「モダンラブ・東京」1話見た? 同性婚・母乳育児の苦悩とは

ミクニシオリ フリーライター
更新日:2022-11-01 06:00
投稿日:2022-11-01 06:00

「モダンラブ・東京」が描くテーマはさまざまな愛の形

(編注:記事内にはドラマに関する多少のネタバレを含みます)

 10月21日からAmazonのプライム会員向け動画配信サービス「Prime Video」にて、Amazon Originalドラマ『モダンラブ・東京~さまざまな愛の形~』の配信がスタートした。

 同作品は、2019年からニューヨーク版がシーズン2まで配信されており、世界でも話題を呼んだ作品の日本版となる。

 この物語の一番大きな特徴は、そのシナリオの全てがアメリカの新聞、ニューヨーク・タイムズ紙の人気コラム「Modern Love」に実際に寄せられたエッセイ……つまり、実話ということだ。

 日本版ドラマのタイトル通り、モダンラブがテーマにしているのは「さまざまな愛の形」だ。『モダンラブ・東京』でも、ドラマの原作になっているのは同紙に寄せられたエッセイなので、海外での体験談が元になってはいるのだが、これが日本版になっても「こういう愛は、どこにでもあるのかもしれない」と思わせる深い多様性がある。

 LGBT、セックスレス、シニア恋活といった恋愛の多様性、人の多様性を考えさせられるドラマを見ながら、自身の人生、自身の恋愛観を振り返ってみよう。

息子の授乳、そしていくつかの不満

 エピソード1のタイトルは「息子の授乳、そしていくつかの不満」。水川あさみが演じる主人公、キャリアウーマンの高田真莉は、前田敦子演じるパートナー・河野彩とともに、2人の子供を育てている。

 日本国内ではまだ正式に同性婚が認められていないため、2人は海外で挙式を挙げたようだ。そして、共働きで子どもを育てており、うち一人はまだ乳幼児。そのため真莉は、仕事に子育て、そして母乳管理などを両立している。

 同性婚とはいえ、お腹を痛めて産んだ過程がないと母乳は出ない。そのため真莉は、母乳に関しては自分で管理せざるを得ない。そんな真莉に対し、パートナーである彩、周りの友人や母は「そこまで母乳にこだわらなくたっていいいじゃない」と真莉を諭す。

 作中には詳しく書かれていないものの、真莉と彩は「同性婚って珍しいよね」という好奇の目にもさらされている。明確な悪意を伝えてくる人はいないものの、真莉は周囲の目に対しどこか「私がもっとしっかりしなくては」と責任を背負っているようも見える。

 仕事も子育ても、全部完璧でなければいけない。そんな責任感を感じさせる真莉の言動の裏には、「間違っても子どもが不幸を感じないで済むように」という気負いも伺える。

自分の選択に責任を負おうとする母の姿、でも…

 女性は子どもを産むことで、ホルモンバランスが崩れ、性格が変わることもあるという。もちろん、そうならない人もいる。いくらネットで検索しても「ホルモンバランスでなぜ性格が変わるのか」という情報は出てこない。

 母乳か粉ミルクかという選択に関しても、どちらにもメリットがあると言われている。産院の医師の考え方や、周囲の意見でどちらかを選択する人が多いという。子育てに関する選択や産後の自分の体調について、明確に「正解」を探すのは難しい。

 でも分からないからこそ、その選択の重さを背負い込んでしまう母もいる。

 自分の選択で、子の未来が変わることもある。そう思うと、選択に責任感を感じてしまう気持ちは分かる。一つの命を授かる行為はある意味、そのくらい重いことなのかもしれない。

 しかし実際に子育てを経験し終わっている実母や先輩ママたちは、真莉に対し口を揃えて「妥協することも大切」とアドバイスする。

 そんなふうにアドバイスされても、なかなか急に自分を変えられない真莉。仕事も子育ても、自分でやると決めたこと。選択に責任を負おうとする姿はある意味強くも見えるが、出張先でも無理しながら母乳管理する真莉の姿には、どこか痛々しさも感じる。

ミクニシオリ
記事一覧
フリーライター
フリーランスの取材ライター・コラムニスト。ファッション誌や週刊誌、WEBSITEメディアなどで幅広く活動。女性向けのインタビュー取材や、等身大なコラム執筆を積極的に行う。いくつになってもキュンとしたい、恋愛ドラマと恋バナ大好き人間。
XInstagram

