踊り子の実態。温厚な私が苛々するのはなぜ?

新井見枝香 元書店員・エッセイスト・踊り子
更新日:2024-10-28 06:00
投稿日:2024-10-28 06:00

踊り子の生活は慌ただしい

 踊り子稼業は、仕事も休みも10日単位。まだお客さんだった頃の私は、盆暮れ正月でもないのに10日もオフがあったら、定年退職したお父さんみたいにやることがなくて公園でハトにパン屑をあげて時間を潰したりしているのだろうか…などと想像していたがどっこい、実際はオンより慌ただしい。

 公園なんて、たとえ桜が満開でも、立ち止まる暇がないくらいだ。

休息が必要なのに…

 30日ほど連続で働くと、心身共に疲弊しているため、まずは休息が必要だ。その間にも、使った衣装を洗濯したり、溜まった事務仕事を片付けたり、常に体は動いている。

 ある程度回復したら、友人たちと久方ぶりの再会を果たし、スタジオを借りて練習を始め、その頃にはもうオフも後半だ。次の公演に向けて、髪やまつ毛のビューティー系予約を入れたい。

 しかし、すでにいくつかのメディカル系予約が入っているため、スケジュールは分刻み。なんだかまたクタクタだからヒーリング系の予約も入れたいところだが、もはやそれ自体がストレスになるとしか思えない。


【こちらもどうぞ】ぽっちゃり体形を礼賛する男たち

全国各地の診察券は“お祈り”の証し

 コロナをも弾き飛ばす免疫力と、毎晩飲み歩ける体力と、ステージから落ちてもビクともしない、イナバ物置みたいな骨密度の私だが、ここ数年、なんだかんだで医療に助けを求めている。

 練習中に肩甲骨を折って整形外科(人生初の骨折!)、カラコン装着のまま就寝して角膜が傷付き眼科(酔っ払っていた)、ハイヒールで転びまくるため接骨院(筋肉疲労)、お尻のオデキが破裂して皮膚科(原因不明)、歯科は幼少の頃から、教会のミサ並みに通い続けている。

 遠征中だってお祈りは欠かせないから、全国各地の診察券を所有しているほど熱心な信者だ。

 その上、また私はあらたに、別のメディカル系予約を入れようとしている。だって本当にしんどいんだもの。

新井見枝香
記事一覧
元書店員・エッセイスト・踊り子
1980年、東京都生まれ。書店員として文芸書の魅力を伝えるイベントを積極的に行い、芥川賞・直木賞と同日に発表される、一人選考の「新井賞」は読書家たちの注目の的に。著書に「本屋の新井」、「この世界は思ってたほどうまくいかないみたいだ」、「胃が合うふたり」(千早茜と共著)ほか。23年1月発売の新著「きれいな言葉より素直な叫び」は性の屈託が詰まった一冊。

XInstagram

関連キーワード

ライフスタイル 新着一覧


肩こり・腰痛 マッサージに行けない時のホームケアグッズ3選
 パソコンなどの座り仕事の方は肩こり、腰痛、眼精疲労などに悩まされている人が多いのではないでしょうか。  私もこの...
男性同士は褒め合わない?男女で全く違う「褒め文化」の話
 先日、友だちが彼氏とケンカして家出し、我が家にやってきました。とにかく怒ってたので話を聞くと、「私は彼氏を褒めるけれど...
寿司か、シミ取りレーザーか。
 ストリッパーの仕事は10日単位である。会社員時代は7日単位で、そのうちの2日は休む習慣だった。だから10日なら3日くら...
見事!家事育児丸投げ上司を黙らせた ナイフ張りにキレッキレなLINE3選
 思ったことをはっきりと発言する人は、「きつい人」と誤解されやすい傾向にありますよね。  でも、嫌味を感じないほど...
少し冷たくなった空気 気候の変化と人間の進化の夢と現実
 天気はよくても空と運河の青が寒々しい。向こうに見える高層ビルに入ったオフィスは、きっとガンガンに暖房を効かせているんだ...
ポカポカ毛布の上でたまたまを披露!初々しさにきゅん♡です
「にゃんたま」とは、猫の陰嚢のこと。神の作った最高傑作! 去勢前のもふもふ・カワイイ・ちょっとはずかしな“たまたま”を見...
1泊14万円 天国にふさわしい館「ハレクラニ」に泊まってみた
 旅行でハワイに行くとなったら、まず始めに「どこのホテルにするか問題」が浮上します。ラグジュアリーな海向きのホテルにする...
葬儀代は減り、ペットのお悔やみ花は“予算度外視”…弔いは何で図る?
「ありましたっけ?」。今年の秋もそう思うぐらい短こうございました。異常に長い夏は11月のはじめまで続き、いきなりの冬……...
いい夫婦? 出会った頃と見た目が変わっても変わらないもの
 北海道で暮らす、まん丸で真っ白な小さな鳥「シマエナガちゃん」。動物写真家の小原玲さんが撮影した可愛くて凛々しいシマエナ...
異次元の入り口かにゃ? 興味津々の“たまたま”をロックオン
「にゃんたま」とは、猫の陰嚢のこと。神の作った最高傑作! 去勢前のもふもふ・カワイイ・ちょっとはずかしな“たまたま”を見...
どこにたどり着くのか分からない こんな気持ちのときがある
 あっちでもないし、こっちでもないし、でもやっぱりこうだし……。  行って戻ってこんがらがって。結局は同じ場所に戻...
「すっぴん」と“シミ撃退”韓国旅行の話
 知っているようで意外と知らない「ことば」ってたくさんありますよね。「女ことば」では、女性にまつわる漢字や熟語、表現、地...
喪中はがきが届いたら? 寒中見舞い等で相手に心を伝えるためのマナー集
 年末が近づいてくる頃、突然「喪中はがき」が届いて慌ててしまった人もいるはず。  特に、日本の季節やイベントにまつわる...
春巻ではなくハルマキ?自炊疲れでも10分&大さじ4の揚げ焼きで“天国”へ
 餃子サンや焼売サンに比べて、どことなくハードルの高さを感じるのが、春巻サマです。  餡作りからしておっくう。だか...
#3 立川の夫と恵比寿の彼、女の幸せはどちらに?元アイドルが選んだ道は
【#1、#2のあらすじ】  かつて2流アイドルグループの中堅メンバーだった麻美は、現在立川で専業主婦として平凡な毎...
#2 専業主婦がライブ配信にハマるわけ「誰かが私の才能を見出して…」
【#1のあらすじ】  かつて2流アイドルグループの中堅メンバーだった麻美は、現在立川で専業主婦として平凡な毎日を送...