「モダンラブ・東京」1話見た? 同性婚・母乳育児の苦悩とは

ミクニシオリ フリーライター
更新日:2022-11-01 06:00
投稿日:2022-11-01 06:00

努力できる女性ほど「自立しなきゃ、がんばらなきゃ」と背負い込む

 忙しく働いてきた女性ほど、自立している自分にこだわりを持ってしまう人も多い。「女性も自立せよ」「女性に権利を」と謳う世の風潮もあり、自分も意思を持った女性であるということに、自分自身がこだわりを持ってしまうのだ。

 もちろん、自立していることは大切だ。しかしエピソード1は、そんな母に対し「無理しなくていいんだよ」というメッセージを何度も伝えている

 母なのだから、子どものためなのだからと突き詰めると、様々な選択は重く感じられるかもしれない。けれど真莉もいつしか、自分が無理せずとも、他人を頼っても自分の子どもが笑っていられる、幸福でいられるのだということに気づいていく。

 母になるということは、女性にとって大きな選択だ。子どもにとっての実母は自分ひとりかもしれないけれど、周りを見渡してみれば、家族やパートナー、友人……自分を助けてくれる人は意外とたくさんいる。

 子育てに限らず、なにかがんばっていることがあると「自分がなんとかしないといけない」と背負い込む人は意外と少なくない。

 もちろんそれも素晴らしいことだけど、真莉の家庭の場合は、周りを頼ったほうが物事がうまく回りだすのかも、という、いい予感も匂わせながらエンディングを迎える。

「〇〇せねばいけない」という強迫観念から逃れる方法

 バリキャリとか共働きという言葉をよく聞くようになったけれど、そういった言葉で「私もそんなふうにならなきゃ」と思い込んでしまう人も多いかもしれない。

 今の日本は不景気で、女性が子育てと仕事を両立することは、子どもを持つ上で必須条件となりつつある。今回は母乳育児や同性婚といったセンシティブな内容もテーマになっていたが、作品が伝えたかったことは「肩の力を抜こうよ」というメッセージなのではないかと思う。

 一般的に、男性よりも女性の方がマルチタスクが得意で、先が見渡せるからこそ現実的な考え方をする人が多いと言われている。

 だから私たちは不安になるし、その不安を拭おうと努力する。けれど、その努力は一人でしなくてはいけない努力とは限らないし、選択肢はいろいろあるのだ。

「〇〇せねばいけない」という強迫観念に駆られることって、生きていると何度もある。でもたいていの場合、選択肢は一つじゃない。

 自分だけががんばるのではなく、周りを頼ったり、自分が自分らしくいられる方法を、もっと探してみてもいいのではないだろうか。

 意外と、自分を縛っているのは自分自身のこだわりの強さだったりする。仕事や子育てに疲れた時、自分を縛っているものはなんなのか……一度考えてみたくなる物語だ。

ミクニシオリ
記事一覧
フリーライター
フリーランスの取材ライター・コラムニスト。ファッション誌や週刊誌、WEBSITEメディアなどで幅広く活動。女性向けのインタビュー取材や、等身大なコラム執筆を積極的に行う。いくつになってもキュンとしたい、恋愛ドラマと恋バナ大好き人間。
XInstagram

