【独自】大満足の新作すいか「夕焼けセレブ」を収穫! 白州のすいかばか'24~究極のレシピを求めて#3

Koji Takano フォトグラファー
更新日:2024-08-05 06:00
投稿日:2024-08-05 06:00
 すいか生産量全国47位、ごくごくレアな山梨県ですいか作りに情熱を注ぐ「寿風土(こどぶきふうど)ファーム」代表の小林栄一さん(58)さん。
 彼のことを周囲は親しみとリスペクトの意を込めて、「すいかばか」と呼んでいる。すいかばかの“2024年夏の陣”を追う――。

フルオープンのベンツで買いに来る女

 7月中旬、富士山は雲の中にぼんやりと浮かびあがり、頂上は雲をかぶっていた。梅雨明け直前の白州は雲の隙間から少し青空が見え隠れし、都会よりだいぶマシだとはいえ、やや蒸し暑い朝だった。

 20年前、小林さんが家の前に台を置いてすいかを売っていた頃の話。白いフルオープンのメルセデスベンツで乗り付けたサングラスにつば広の白い帽子をかぶった美しい女性が、「いつもの、頂戴」と車を降りずに買っていくようになったそうだ。

「今日もセレブが買いに来た!」

 何の嫌味もなく、その優雅な物腰に、「今日もセレブが買いに来た!」と奥さんと話していたという。セレブが買いに来てくれるそのすいかを「名水セレブ」と名付けた。そして、すいかにこだわりのネーミングを付け始めたきっかけでもある。「セレブ」シリーズは思い入れの強さの塊なのだ。

【究極のレシピを求めて#1はこちら】⇒「寿風土ファーム」代表・小林栄一さんのある決意

緻密な計算によって作られる珠玉のすいか

 販売が始まる時期、畑には大きくなったすいかがゴロゴロと転がっている。一度に収穫となると販売も発送もさばききれない。小林さんのすいかは、それぞれの品種が収穫期をずらし、順に仕上がるよう緻密な計算のもとに植えられている。

 採らずに放置しようものなら強烈な陽に焼かれ、台無しになってしまう。すいかを採り過ぎないよう、そして傷めないよう、一玉一玉、様子を見ながら収穫する。

 傍からは汗をかきかき、ひたすら作業しているように見えるが、すいかばかの頭の中は常にフル回転なのだ。

 やることは山積している。すいかにまんべんなく陽が当たるよう、丁寧に向きを変える重要な作業も日が暮れる直前になった。

 農家は実に大変な仕事だ。特に気候変動が顕著なこの頃は、さくらんぼなど全滅する作物が多いというニュースをよく耳にする。

 生活が苦しくなるのは当然だが、苦労して手をかけたものが太陽に焦がされていくのを見るのは堪らない気持ちだろう。

期待の新作「夕焼けセレブ」の出来栄えは…

 そんな厳しい状況の中、期待の「夕焼けセレブ」は濃厚な甘さとひと際豊富な水分の堪えられないうまさ。重圧と戦ってきたすいかばかを大いに満足させる出来だ。

心底うまい

 大きく口を開けてかぶりつく。「あ~うまいなァ…」と心底思う。今年の小林さんの苦労はすべて、人々が始めに口にするこの瞬間の為にあったのだと思う。

Koji Takano
記事一覧
フォトグラファー
1963年神奈川県横須賀市生まれ。日芸写真学科卒業後、外国航路の船乗りとして世界を股にかけ、出版社勤務を経て、現在はフリーのフォトグラファーとして活動。近著は写真集「東京の風に漂う」(銀河出版)。
http://www.kojitakano.com/

関連キーワード

ライフスタイル 新着一覧


新宿立ちんぼ女性に異変…進む売春のフリーランス化、コスパと開業の裏側
 東京最大級の歓楽街・新宿では、昔から街を歩く男性に対し、女性が性交渉を含む売春を目的に声かけを行う「立ちんぼ」が存在し...
食べたいものを食べるって意外と難しい 2023.6.14(水)
 北海道で暮らす、まん丸で真っ白な小さな鳥「シマエナガちゃん」。動物写真家の小原玲さんが撮影した可愛くて凛々しいシマエナ...
結婚5年子なしで不妊断定の過干渉にイラMAX!職場の深入りLINE3選
 あなたの周りには、人の「プライベート」に関する質問をズバズバ聞いてくる人はいますか? 人には「パーソナルスペース」があ...
「絶対いらない」便利グッズ5選 いいね! に乗っかり買っちゃったけど…
 100年前から比べると、時代はどんどん便利になっていますね! 今日も日本中で便利グッズが生み出されています。でも、中に...
ワイヤー矯正装着2週間、バゲット食らうコツを取得 2023.6.13(火)
「冷やし中華はじめました」の張り紙に心踊る今日この頃。「歯科矯正はじめました」の46歳女が、矯正中の食事について綴ります...
ポケモンカード強奪事件で私がとった行動 息子と上級生宅に乗り込むと…
 ステップファミリー6年目になる占い師ライターtumugiです。私は10代でデキ婚→子ども2人連れて離婚→シングルマザー...
尊い! カリカリタイム中の3つの“たまたま”が青空に映える~
「にゃんたま」とは、猫の陰嚢のこと。神の作った最高傑作! 去勢前のもふもふ・カワイイ・ちょっとはずかしな“たまたま”を見...
ひとりでもふたりでも 夕暮れ時の過ごし方 2023.6.12(月)
 カップルもおひとりさまも、気持ちよく生きられる社会になったらいいな。  いま相手がいるからって、来年も一緒にいる...
「独身に飽きた」40代女の本音、不安の中でも日々を充実させる方法6つ
 40代で独身を貫く女性たち。充実して優雅な生活をしていそうなイメージですが、実は「独身に飽きた」と感じる人もいるようで...
「1年後の自分」はまるで別人かもしれない 2023.6.11(日)
 北海道で暮らす、まん丸で真っ白な小さな鳥「シマエナガちゃん」。動物写真家の小原玲さんが撮影した可愛くて凛々しいシマエナ...
恋愛もセックスも「コスパの悪い幻想」と気がついた若者たち
 コミックや書籍など数々の表紙デザインを手がけてきた元・装丁デザイナーの山口明さん(62)。多忙な現役時代を経て、56歳...
「別に」のレス連呼で一抹の不安よぎる…反抗期の子供あるあるLINE3選
 子育ては大変ですが、可愛い寝顔や「ママ大好き」の言葉に癒されて、明日も頑張ろうと思えるもの。ところが、ある時突然、可愛...
子宮失ったら性交渉は?子宮頸がんサバイバーの更年期障害と性欲と男問題
 42歳未婚で突然、ステージ1B1期の子宮頸がん宣告。悪性度が高いとされる「子宮頸部腺がん」の疑いで、5年前に「広汎子宮...
2023-06-22 18:41 ライフスタイル
【無印】今までのはなんだった?機能的&高コスパのキッチン用品みっけ!
 無印良品のキッチン用品は、どんなスタイルのキッチンにもマッチするシンプルで機能的なデザインが魅力ですよね。物価の値上が...
どんな人にも使える!万能な「励ましテクニック」のコツは視点の切り替え
 友だちが落ち込んでる時、みなさんはどうやって励ましますか? おいしいものを食べに行ったり、話を聞いてあげたり……。 ...
ねえねえ、お弁当ちょーだい! 2023.6.9(金)
 人懐っこい奈良の鹿たち。狙いはやっぱり……。 「ねえねえ、どこから来たの? お弁当ちょーだい」 「コラっ!...