「専業主婦は文句ばかり」戦略的バリキャリママの主張。家庭と仕事、手に入らないのは“努力不足”でしょ?

ミドリマチ 作家・ライター
更新日:2025-04-12 06:00
投稿日:2025-04-12 06:00

有能だったのに…出産で辞めたのは何故?

 170cm近い長身で、細身のパンツスーツを華麗に着こなす、ショートカットの女性上司だった。仕事もバリバリできて、当時彼女は30代半ばだったろうか。

 自分も将来はあんなふうなキャリアウーマンになりたいと麗菜は憧れたものだ。

 しかし、既婚だった彼女は出産すると、育休取得後にあっさり会社を辞めてしまった。

 麗菜の会社は、制度も充実しているし、育休をとった職員の同僚には祝い金が支給されるなど、子育てに理解のある風通しのいい職場のはずだ。

 ――あんなに仕事が好きだった人なのに、なぜ……。

 育休から復帰せず、2年近く取りきって、そのまま会社を後にした彼女。人生の見本とするはずだったのに、裏切られた気分だった。

 家庭という小さな世界に閉じ込められた結果、やればできることさえ考えられなくなった結果だろうか。

 退社の挨拶に、乳児の子どもと共に来た彼女の顔は、もはや別人だった。イオンの2階で売っていそうな花柄のマザーズバッグを手にしていた。

 彼女を見た麗菜は決意した。晶子を見本ではなく反面教師にしようと。

聞き覚えのある声。そこには…

 絶対に、ああはならない。家庭や子どもを得ようとも、自分を見失わずにいたい。だからこそ、行き当たりばったりではなく、目標を高く見積もって計画的に進んでいきたい――と。

 確固たる決意に燃えながら、時間を忘れ参考書に向き合う。育児に追われていると、勉強の時間でさえくつろぎを感じる。

 その時だった。

「あら……もしかして、麗菜さん?」

 聞き覚えのある声が背後からした。咄嗟に、顔を上げ、振り向く。

 何気なく彼女の名前を思い出したのは、どこかでその姿が視界に入ったからなのかもしれない。

「晶子さん……?」

 反面教師が、そこにはいた。


#2へつづく:バリキャリ→量産型主婦への変貌に愕然「仕事も結婚も…なんて無理だよ」心配ぶった“呪い”はもうウンザリ】

ミドリマチ
記事一覧
作家・ライター
静岡県生まれ。大手損害保険会社勤務を経て作家業に転身。女子SPA!、文春オンライン、東京カレンダーwebなどに小説や記事を寄稿する。
好きな作家は林真理子、西村賢太、花村萬月など。休日は中央線沿線を徘徊している。

関連キーワード

ライフスタイル 新着一覧


ま、まじか…。価格最重視で選んだ大バズり中の「解凍プレート」で牛肉切り落としの運命が変わった!
 話題のコスメや、広告でよく見かける化粧品や日用品。「webでよく見るあの商品、本当にイイの?」「買ってみたいけれど、口...
【45歳からの歯科矯正】ワイヤー矯正終わったのにマウスピースを装着。毎日キッチン泡ハイターが手放せない
 ワイヤー矯正が終了し、1年半装着していた矯正器具を外しました。食後の歯磨きのしやすさに感動するのもつかの間、今度は「マ...
子育ては「完璧主義」だと詰む! SNSの“キラキラママ”に振り回されないためには?
 セックスレスやセルフプレジャー、夫婦の在り方をテーマにブログやコラムを執筆している豆木メイです。
小馬鹿にする人って実は…。隠された心理とメンタルを死守するための3つの対処法
 会話の節々で「私のことを小馬鹿にしてる…?」と感じるような言動をとってくる人、いますよね。今回は、他人を小馬鹿にする人...
「寝香水」って知ってる?【10月前半】調香師が睡眠の質を高めるアロマをタイプ別に解説
 少しずつ寒くなる季節の変わり目は、しっかり睡眠をとって自律神経を整えましょう。今回は、調香師ならではの裏ワザ【幸福感に...
秋の祭りを共に過ごす時間
 このひと時が宝物だなって気が付くのは、  まだまだ先の話。
老化、苦労、ボトックスとも無縁な御年50のハローキティちゃん
 踊り子として舞台に立ち、エッセイも書く新井見枝香さんの月イチ連載です。アラフォーいろいろあるけど、楽しいよ…!
見せ場もばっちりにゃん! プロレスごっこの“たまたま”が可愛すぎる~
「にゃんたま」とは、猫の陰嚢のこと。神の作った最高傑作! 去勢前のもふもふ・カワイイ・ちょっとはずかしな“たまたま”を見...
ほっこり癒し漫画/第82回「ウシオの大変身」
【連載第82回】  ベストセラー『ねことじいちゃん』の作者が描く話題作が、「コクハク」に登場! 「しっぽのお...
「破瓜」って何歳? バージン喪失の意味もある!?
 知っているようで意外と知らない「ことば」ってたくさんありますよね。「女ことば」では、女性にまつわる漢字や熟語、表現、地...
昭和レトロぎゃふん!「ほの字のカレのため、がんばりマッスル」あえての昭和言葉がエモいLINE3選
 令和の今、昭和は遥か昔の時代に感じますよね。40代女性の皆さんは、必死に「昭和感」が出ないよう、細心の注意を払ってきた...
令和のコメ不足、その手があった!価格高騰の秋も使える我が家の対策6選
 新米シーズンに突入し、少し落ち着きを見せているものの、この夏みんなが気になって仕方なかったニュースといえば、令和の米騒...
刺さるわあ…親の“結婚しろ圧”LINE3選。OVER30が涙した「いつまでも元気でいられないから」
 30代半ばを超えると、親からの結婚に対する圧もより一層強くなってきますよね。  LINEに忍ばせた小さなプレッシャー...
自己顕示欲バンザイ! スナックママが教える「自分らしく生きる」ヒント
 みなさん、SNSとかで目立つ人は好きですか? 私はついこの間まで、正直めちゃくちゃ苦手でした。  でも先日、スナ...
東京のごちゃごちゃに疲れる…貸切コンパクトボートで“泡飲み”東京湾クルージングが当たりだった
 都会とは、長年いると何をしていいのか分からなくなる場所である。おいしいご飯もお酒も、どの街にいても味わえる。新しいスポ...
イイ男が大集合♡ 素敵“たまたま”がいっぱいで目の焦点が合わない~!
「にゃんたま」とは、猫の陰嚢のこと。神の作った最高傑作! 去勢前のもふもふ・カワイイ・ちょっとはずかしな“たまたま”を見...