超絶イケメンが披露する妖艶な失恋ソング
前年の全国ツアーなどでは本調子でなく長い前髪で顔を隠していたが、この時は真ん中分けのデコ出しヘアで、到底女性アイドルとは思えないガッツリ太い眉が印象的だった。
「黒い羊」MVでは、平手が憑依する主人公“僕”は女の子とも男の子ともつかない。もしかしたらトランスジェンダー(この場合は生物学的には女性だが、心は男性)という設定の可能性もある。
いずれにせよ、外見は完全に男の子に見えるようにスタイリングされていた。ミニライブでのガッツリ太い眉もその象徴だったかもしれない。
ミニライブの1曲目はカップリングの「Nobody」だった。こちらのMVではオレンジ色の女性的なスーツに、妖艶で色っぽいメイクを施した失恋を憂う“アタシ”になっていた。その艶っぽさは強く昭和伝説のアイドル・山口百恵を想起させた。
しかし、ミニライブでは衣装替えの時間もないため、登場から着用していたCDジャケット写真と同じ「黒い羊」用の緑の衣装とガッツリ太い眉のまま踊る。顔は、ただの超絶イケメンだ。それでも楽曲を通してセクシーな腰使いや指のしぐさといった振付け、表情から色っぽさを醸し出していた。
地元・愛知会場で見せた“口角あげMC”
超絶イケメンが妖艶な失恋ソングを先頭の真ん中で、真剣にパフォーマンスし続ける中、卒業発表前活動が不定期になり、MVには参加していなかった長濱は最後列3列目の真ん中にいた。
前方のイケメン平手の後ろ姿を焼き付けるように見守りながら優しい笑顔で、それでいて軽快に踊っていたのが印象的だった(以前より長濱は、カッコいい平手のパフォーマンスを後ろからこっそり見るのが好きだと言っていた)。
ライブのMCでは様々な事件以降、平手はカメラや対面するファンへの恐怖からか、あるいは楽曲に集中するためか真顔で伏し目がちなことが多かった。
だが、愛知会場のMCでは隣にいた小池美波(21)に、「愛知ということで(愛知出身の平手を見ながら)てち(平手)に聞いたら味噌汁は赤味噌がおいしいということで、赤味噌飲みたいです~」と話題に出され、思わず口角をあげて苦笑いしていた。
その後、他メンバーははけ、長濱ひとりがステージに残った。2曲目は彼女が卒業するにあたり作られた、ソロ曲「否定した未来」だった。彼女への声援は一段と大きくなった。
あまりにキラキラした“ザ・アイドル”という容姿の、弱冠二十歳の長濱が卒業する――当時は、やはり信じきれなかった。
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