ゴロッとした豚肉に負けない春の香り
日本の食材に感動した劉さんは、さまざまな餡を試作してきました。中国では見かけないミニトマトを生ノリと合わせてみたし、牛肉やキノコも使ってみたそうです。トマトのように水分が多い食材を使うと、餡がべちょべちょになってしまいそうに感じますが、「その汁が口の中ではじけて、うま味がパア~ッと広がるのも楽しいですよ」と笑います。なるほど、それはおいしそう!
ひき肉を使わないところもこだわりです。ロース肉を包丁で粗くカットして、ゴロッとした食感を残す。その方がコシが強くてモチモチした劉さんの皮とのバランスもばっちり。
うま味だって強く感じられます。そこにネギとしょうがの香りが加われば、それだけで十分にごちそうですが、今回は、菜の花もアクセントに使います。代表的な春の食材のほのかな苦味は、ゴロッとした豚肉に負けない存在感を放ちます。
口の中で皮が破けた途端、春の香りがガツンと迫ってきます。決して埋没せず、邪魔をせず、それでいてちゃんと主張をする。最高のハーモニーです。
季節が過ぎれば、ホウレンソウを代わりに使うのもいいかも。菜の花のような苦味はありませんが、その分、穏やかな味わいを楽しめます。これがまた、白ワインに合うのです。
【材料】
・豚肉(ロース) 1枚
・菜の花 15本
・白ネギ 3分の1本
・しょうが 8グラム
・油 15グラム
・醤油 10グラム
・日本酒 30グラム
・塩 8グラム
【レシピ】
1. 菜の花を湯引きする。
2. 湯引きした菜の花をみじん切りにして搾る。
3. 皮を作る。作り方は「劉媽包」と同じだが、お湯の代わりに菜の花の搾り汁を使う。
4. 豚肉を細かくカット。ネギはみじん切り。しょうがは細かく叩く。
5. ボウルに入れて、油、醤油、料理酒を加える。
6. ボウルにみじん切りした菜の花を加えて、よく混ぜる。
7. 塩を加え、よくかき混ぜる。
8. 皮に餡を包んだら沸騰したお湯に入れ、くっつかないよう時々混ぜながら7分ほど茹でる。
今日のダンツマ達人…劉玉栄さん
▽りゅう・りょえい
1974年、中国・遼寧省大連市生まれ。子供の頃から母親に教わりながら料理に親しむ。中国のホテルで働いた後、99年に語学留学で来日し、食材のおいしさに感動。「日本の食材を生かしたお母さんの餃子を作りたい」と研究を始める。現在は同店のマネジャーであり、餃子・饅頭ブランド「劉媽包/LIUMA BAO」の責任者も兼務している。
▽チャイナサーカス
フランス料理の人気店「キハチ」のスタッフだった田端豊巳さんが2016年にオープン。表参道のケヤキ並木を見下ろす絶好のロケーションで、日本の旬の食材を使った中華料理を堪能できる。ワインもスピリッツも国産をそろえ、化学調味料は一切使わない。どの料理もおだやかで、やさしい味わいだ。渋谷区神宮前5―8―5 ジュビリープラザビル2F。
(日刊ゲンダイ2018年4月5日付記事を再編集)
フード 新着一覧