災害時「愛猫の避難」はどうする? ペットにも安全&安心を

コクハク編集部
更新日:2021-03-10 06:00
投稿日:2021-03-10 06:00
愛猫を守りたい…(写真:iStock)
愛猫を守りたい… (写真:iStock)

 コロナ禍とともに、頻発する地震や大雨水害など災害の心配も高まる昨今。いざというとき、愛猫などペットの避難はどうするか。平時のうちに、きちんと考えておきたいものです。被災地で被災動物の支援活動を行ううさ氏は、「ペット同室避難」の重要性を訴えています。

ペット同行避難や同伴避難だけでは不十分

 東日本大震災以来、私は動物に関わる支援・救助活動を続けてきました。そうした中で、とても深刻に感じたのが、“避難所の問題”です。

 現在日本で、動物の受け入れが考えられている避難所は少なく、「受け入れ不可」または「まったく想定外」が多いように感じます。受け入れてくれる避難所があっても、人と動物は別の場所……そのため動物連れの人たちは、在宅避難や車中泊を選ぶことが多くなるのです。

 在宅避難や車中泊は、緊急性のある最新情報も届きにくく、危険が隣り合わせにあります。また、支援物資が行き渡らないことも多く、不自由な生活になります。

ペット同室避難とは?(写真:iStock)
ペット同室避難とは? (写真:iStock)

 災害時に避難せざるをえない時、大切な家族である動物も、安心して連れて行ける避難所づくりが必要だと思います。人と動物が同室で過ごすことができる避難所の形を、私は「ペット同室避難」という言葉を使い伝えています。

 東日本大震災後、環境省が「人とペットの災害対策ガイドライン」を作成しました。その中に「ペット同行避難」「ペット同伴避難」という言葉が記されています。

 要するに、避難所にペットを連れて行く行為を「同行避難」、避難所で飼い主自身がペットのお世話をする行為を「同伴避難」と言っているのです。国の出したガイドラインでは「同行避難」も「同伴避難」も、残念ながら避難所でのペットとの「同居」を意味するものではありません。

2016年熊本地震時における避難状況

2016年熊本地震時の避難状況1/(提供写真)
2016年熊本地震時の避難状況1 /(提供写真)

写真左……在宅避難。倒壊危険のある自宅にペットを残し、飼い主は避難所から世話に通うことに。

写真右……テント泊。ペットと一緒に生活できるが支援は届きにくく健康上の問題も生じやすい。

2016年熊本地震時の避難状況2/(提供写真)
2016年熊本地震時の避難状況2 /(提供写真)

写真左……1匹ずつケージに入れて保護。飼い主と離れ離れで鳴き声も絶えない。

写真右……体育館ベランダをペット占有居住区に。環境のストレスからペット同士の争いも。

“救えたはずの命”をこれ以上増やさないために

うさ氏が提案する「ペット同室避難」のかたち/「災害で消えた小さな命」(毎日新聞出版)から
うさ氏が提案する「ペット同室避難」のかたち /「災害で消えた小さな命」(毎日新聞出版)から

「同行避難」をした後、飼い主と動物の居場所については、避難所の運営側の判断に任されています。リーダーや、そこにいる人々がルールを作るのです。

 人間でないから避難所室内に入れてもらえず亡くなった命、せっかく早く避難所に来たのに、動物と同室できないからと自宅に戻り亡くなった命、このような“救えたはずの命”をこれ以上増やさないため、「ペット同室避難」は必要だと思います。飼い主がそばにいることで動物たちのストレスも減り、鳴いたり噛んだりする問題行動も減るはずです。

 姿かたちが違いますが、その命を思う人にとって動物も大切な家族です。動物も同じ家族として当たり前に社会に認めてもらうよう、私は「ペット同室避難」を強く訴えます。 (文=うさ)

▽うさ/絵本作家、劇作家、演出家。東日本大震災後に「震災で消えた小さな命展」を主催し、被災者および被災動物の支援活動を行う。2016年の熊本地震をきっかけに、災害時のアニマルレスキューチーム「チームうーにゃん」も立ち上げる。避難所のペットの受け入れ態勢を心配し、実際に現地でペットの捜索・救助活動を行いながら「ペット同室避難」を提唱。

(日刊ゲンダイ臨時特別号「日刊ニャンダイ」記事を再編集)

コクハク編集部
記事一覧
コクハクの記事を日々更新するアラサー&アラフォー男女。XInstagram のフォローよろしくお願いします!