関連キーワード

エンタメ 新着一覧


押しかけ暴走気味の愛助(水上恒司)とスズ子の恋もいよいよ
 神戸への巡業の帰り、スズ子(趣里)は久しぶりにはな湯を訪ねる。懐かしい常連客の面々に迎えられ、昔のように庭で話をする。...
桧山珠美 2023-12-13 14:25 エンタメ
水上恒司君臨!デビュー作「中学聖日記」から5年経っても年上好き♡
 昭和18年、アメリカとの戦争に終わりが見えない中、「福来スズ子とその楽団」は地方巡業を重ねていた。  スズ子(趣...
桧山珠美 2023-12-11 15:50 エンタメ
松下洸平は“最弱の目力”が魅力!ネトラレ役が似合う、時代が生んだスター
 松下洸平(36)の主成分は優しさです。現在、出演しているドラマ「いちばんすきな花」(フジテレビ系)を見ていてしみじみそ...
茨田りつ子がまさかの前座!? 「大空の弟」を歌いこなす趣里の表現力
 羽鳥善一(草彅剛)が企画した合同コンサートは、ブルースの女王・茨田りつ子(菊地凛子)とスウィングの女王・福来スズ子(趣...
桧山珠美 2023-12-07 14:30 エンタメ
「大空の弟」は聞き物、りつ子“むっつり顔”のチラシにNHKの芸の細かさ
 弟が戦死してスズ子(趣里)が落ち込んでいるのではないかと心配した羽鳥善一(草彅剛)は、食事でもしようとスズ子を自宅に誘...
桧山珠美 2023-12-06 15:20 エンタメ
「一、二、三、四、五」揃った楽団員名、余計に六郎の不在が際立つ
 役場の職員が梅吉(柳葉敏郎)の元を訪れて届けた報せには、六郎(黒崎煌代)が戦死したと記載されていた。  しばらく...
桧山珠美 2023-12-05 14:00 エンタメ
松嶋菜々子の誇らしげな語りに納得…イケオジ反町隆史を保持するお手柄感
「男の美しさは、肌に出る。」――資生堂「SHISEIDO MEN」のCMに出演する松嶋菜々子&反町隆史夫妻が話題です。 ...
櫻坂46異例の韓国人気賞1位!紅白復活&史上最多動員、大逆転なぜ起きた
 櫻坂46が11月25日および26日、千葉・ZOZOマリンスタジアムで「3rd YEAR ANNIVERSARY LIV...
こじらぶ 2023-12-02 06:00 エンタメ
歌わない福来スズ子はただの人…からの脱却!らしさ炸裂のパクった楽団名
 楽団が解散して数週間、スズ子(趣里)は何をするでもなく日がな一日を過ごしていた。そんな時、スズ子は大阪に戻ってこないか...
桧山珠美 2023-12-01 14:00 エンタメ
茨田りつ子の覚悟、ラスト3分の急展開!弟子入り志願者の名に一抹の不安
 警察から解放されたスズ子(趣里)は、三尺四方の中だけで自分の歌を表現するのは難しいと悩んでいた。  警察署で自身...
桧山珠美 2023-11-28 15:27 エンタメ
日中戦争の影響じわり、スズ子が「カカシみたいなワテ」になった
 スズ子(趣里)と梅吉(柳葉敏郎)が東京で一緒に暮らし始めて1年、梅吉は何をするわけでもなく酒を飲むだけの毎日を過ごして...
桧山珠美 2023-11-27 15:10 エンタメ
羽生結弦を癒すのはプーさん…自由に恋愛もできないなんて気の毒過ぎる
 羽生結弦にはまったく驚かされてばかりです。  今年、8月4日に電撃婚を発表したときも、ビックリでしたが、そのわず...
地殻変動!下剋上球児、うちの弁護士…視聴率では見えないバズり作品は
 シリーズものを除いた主要民放プライム帯ドラマ全12作の全話平均視聴率が5.9%(ビデオリサーチ調べ・関東地区・世帯=以...
こじらぶ 2023-11-25 06:00 エンタメ
ゴンベエ(宇野祥平)の素性が明らかに…上方新喜劇ばりの人情劇がグー
 ツヤ(水川あさみ)が亡くなり、スズ子(趣里)は梅吉(柳葉敏郎)と今後のはな湯をどのようにしていくか相談する。  ...
桧山珠美 2023-11-24 16:11 エンタメ
母ツヤ(水川あさみ)笑顔の最期、「ナレ死」に救われた
 大阪に戻ってきたスズ子(趣里)は病床のツヤ(水川あさみ)と再会する。ツヤの病状のことを受け止めきれないスズ子は、梅吉(...
桧山珠美 2023-11-23 16:05 エンタメ
六郎役・黒崎煌代の将来性、母ツヤとやり取りに泣けて泣けて笑える
 六郎(黒崎煌代)の出征の日がせまり、六郎は頭を丸め恥ずかしそうにしている。相変わらず体調が悪いツヤ(水川あさみ)は専門...
桧山珠美 2023-11-21 17:30 エンタメ