性生活にも支障が…つらい膣のかゆみと痛みは萎縮性膣炎かも【薬剤師解説】症状、原因、治療法は?

コクハク編集部
更新日:2024-09-26 06:00
投稿日:2024-09-26 06:00
 彼女の名は、えりの。女性の心を癒すためにはじめたサロン「コクハク」のオーナーで、界隈では「えりのボス」の愛称で知られ、ちょっとした有名人。でもって、タヌキか妖怪の噂も囁かれるなか、健康に関する知識はズバ抜けている――。
 そんなえりのボスのもとにはウワサを聞きつけ、今日は「膣のかゆみや乾燥感」に悩みを抱えた女性が、ふらりと立ち寄ったようですよ。

1. 膣がひきつる「萎縮性膣炎」とは

 今回のご相談は、みなみさん(32歳女性/仮名)からです。

「ここ数カ月くらい、膣がひきつる感じがあって、かゆみや乾燥感が続いているんです。黄色い膿みたいなおりものも出るようになってしまって…」

 不安げな表情で悩みを打ち明けるみなみさん。えりのボスは真剣に耳を傾けます。

「痛みもあって、性生活にも支障が出ています。彼にも申し訳なくて…。婦人科に行くのも恥ずかしい気がして、誰にも相談できずにいました」

 話し終えたみなみさんに、えりのボスは静かにうなずきます。

「そう…膣の痛みやかゆみは本当につらいものよ。あなたが心配するのも無理はないわ」

「これって病気なんですか? 治す方法はあるんでしょうか?」

 みなみさんはすがるような目でえりのボスを見つめます。これは放っておけません!

1-1. 萎縮性膣炎の原因

「あなたの膣の悩み、それは萎縮性膣炎の可能性があるわ」

「萎縮性膣炎、ですか?」

 耳慣れない言葉に、みなみさんは首をかしげます。

女性ホルモンのエストロゲンが低下して起こる膣炎よ。

 正常な膣には自浄作用が備わっているの。常在菌が膣内を酸性に保っているから、病原菌の繁殖が抑えられているのよ。ところが、エストロゲンの分泌が低下すると常在菌が減って雑菌が増殖しやすくなってしまうの。

 エストロゲンは膣の粘膜を厚くする働きもあるから、分泌量が減れば粘膜が薄くなって弾力も失われてしまうわ。炎症が起きやすくなって、かゆみや痛みが出るようになるのよ」

【読まれています】アラフォーの性交痛 相性悪いから濡れない?【薬剤師監修】

1-2. 萎縮性膣炎になりやすい年代

萎縮性膣炎は更年期の人に多いわ」

「えっ更年期? 私はまだそんな年齢じゃないのに!?」

 みなみさんは驚きの声を上げます。

「実は、最近は若い女性にも増えているのよ」

 20~30代の女性でも、次に当てはまる人は膣萎縮がみられる場合があります。

●月経不順
●長期にわたる授乳
●低用量ピルの長期服用
●喫煙
●卵巣摘出手術後
●がん治療後

「これらに当てはまる人はエストロゲンの分泌量が低下して、萎縮性膣炎になりやすい傾向があるわ」

2. 萎縮性膣炎の症状と対処法

「萎縮性膣炎ってどんな症状が出て、どう対処すればいいんですか?」

 深刻な表情のみなみさんに、えりのボスは優しい声で続けます。

「気になるところよね。順番に説明するわ」

2-1. 萎縮性膣炎の症状

 萎縮性膣炎の症状には、次のものがあります。

●膣の乾燥感、かゆみ
●性交痛
●出血
●排尿時痛
●黄色や褐色、悪臭などおりものの異常

 どれも膣内の粘膜が薄くなることや、膣内が乾燥することで起こる症状です。

「萎縮性膣炎の痛みは、膣や外陰部のヒリヒリ感や熱っぽさ、焼けるような痛みが特徴よ」

2-2. 萎縮性膣炎の対処法

 乾燥によるかゆみには、保湿クリームを使いましょう。膣の粘膜を保護して、潤いを与えてくれます。ワセリンや、デリケートゾーン専用の保湿クリームがおすすめです。

 また、性交時の痛みには潤滑ゼリーが有効です。膣の粘膜への刺激を和らげる効果があり、性交前に膣口周辺や膣内に塗ると痛みが軽減できます。

3. 萎縮性膣炎の治療法

 えりのボスは、みなみさんの目をまっすぐ見て話を続けます。

「萎縮性膣炎の症状が出たら、適切な診断と治療を受けるためにも婦人科への受診を考えたほうがいいわ。次は、婦人科での主な治療について話すわね」

3-1. ホルモン補充療法(HRT)

 HRTは、ホルモン不足を補って症状を改善する治療法です。膣の潤いと弾力性が回復し、症状の緩和が期待できます。飲み薬や貼り薬のほか、クリームや錠剤を膣内に使用する方法があります。

3-2. レーザー治療

 レーザー治療は、ホルモン剤を使わずに症状が改善できる治療法です。レーザーで膣内の組織を刺激して膣粘膜の厚みを回復させるので、症状の改善が期待できるでしょう。通常は複数回の治療が必要で、効果を維持するためにも定期的な通院が推奨されています。

