言われたくない! ただのオジサンになった「元彼からの一言」に怒りが…

ミドリマチ 作家・ライター
更新日:2024-11-09 06:00
投稿日:2024-11-09 06:00

【新川崎の女・鈴木 真央41歳 #2】

 新川崎の大規模マンションに暮らす真央。量産型主婦を自覚しているが、かつての真央はバリバリの個性派女子だった。20年前の自分や昔の想い人を懐かしく思い出しながら、今日も日常をやり過ごすのだった。【前回はこちら

 ◇  ◇  ◇

 柔らかな秋の陽ざしが差し込むマンションのキッズルーム。

 ボーネルンドの知育遊具で子供たちを遊ばせながら、真央はその日も幼稚園のママ友たちと午後のひとときを過ごしていた。

「…へぇー、凛ちゃんのレギンス、西松屋のなんだ。かわい~」

「そうなの。うちの子、アンパンマンしか履かなくて。でもね、他のサイズは売り切れみたい」

「あらそうなの。別の店舗ならあるかしら」

「意外としまむらでも売っていたりして? ホームズにあるよね」

平和すぎると言葉の裏を考えてしまう

 いつものように、上澄みの会話。とはいえ、気負わずに、適当なお喋りができるのが楽だ。似たような間取り、似たような価格帯、子育て層がほとんどのマンションの住人だから、金銭感覚や価値観のギャップがさほどないのがいい。

「あ、そろそろ体操教室の時間…」

「そうだ、私も」

 ひとりのママ友が習い事を理由に腰を上げたのを機に解散の流れになった。息子の武が塾から帰ってくるまで特別な用もないので、真央は引き続きこの場で時間を潰すことにする。

「凛ちゃんママは余裕があっていいわね」

 去り際のママ友の言葉。足並みを揃えないことをたしなめられたようで真央は静かにカチンときた。

 ただ、彼女の混じりけのない笑みを見るに、他意はないのだろう。こののんびりした平和な生活は、言葉の裏を考えすぎる余裕を与えられてしまうのだ。

 形だけの笑顔で集団を見送って、つつがなく集まりは終了。そのまま、子どもたちが遊ぶ姿をからっぽの表情で眺める。

 すると、ひとりの男の子が凛に近づいてくるのが見えた。

 年齢は凛と同じくらい。スキンヘッドに近い坊主頭が個性的でかわいらしかった。しかし、見慣れぬ子だ。引っ越してきたばかりの新入りだろうか。しばらく様子を眺めていると、凛が泣き声をあげた。

 真央は子供たちの元へ駆けつける。男の子の親とみられる男性もやってきた。長袖のポロシャツを着た恰幅のいいパパさんだった。

ミドリマチ
記事一覧
作家・ライター
静岡県生まれ。大手損害保険会社勤務を経て作家業に転身。女子SPA!、文春オンライン、東京カレンダーwebなどに小説や記事を寄稿する。
好きな作家は林真理子、西村賢太、花村萬月など。休日は中央線沿線を徘徊している。

関連キーワード

ライフスタイル 新着一覧


これって誘拐ですよね!? 遊んでいたら詰められた恐ろしいご近所トラブル
 ステップファミリー6年目になる占い師ライターtumugiです。私は10代でデキ婚→子ども2人連れて離婚→シングルマザー...
神秘的! 宝石のようなオッドアイの純白“たまたま”に幸福祈願
「にゃんたま」とは、猫の陰嚢のこと。神の作った最高傑作! 去勢前のもふもふ・カワイイ・ちょっとはずかしな“たまたま”を見...
「緑の黒髪」があるなら、白髪の“褒め言葉”は?
 知っているようで意外と知らない「ことば」ってたくさんありますよね。「女ことば」では、女性にまつわる漢字や熟語、表現、地...
日本の美徳すごい!便器に汚物箱…海外で体験した考えられないトイレ事情
 日々の生活に絶対に欠かせないもの、「トイレ」。1日に何度も顔をあわせる存在ですが、実は国によってトイレの形状や使用方法...
2024-02-26 19:03 ライフスタイル
まるで宝探し!話題の木更津コンセプトストアでほっこりした男女の会話
 昨年6月、三井アウトレットパーク木更津(千葉)の隣にオープンした「木更津コンセプトストア」。サステナブルな社会を目指し...
「量と質」どちらを優先するか迷ったら経験値を振り返ろう
 大人になると「量より質」を意識する機会が増えますよね。私の場合、食事に関してはまさにそうなってきた気がします。  そ...
湧き水が心にも沁みてくる 福井県爪割の滝
 北陸地方に甚大な被害をもたらした能登半島地震。  被災された皆様に心よりお見舞い申し上げます。  つらいこ...
貫禄の毛繕い中をパチリ!ありがたいご神体“たまたま”に感謝
「にゃんたま」とは、猫の陰嚢のこと。神の作った最高傑作! 去勢前のもふもふ・カワイイ・ちょっとはずかしな“たまたま”を見...
【2023年人気記事】セックスは嗜好品?子宮頸がんサバイバーの性生活
 2023年は「コクハク」をご覧いただき、誠にありがとうございました。反響の大きかった記事を再掲載します。こちらの記事初...
2024-01-04 06:00 ライフスタイル
近すぎなくていい 毎日は“ゆるい人間関係”に支えられている
 北海道で暮らす、まん丸で真っ白な小さな鳥「シマエナガちゃん」。動物写真家の小原玲さんが撮影した可愛くて凛々しいシマエナ...
【2023年人気記事】吉田沙保里と大久保嘉人は公認? ウロつく女が嫌!
 あけましておめでとうございます。2023年は「コクハク」をご覧いただき、誠にありがとうございました。反響の大きかった記...
【2023年人気記事】新宿立ちんぼ女性に異変…進む売春のフリーランス化
 あけましておめでとうございます。2023年は「コクハク」をご覧いただき、誠にありがとうございました。反響の大きかった記...
【2023年人気記事】ラブホテルに泊まりました。
 あけましておめでとうございます。2023年は「コクハク」をご覧いただき、誠にありがとうございました。反響の大きかった記...
駆け落ちにマッチングアプリ…いつの時代もロマンティックに憧れる
 北海道で暮らす、まん丸で真っ白な小さな鳥「シマエナガちゃん」。動物写真家の小原玲さんが撮影した可愛くて凛々しいシマエナ...
【2023年人気記事】新幹線で帰省、ヤバい親子に遭遇!お互い様の解釈
 あけましておめでとうございます。2023年は「コクハク」をご覧いただき、誠にありがとうございました。反響の大きかった記...
年が明けたところで 正直なんも変わらないけれど…
 北海道で暮らす、まん丸で真っ白な小さな鳥「シマエナガちゃん」。動物写真家の小原玲さんが撮影した可愛くて凛々しいシマエナ...