欅坂46ドキュメンタリー映画評 平手友梨奈の真実·覚悟·願い

こじらぶ ライター
更新日:2020-09-06 06:05
投稿日:2020-09-06 06:00

ドキュメンタリーであり“音楽映画”でもある

ダンスをすごいと思ってもらえるようになりたいと話していた14歳の平手(上)。紆余曲折を経ながらも数々の神がかったパフォーマンスを見せてきた/TOHO Visual Entertainment 公式YouTubeより
ダンスをすごいと思ってもらえるようになりたいと話していた14歳の平手(上)。紆余曲折を経ながらも数々の神がかったパフォーマンスを見せてきた /TOHO Visual Entertainment 公式YouTubeより

 ゆえに、我々はこの映画で欅坂46の5年間の断片を駆け足で提示されることになる。この形でグループの舞台裏で何が起きていたのかをきちんと把握することは困難だ。

 平手が涙している姿以上に、メンバーと楽しく笑い合っているシーンが素材としてはあったはずだが、構成上ごっそりカットされているようだ。それでもこの映画に一見の価値があるのは、ドキュメンタリー映画であると同時に“音楽映画”でもあるからだ。

 1ミリの嘘も脚色もない、欅坂46が、平手友梨奈が残してきた数々のライブシーン、これこそが欅坂46の真髄であり真実だと確信できる。アイドルの限界を超えた鬼気迫るパフォーマンスは映画館の巨大スクリーンで見るとさらに迫力を増す。これだけで充分、この映画を傑作たらしめる要素になる。

 そして同時に、この映画は平手以外のメンバーたちが平手依存から徐々に脱却し、自分たちだけでもできるのだという自立への成長物語にもなっている。

“休業”という言葉は好きではない

 最後に、平手が欅坂46から“卒業”ではなく“脱退”することになった謎についてこの映画でヒントが提示されていることに言及したい。

 平手は一度2017年末NHK紅白歌合戦後に、メンバーたちに「グループから“離れたい”」旨を打ち明けている。彼女は“休業”という言葉は好きではない(使いたくない)とも言った。

 “休業”ではメンバーやファンが当然“復帰”を前提に待ってしまうからではないだろうか。ただしその際はもちろん、メンバーたちから全力で止められ、平手は初出演にして初主演映画であった「響-Hibiki-」といったソロ仕事に打ち込むなどし、部分的に欅坂46の活動を休止しながらも、グループに恩返しするために同年下半期には復帰していた。

欅坂46から離れた状態で寄り添うという選択

 平手は今度こそ本当にグループから脱退する今年1月の初めに、メンバー1人1人に別れの挨拶をした。この時は、メンバーも平手のあまりの消耗ぶりに全力で止めることはできなかったのだろう。最初に“離れたい”と思ってから2年も踏ん張った。とうとう限界が来た。それでも欅坂46から完全に決別できる“卒業”という言葉は使わなかった。

 自身の口からはラジオで「グループから“離れる”ことになりました」とだけ発した。誰よりも欅坂46を愛し、欅坂46のために全てを捧げてきた平手らしく“卒業”とも“脱退”とも言わなかった。もちろん、下手な期待を持たせる“休業”という言葉も使用していない。ただ、グループから“離れた”状態でグループと同じ事務所に寄り添うように個人として残った。

改名からその先の未来

 欅坂46のグループ改名は、現役メンバーが平手のいた欅坂46にとらわれず前を向くための発展的選択であると同時に、その意図はなくとも、平手が欅坂46を振り返り続けることなく女優として、表現者として自分のためだけに生きる契機になるのではないかと思う。

 そして平手が背負い続けた重荷を心から降ろすことができるのは、改名したあかつきに、平手依存から脱却したメンバーたちによる新グループが大成功を収めた時だろう。平手のためにも、そしてもちろんメンバーたち自身のためにも、そうなるよう願っている。

