【2023年人気記事】ラブホテルに泊まりました。

新井見枝香 元書店員・エッセイスト・踊り子
更新日:2024-01-03 06:00
投稿日:2024-01-03 06:00
 あけましておめでとうございます。2023年は「コクハク」をご覧いただき、誠にありがとうございました。反響の大きかった記事を再掲載します。こちらの記事初公開日は同年9月30日。年齢や固有名詞等は公開時のままとなります。
 ※  ※  ※

ラブホの「ご休憩」は性に合わない

 残念ながら、渋谷のスイーツホテルに行く機会は、まだ訪れていない。

 サイトの写真でじっくり選んだところ、私が希望するルームは平日で16,900円、土日だと、なんと19,900円だった。

 取材費と記した領収書をコクハク編集部に送ったところで、バカ言ってんじゃないと突っ返されるだろう。かといって全額自腹で払ったら、原稿のネタにしても、割に合わない。

 宿泊しなければ、3時間で9,900円なのだが、どうもこの「ご休憩」というシステムは性に合わんのだ。

 3時間のつもりで入って1分でも過ぎたら負けだし、3時間のつもりで入って時間を持て余しても負けである。だいたい、何時間で気が済むかなんて、入ってみないとわからないだろう。

 だからラブホテルは、安心安全の「ご宿泊」がいい。

ラブホテルの存在意義

 ラブホテル街で有名な鶯谷に住んでいた頃、景色として目に入っていた看板には、宿泊でも10,000円を超える価格はなかったように思う。

 相場は土地によって違うだろうが、そもそも最安値を血眼で探して入るラブホテルなんて、ちょっと夢がない。ああいうのはワッと盛り上がって、くんずほぐれつ手近なホテルになだれ込むのがいいのだ。

 たとえ備え付けのドライヤーがそよ風並みに弱くても、フロントにかけた電話がチケットぴあ並みに繋がらなくても、まあ最低限やることがやれればそれでいいのだ。そのためのホテルである。

「お叱り票」システムを採用するラブホ

 ところが、とあるラブホテルには「お叱り票」なるものが設置されていて驚いた。丸裸でお叱りを書き殴る姿を思うとだいぶ滑稽だが、それを各部屋に設置することで、ホテル側がサービスのレベルをキープする効果はあるのかもしれない。

 実際、客室は掃除が行き届き、湯船もピカピカ、それこそドライヤーの風量は台風のように力強く、毛や埃が焦げる嫌な匂いもしなかった。

 大変快適だったことを伝えようにも、室内にある精算機で会計が済んでしまうため、スタッフと顔を合わせる機会がない。できれば「お褒め票」も置いて欲しいくらいであった。

新井見枝香
記事一覧
元書店員・エッセイスト・踊り子
1980年、東京都生まれ。書店員として文芸書の魅力を伝えるイベントを積極的に行い、芥川賞・直木賞と同日に発表される、一人選考の「新井賞」は読書家たちの注目の的に。著書に「本屋の新井」、「この世界は思ってたほどうまくいかないみたいだ」、「胃が合うふたり」(千早茜と共著)ほか。23年1月発売の新著「きれいな言葉より素直な叫び」は性の屈託が詰まった一冊。

XInstagram

関連キーワード

ライフスタイル 新着一覧


「そっちに行っちゃダメ!」をなくす廊下のない保育園の魅力
 保育園の現場では、「廊下に出ちゃダメよ!」とスタッフが子どもに声をかけているところをよく見ます。しかし、すんなり戻って...
急ぎ足の隙間から…チラリズム“にゃんたま”は魅力たっぷり
 「にゃんたま」に、ひたすらロックオン! 猫フェチカメラマンの芳澤です。  正々堂々、見せつけてくれるにゃんたまω...
おひとりさま老後には備えが大切 今から意識すべき2つのこと
 近ごろのニュースを見ていると、年金の支給も思わしくないようです。超高齢化社会に向かっているというのに、日本の未来が不安...
あれもこれも試した! がん治療に役立つ「情報収集」虎の巻
 私は42歳で子宮頸部腺がんステージ1Bを宣告された未婚女性、がんサバイバー1年生です。がん告知はひとりで受けました。誰...
汚れた毛並みは男の勲章 超貴重なワイルド三毛“にゃんたま”
 よ~く見てください。  恋のバトル真っ最中。にゃんたま君が最も忙しい季節に、少しカラダが汚れた三毛猫(柄が薄いタ...
部屋干しでもすぐ乾く!生乾きの臭いをさせない洗濯方法
 雨の多い梅雨時期には洗濯物が溜まりがち。重い腰を上げて部屋干しをしたのに、洗濯物から生乾きの臭いがしてうんざりしてしま...
花の蕾が秘めるエネルギー 恋愛運UPには暖色系を北に飾って
 これから日本も夏本番。  ここ数年、夏が来るたび思うのですが、ワタクシが中学生の頃になんだか必死に覚えた「ケッペ...
彼の家で“私の存在”を知らしめる神グッズは「洗剤」だった
 大好きな彼の自宅に、私物を置いて、他の女性へ“けん制”をしたいですか? モテる彼と付き合っている女性ほど、そんな心理に...
心が通じたかな? 肉球も一緒に披露してくれた“にゃんたま”
 にゃんたまωを見せてください!  いいよ~! オッケーにゃ~ん!  …と、なかなかすぐにいきませんが、どん...
京都のホストクラブにジャニ系よりエグザイル系が多い不思議
 ホストクラブといえば、髪を綺麗にセットした綺麗なお兄さんが女の人とお酒を飲んでくれる場所。最近はいろいろなタイプのホス...
女性の夏冷え対策はクーラーから!今年こそ冷えない体作りを
 猛暑が続く近年、熱中症対策としてクーラーをかけるのはもはや当たり前ですよね。でも、屋内ではどこもかしこもクーラーが効い...
さよなら子宮! 妊娠云々ではなく死ぬか生きるかを選択する
 私は42歳で子宮頸部腺がんステージ1Bを宣告された未婚女性、がんサバイバー1年生です。がん告知はひとりで受けました。誰...
星野源さんもNO! タレントの画像をSNSで無断使用する心理
 歌手で俳優の星野源さんが、ラジオ番組で、SNSのアイコンに自分の画像を使われることにはっきりNOを示しました。有名人で...
いずれはボス? 歴代五指ぷりぷり“にゃんたま”のイケ面公開
 世界一多くにゃんたまを撮影している私ですが、以前ご紹介した歴代5本指に入る魅力のにゃんたまの気になるイケ面を公開! ...
痛くないの? 床に頭を打ちつける子どもの主な理由と対処法
 保育園コンサルタントの小阪有花です。チャイルドカウンセラーのお仕事もさせてもらっている私のもとには、お子さんに関するさ...
紫陽花は憂うつな気分を吸い取る…嫁が義母に贈った意味は?
 梅雨は紫陽花の季節。小さな花をたくさん集めて丸く咲く紫陽花(あじさい)は、雨に濡れると美しく輝き、憂うつなはずの重い気...