関連キーワード

ライフスタイル 新着一覧


春の行楽、御朱印集めはスタンプラリーと何が違う? 作法やタブーとは
 山形県東部にある山寺(山形市)で自らの行いについて考える出来事がありました。我よ、御朱印集めがスタンプラリーと化してい...
この勇姿もあとわずか…去勢手術予定“たまたま”を記念撮影!
「にゃんたま」とは、猫の陰嚢のこと。神の作った最高傑作! 去勢前のもふもふ・カワイイ・ちょっとはずかしな“たまたま”を見...
「クリスマスローズ」で究極のほっぽらかし園芸!怠け者でも花いっぱい♡
 猫店長「さぶ」率いる我が花屋のある神奈川は地球温暖化の影響もあり、ここ近年の特徴は卒業式に桜咲くでしたが、今年は入学式...
人は「趣味が合わない相手」と恋に落ちることがある
 北海道で暮らす、まん丸で真っ白な小さな鳥「シマエナガちゃん」。動物写真家の小原玲さんが撮影した可愛くて凛々しいシマエナ...
結婚、出産、身分の違い…仲良かった友達に会いたくないのはダメな感情?
 学生時代を毎日一緒に過ごした親友。でも、年齢を重ねるに連れて「あんなに仲が良かった友達なのに、今ではもう会いたくない」...
かわいい“たまたま”が大集合!夕暮れの集会の議題はなあに?
「にゃんたま」とは、猫の陰嚢のこと。神の作った最高傑作! 去勢前のもふもふ・カワイイ・ちょっとはずかしな“たまたま”を見...
立ち止まっていても時間が進むのなら…
 立ち止まっていても時間が進むのなら、いっそのこと急がなくても良いのかも。  人は人、自分は自分。
「委ねる」は読めるかも? 「委しい、委せる」はなんて読むのかな
 知っているようで意外と知らない「ことば」ってたくさんありますよね。「女ことば」では、女性にまつわる漢字や熟語、表現、地...
仕事帰り、ぶつかりおじさんのちかん被害に遭遇!?  私はどう対処すれば…
 先日、電車の中で「ぶつかりおじさん」に遭遇し、周囲に分からないような形で身体を触られました。あの時、自分はどんな対応を...
選ばなかった人生を歩む「もう1人の自分」と話してみたい
 北海道で暮らす、まん丸で真っ白な小さな鳥「シマエナガちゃん」。動物写真家の小原玲さんが撮影した可愛くて凛々しいシマエナ...
魅惑の“たまたま”の横から…モデル!? に立候補した茶トラ君
「にゃんたま」とは、猫の陰嚢のこと。神の作った最高傑作! 去勢前のもふもふ・カワイイ・ちょっとはずかしな“たまたま”を見...
“刺身のツマ”じゃございません! 存在感爆上がりの「かすみ草」最新事情
 猫店長「さぶ」率いる我が愛すべきお花屋は、神奈川の片田舎にあります。  大企業の研究所が多数点在しているせいか、他民...
同僚A「昨夜、課長と歩いてました?」同僚B「私も見ました」って…。職場グループLINE公開処刑!!
 グループLINEは、仕事上でもとても便利な連絡ツールですが、時に意地の悪い人がいるのも現実…。  職場での公開処...
ギャラ飲み収入だけで年400万円の貯金達成!元キャバ嬢が浪費しないワケ
 経営者や著名人、人気のインフルエンサーも利用する「ギャラ飲み」なるサービスって知っていますか? 東京都内のみならず、全...
【求む2期生!】頑張るシンママの収入UPをサポート☆応募して豪華プレゼントGET!
 日刊ゲンダイが運営する女性webメディア「コクハク」では、メディア制作に協力してくださる「コクハクリーダーズ第2期生」...
雪解けの水とハミングと。
 雪解けの水がすごい勢いで山からくだってくる。  流れの音に耳をすませば春の訪れを知る。  澄んだ空気を感じ...