関連キーワード

エンタメ 新着一覧


早くも“NHK御用達俳優”の片鱗が?「虎に翼」出演の岡部ひろきはそんじょそこらの2世俳優とは違う
 1日放送「ダウンタウンDX」(日本テレビ系・読売テレビ制作)に故・西城秀樹さんの息子・木本慎之介(20)が出ていました...
なぜ令和ロマンは賞レースに出続ける?3冠制しヘイトも無視する戦闘力
 芸歴10年以下のお笑い賞レース「ABCお笑いグランプリ」(テレビ朝日系/以下ABC)が7月7日に開催。M-1に続き、令...
帽子田 2024-08-03 06:00 エンタメ
航一の秘密、明かされる。久々の回想シーンでも発揮した直道の顔芸パワー
 判決後、涼子(桜井ユキ)の店で寅子(伊藤沙莉)らと杉田(高橋克実)たちは偶然顔を合わせる。  戦争で娘と孫を亡く...
桧山珠美 2024-08-02 16:00 エンタメ
【写真特集】ワンピース姿を披露する、珍しく清楚なあやまん監督
【この写真の本文に戻る⇒】 【独自レポ】あやまんJAPANは健在だった! Tバックにぽいぽいコール、コンプラ無視の危ない...
優未の言葉「困っている子を助けるのは普通」に教えられた真っ当なコト
 寅子(伊藤沙莉)と航一(岡田将生)は、涼子(桜井ユキ)の店がたびたび嫌がらせを受けていたことを知る。警察に相手にされず...
桧山珠美 2024-07-31 16:30 エンタメ
赤いミサンガの女・美佐江、来た~!“放置エピソード”の回収がお見事
 寅子(伊藤沙莉)と優未(竹澤咲子)の姿を見ていきなり号泣した杉田(高橋克実)。実は杉田は昭和20年の長岡空襲で娘と孫を...
桧山珠美 2024-07-29 16:45 エンタメ
目黒、ニノを“沼落ち”続出の松村北斗「西園寺さん」が猛追!視聴率やTVerではない意外なデータが急上昇
 7月も後半に入り、2024年夏期主要ドラマの初回がほぼ出揃った。その中でも特に、STARTO ENTERTAINMEN...
こじらぶ 2024-07-27 06:00 エンタメ
「ごめんなさい」を連呼する航一。“戦時中の何か”は来週判明する?
 玉(羽瀬川なぎ)の将来を奪ったのは自分だと、涼子(桜井ユキ)も悩んでいた。寅子(伊藤沙莉)は2人の決断を応援するため、...
桧山珠美 2024-07-29 15:49 エンタメ
涼子さまの消息も明らかに…「ヒロインじゃない面々」のその後を描く意味
 寅子(伊藤沙莉)は「学校に友達はいない」という優未(竹澤咲子)の発言が気にかかる。  出勤すると、杉田(高橋克実...
桧山珠美 2024-07-23 15:45 エンタメ
夏ドラマ何見てる?『新宿野戦病院』『ブラックペアン2』への本音を調査
 2024年7月スタートの夏ドラマが出揃ってきましたね。今期もたくさんのドラマが放送していて、どれを見ればいいのかわから...
“カウンセラー”星航一(岡田将生)、ちぐはぐぶりがチャーミングだった件
 父親の話が聞きたいと言う優未(竹澤咲子)に、寅子(伊藤沙莉)は優三(仲野太賀)の話をすることができない。寅子は航一(岡...
桧山珠美 2024-07-18 15:50 エンタメ
なぜ塚地武雅、藤井隆はドラマ出演が続く? 不人気芸人との決定的な違い
 7月に入り、2024年夏の新ドラマが次々にスタートしています。なかでも話題になっているのが、宮藤官九郎脚本の『新宿野戦...
高橋克実「ショムニ」超えの名演技に注目!歴代朝ドラで舌打ちといえば…
 山の境界線をめぐる現地調停で書記官の高瀬(望月歩)と申立人の森口(俵木藤汰)との間にトラブルが発生。寅子(伊藤沙莉)も...
桧山珠美 2024-07-17 15:30 エンタメ
木村拓哉は逆に演技がうまい! わざと「いつもキムタク」を貫く役者魂
 最新主演ドラマ『Believe-君にかける橋-』(テレビ朝日系)が高視聴率でフィニッシュし、かつての人気ドラマの映画版...
堺屋大地 2024-07-17 06:00 エンタメ
【写真で振り返る】『バチェロレッテ・ジャパン』シーズン3の名場面
【この写真の本文に戻る⇒】我々は何を見せられていたのか…さよなら『バチェロレッテ・ジャパン』S3
我々は何を見せられていたのか…さよなら『バチェロレッテ・ジャパン』S3
 毎週木曜日のお楽しみ『バチェロレッテ・ジャパン』シーズン3がついに完結しましたよ!