こじらぶ
記事一覧
ライター
ジャニーズ、秋元康系女性アイドル、ローカル、地下アイドル等数々の現場を経験。Xでもご意見を募集しております。

関連キーワード

エンタメ 新着一覧


広瀬アリス「結婚願望ない」発言の意味深 大倉忠義とは破局報道…体調問題はどうなった?
 2022年に交際が明らかになった広瀬アリス(29)と関ジャニ∞改め「SUPER EIGHT」の大倉忠義(38)。2人の...
2024-04-28 17:03 エンタメ
大谷結婚モロ被りの不穏も何のその!各世代イケメン網羅のキムタクドラマ
 木村拓哉(51)主演ドラマ「Believe-君にかける橋-」(木曜21時、テレビ朝日系)がスタートしました。待ちに待っ...
中森明菜の配信復活で注目されるもう一人の歌姫…ちあきなおみは“生ける伝説”に
 自身のYouTubeチャンネル「AKINA NAKAMORI OFFICIAL」(チャンネル登録者数74.6万人=4月...
2024-04-27 17:03 エンタメ
永瀬廉は大人の色気、髙橋海人はヘタレの真逆 確かに築くキンプリ2人体制
 昨年より、2人体制となったKing & Prince(以下、キンプリ)の永瀬廉(25)と髙橋海人(25)。4月期に始ま...
こじらぶ 2024-04-27 06:00 エンタメ
滝沢秀明「TOBE」設立1年で旧態依然の“本家”超え秒読み! 決定的な2つの違いとは
 旧ジャニーズ出身の滝沢秀明氏(42)設立の「TOBE」が快進撃だ。昨年3月の立ち上げから1年あまり、元キンプリの3人組...
2024-04-26 17:03 エンタメ
岩ちゃんか仲野太賀か…優三株の上昇、高等試験に落ち続ける原因判明!?
 突然、猪爪家に検察が押しかけ、はる(石田ゆり子)は直言(岡部たかし)が贈賄で逮捕されたと告げられる。  証拠品と...
桧山珠美 2024-04-26 16:45 エンタメ
テレ朝・斎藤ちはるアナに新恋人報道 元カレ“赤坂のドン・ファン”との苦い過去を乗り越えて…
 テレビ朝日の斎藤ちはるアナウンサー(27)が、ラグビー日本代表で主将を務める姫野和樹(29=トヨタ)と交際中で、将来的...
2024-04-25 17:03 エンタメ
「Destiny」石原さとみ《大学生に見えない》が奏功? ショートヘアの“キャラ変”も吉、復帰後は視界良好
 30代の俳優たちが《これぞ青春》とばかりにキャッキャとはしゃぐ大学生役を演じて……《主要キャラの大学生時代がキツい》《...
2024-04-25 17:03 エンタメ
松本人志に文春と和解の噂も、振り上げた拳は下ろせるか? 告発女性の素性がSNSで暴露され…
 ダウンタウン松本人志(60)の性的トラブル疑惑を報じた、週刊文春の発行元文藝春秋との第1回口頭弁論が3月28日に行われ...
2024-04-25 17:03 エンタメ
岡田准一の“SNS人生訓”が相田みつを顔負けと評判 略奪イメージ払拭、癒やしイケオジの魅力
《最低な事があろうとも、大丈夫。君の価値は変わらない》  22日、自身のXでこう投稿したのが、俳優の岡田准一(43)。...
2024-04-24 17:03 エンタメ
キムタクを縛り続ける《公称176cm》のデータ…「Believe」番宣行脚でも視聴者の関心は共演者との身長比較
 今週25日から放送開始のテレビ朝日系連続ドラマ『Believe-君にかける橋-』の主演・木村拓哉(51)が連日番宣に出...
2024-04-24 17:03 エンタメ
まるでコント!寅子との恋フラグは立たず、崖から落ちる花岡(岩ちゃん)
 親睦を深めるためハイキングに行くことになったが、花岡(岩田剛典)たちの態度に溝を感じ、浮かない気持ちの寅子(伊藤沙莉)...
桧山珠美 2024-04-24 14:35 エンタメ
長谷川博己「アンチヒーロー」2話目で上昇、レビュー&主題歌も高評価だが…今期ナンバーワンの“本命”に欠けているもの
 長谷川博己(47)主演のTBS日曜劇場「アンチヒーロー」の第2話が21日に放送され、平均視聴率は世帯12.8%、個人7...
2024-04-23 17:03 エンタメ
《見た目重視は女性だけ?》フジテレビ新人"貫禄"男性アナが話題も…TV局の“ルッキズム”志向が明るみに
 20日放送されたフジテレビ系「明石家さんまの推しアナGP」では、フジテレビの新人・上垣皓太朗アナウンサー(23)が話題...
2024-04-23 17:03 エンタメ
長谷川博己「アンチヒーロー」は「VIVANT」超えの予感…リアタイ視聴者も“考察班”も掴むヒットの仕掛け
「光と影の使い方も凝っているなと思いましたね」(テレビ誌ライター)という声もある。14日にスタートした長谷川博己(47)...
2024-04-22 17:03 エンタメ
ガンちゃん登場! 目の前にビール瓶2本…寅子の酒豪ぶりは母のはる譲り説
 本科と呼ばれる明律大学法学部に進学した寅子(伊藤沙莉)たち。法改正が行われ、女子も正式に弁護士になるための試験を受けら...
桧山珠美 2024-04-22 15:40 エンタメ