母娘の心をわしづかみにしたT先生
ほどなくして受付に母が到着し、一緒に診察室へ。
ここで私の執刀医となるT先生とはじめてお目にかかります。のちに知るのですが、このT先生は婦人科がん分野で名医のリストに名を連ねるほどの方で、その曜日の午前中しか初診を受け入れていない超多忙な方だったのです。この日の大量出血が結果的にスーパードクターと巡り会うきっかけになりました。
「たいへんだったね~、なに救急車に乗ったの?」
開口一番、T先生は穏やかに話します。
なんなら、ちょっと笑ってる。かかりつけ病院の先生の深刻さとのギャップがすごい。
ですが、先生の醸し出す穏やかな雰囲気をとても心地よく感じました。
「もう、がんっていうのは聞いてるんだよね?」
「聞いてます。がんになるなんて思わなくてびっくりしました。うちはがん家系じゃなくて。両親も元気だし……」
と、横にいる母にちらと目をやると、
「え、お母さんなんだ! 若いね~、姉妹かと思いましたよ」と笑って仰るではないですか。
母も「えー、そんな先生、私は母親なんですよー。先生、娘をよろしくお願いしますね!」と真に受けています。
でも、そんなわけはないんです。だって、コクリコ母は67歳。
ところがそんなやり取りのおかげで今朝から、いえ、がんと告知されてからずっと気を張っていたのがウソのようです。この段階ではがんの大きさもステージも不明でしたが、なんとなく「この先生なら助けてくれそう」と感じました。
「早速、内診しましょう。あー、ここかなぁ。色が変わってるね」
先週も、今朝も、さっきも、別の先生にそれぞれ内診してもらいましたが、どなたもそんなことは言いませんでした。かかりつけ病院で「念のため、細胞診する?」と言われて細胞診をした結果、がんが発覚したので、その先生も色の差異には気づいてなかったのだと思います。これががん専門医と一般的な婦人科医の違いなのでしょうか。目で見て、病変を見つけられたのです。
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