江戸時代?私をドーターと呼ぶお客様からの巻物式ラブレター

涼香 銀座の女
更新日:2022-04-14 18:20
投稿日:2022-04-07 06:00
 涼香(リョウカ)と言います。銀座で長らくお仕事をさせていただいています。といって、接客型のクラブではなく、カウンター越しにお客様と接し、ワインなどをお出しする店を任されています。
「サロン・ド・リョウカ(仮名です)」には本当に様々なお客様がお見えになるのですが、そこで見てきたお客様のお話をしましょう。

忘れられない老紳士の思い出

 銀座で長く仕事をしておりますと、いろいろな男性との出逢いがあります。今回はとても素敵な紳士なのに、突っ込みどころ満載なユニークな方です。

 年齢は80代。海外生活が長く、トリリンガルで美形のお爺ちゃまで、とても肌艶がよい方です。出逢いは5年前、ご友人の紹介で初めてお店に来られたのです。

 上着をお預かりすると、ふわっと、とっても良い香り。上質なオードパルファムで、なんてエレガントな方だろう、というのが初めての印象でした。

 ご紹介くださったお客様によると、とんでもない裕福なお育ちで、私が眼を丸くしていると、「たいした人間ではありませんから」とご謙遜。このような方は銀座には多いのですが、別格でした。

巻物⁉ 立派すぎるお手紙に見え隠れする老紳士の素顔

 というのも、初のご来店からすぐに私宛に手紙が届いたのです。それも「えっ、江戸時代?」という巻物で。時代劇でしか見たことがないような大きな和紙の、それはそれは立派な巻物なのです。そこに達筆な字で、

<拝啓 春光天地に満ちる候、益々お健やかにお過ごしの事と存じます。昨晩は楽しいひとときを過ごさせていただき誠に有難う御座いました。>

 から始まるお礼文が長々としたためられているではありませんか。落款がしっかりと押されていたのは言うまでもありません。こういうお手紙を書く方は、教養があるのはもちろんですが、自分に自信がある方だと思います。

 相手を驚かせる、うならせる、そうやって人脈を築いていくのだろうなあと感心してしまいました。「たいした人間ではありませんから」という謙遜も、お手紙で驚かせる布石だったのかもしれません。

 いずれにしても、ビジネスのお相手ならともかく、私にもそうしてくださるのは、嬉しい反面、戸惑いの感覚を持ってしまったものです。

涼香
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銀座の女
 紆余曲折を経て銀座の高級サロンを任されるようになった金持ち男性ウォッチャー。上品な顔立ち、ジジ殺しの笑顔と褒め言葉、それでいてちょっとあやしい雰囲気に魅せられた年配の会社経営者たちを上手にさばきながら、夜な夜なこっそり観察している。趣味はカフェ巡り。

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