、西村賢太、花村萬月など。休日は中央線沿線を徘徊している。

関連キーワード

ライフスタイル 新着一覧


猫って液体なの…? 透明ボウルにも納まる“にゃんたま”君
 土鍋を置いておくと、猫がまあるくなって中に入る「ネコ鍋」現象がありますが、透明ボウルを置いてみたら、やはり!入りました...
愛と美のオンナの幸せを司る「ピンク花」のとてつもない威力
 ある日の昼下がり。  猫店長「さぶ」率いる我がお花屋さんに、この日も悩める子羊がお花を買いにやってまいりました。...
バセドウ病の再燃で疲労困憊…治療はいつも不安と隣り合わせ
 寛解に向かっていたバセドウ病が再燃してからは、ひとことで言うと「地獄」。何をしても良くならない症状が、日を追うごとにひ...
触りたくなるモフモフ! “にゃんたま”写真家の秘蔵の一枚
 世界で一番多くのにゃんたまωを撮影する、猫フェチカメラマン・芳澤です。  「いいえ、我こそがにゃんたま撮影数世界...
やっと妊娠も再び出血…病院から受け入れ拒否をされた妊婦
 みなさんこんにちは。結婚につながる恋のコンサルタント山本早織です。婚活や恋愛のコンサルをしている私自身が結婚後に女性が...
揉め事か!?威厳たっぷりボス猫候補の“にゃんたま”兄貴
 きょうは、小さな港地区のにゃんたま兄貴。  強くて賢くてカッコイイからみんなに一目置かれていて、次期のボス猫候補...
下降気味の運気を爆上げ!南国の愛され花「ハイビスカス」
「アナタ、なんで全身真っ黒なのよ! 喪服なのか! すぐやめなさい!」  先日とある著名な祈祷師の方に会うなり、いき...
2年間のバセドウ闘病生活を振り返る ~兆候から悪化まで~
 この連載もいよいよ終盤です。私は発覚から術後まで、およそ2年間にわたりバセドウ病と闘いました。甲状腺を全摘する手術を終...
おにぎり島をバックに…照れ屋な“にゃんたま”君の記念撮影
 ニャンタマニアのみなさんこんにちは。  きょうは、三角おにぎりみたいな形の島を背景に、にゃんたまω記念撮影にトラ...
指輪をつける位置には意味がある♡今の自分に合う指はどれ?
 指輪を購入する時、「なんとなくこの指にはめたいから」「この指にしか入らないから」など、気軽な気持ちで選んでいる方も多い...
原因は梅雨の湿気…プチ不調を撃退する食生活を栄養士が伝授
 気持ちのいい新緑の季節が過ぎ去ると、やってくるのが梅雨……。誰もが少し憂鬱になりがちなジメジメ時期を、少しでも元気に過...
屋根の上から危険を察知!逃走中の“にゃんたま”君をパチリ
 猫はタンスや冷蔵庫の上、キャットウォークなどの高い所が大好き。  高い所を好むのは、周りを見渡せて安全であること...
父の日に何贈る?「幸運の花」は家族円満のラッキーアイテム
「父の日」が近づいてまいりました。  今年の父の日は6月21日となっておりますが、「母の日」に比べて、この盛り上が...
「手術してよかった」術後半年で楽しく毎日を過ごせるように
 潜在的な患者も含めるとおよそ30〜60人にひとりの女性がかかると言われている甲状腺疾患。バセドウ病は、甲状腺機能が亢進...
猫に見下ろされる快感…裏側から見る“にゃんたま”の愛らしさ
 きょうは裏側から、にゃんたまωにロックオン。  ピンクの肉球、圧のかかったお腹もたまりませんね。  猫飼い...
妊活中の女性が悩む「パートナーの協力」…私が夫にしたこと
 みなさんこんにちは。結婚につながる恋のコンサルタント山本早織です。婚活や恋愛のコンサルをしている私は今、結婚後に多くの...