4. 萎縮性膣炎を予防する方法

 熱心に耳を傾けるみなみさんに、えりのボスは話を続けます。

「萎縮性膣炎は予防もできるわ。大切なのは、デリケートゾーンの適切なケアよ」

4-1. デリケートゾーンを清潔に保つ

 萎縮性膣炎の予防には、デリケートゾーンを清潔に保ち、病原菌の侵入を防ぐことが大切です。トイレで温水洗浄便座を使うときは、膣の中まで洗うのは避けましょう。雑菌が入り、膣トラブルが起こる原因になります。

 加えて、おしりをふくときは前から後ろに向かってふき、膣内への菌の侵入を防ぐようにしましょう。

4-2. デリケートゾーンを洗いすぎない

 デリケートゾーンを洗いすぎてしまうと、かえって逆効果になります。膣内の常在菌が洗い流されてしまい、感染症や炎症のリスクが高まるからです。洗う際は外陰部のみを泡立てた洗浄剤などで優しく洗い、膣内は洗わないようにしましょう。

5. 萎縮性膣炎には漢方薬もおすすめ

 萎縮性膣炎の症状を緩和するには、漢方薬もおすすめです。漢方薬は、婦人科でも自然由来の治療薬として処方されています。根本からの改善を得意としているので、毎日飲むだけで萎縮性膣炎など陰部のトラブルが起きにくい体質を目指せるでしょう。

 萎縮性膣炎の改善には、

●血流をよくして膣に栄養を与え、自浄力作用を回復させる
●水分の循環をよくして潤いを補い乾燥を改善する
●泌尿器・生殖器系の機能を高める
●下半身の過剰な熱を冷ます

 などの作用をもつ生薬を含む漢方薬を選び、根本改善を目指します。

<萎縮性膣炎にお悩みの人におすすめの漢方薬>

・八味地黄丸(はちみじおうがん):からだを温めて、生殖器や泌尿器の機能を改善します。手足が冷えやすい人におすすめです。

・竜胆瀉肝湯(りゅうたんしゃかんとう):下腹部の熱を冷まして炎症を鎮め、デリケートゾーンのかゆみにも使われます。下腹部に熱感や痛みがある人におすすめです。

 スマホで気軽に専門家に相談できるオンライン個別相談も話題です。スマホで完結できるので、対面では話しづらいことも気軽に相談が可能。お手頃価格で不調を改善したい人は、医薬品の漢方をチェックしてみましょう。

6. 萎縮性膣炎の症状がある場合は、まずは受診して正しいケアをしましょう

「萎縮性膣炎は、きちんと治療すれば症状の改善が期待できるわ。まずは婦人科を受診して、正しいケアをすることね」

「婦人科に行くのは恥ずかしいと思っていましたが、きちんと診察を受けることも大切なんですね」

 最初は不安でいっぱいな様子のみなみさんでしたが、えりのボスの話を聞き終えて落ち着きを取り戻したようです。

「その通りよ。また気になることがあったら、いつでもサロンへいらっしゃい」

 晴れやかな顔でサロンを去っていくみなみさんを、えりのボスは笑顔で送り出しました。

★サロン「コクハク」のオーナー えりの

 顔と口調は若いものの、年齢不詳。タヌキか妖怪の噂も囁かれる謎めいた主人だが、ココロやカラダ、健康に関する知識はズバ抜けており、何気にハイスペック。ムスメ時代に苦労してるため、自分より“後輩”の女にはしあわせになって欲しいと願っている。愛称は、えりのボス。

(漫画/腹肉ツヤ子

  ◇  ◇  ◇

<この記事の監修者>

あんしん漢方薬剤師 中田 早苗(なかだ・さなえ)

 デトックス体質改善・腸活・膣ケアサポート薬剤師・認定運動支援薬剤師。病院薬剤師を経て漢方薬局にて従事。症状を根本改善するための漢方の啓発やアドバイスを行う。健康・美容情報を発信するMedical Health -メディヘルス-youtubeチャンネルでは、お薬最適化薬剤師として「無駄な服薬はお財布と体の敵!」をモットーに薬の最適な選び方を解説する動画を公開中。症状・体質に合ったパーソナルな漢方をスマホ一つで相談、症状緩和と根本改善を目指すオンラインAI漢方「あんしん漢方」でも薬剤師としてサポートを行う。

「あんしん漢方」を詳しく見てみる

コクハク編集部
記事一覧
コクハクの記事を日々更新するアラサー&アラフォー男女。XInstagram のフォローよろしくお願いします!

ビューティー 新着一覧


脱おてもやん!年代別チークの入れ方・選び方・垢抜けテク♡
 血色感を出すのに欠かせないチーク。でも、何年もチークの入れ方を同じにしていませんか? 実は、チークは年代別に入れ方を変...
まつげパーマを長持ちさせたい!すぐできる方法5つとNG行動
 目元を魅力的に見せたり、メイク時間を短縮させるために、まつげパーマをしている人は多いでしょう。まつげがくるんとアップし...
目指すはカトパン!全方位型“ふんわり女子アナメイク”のコツ
 雑誌やテレビで見かける芸能人や有名人に「なれるものなら、あの顔になりたい!」「あんな姿に生まれていたら、私の人生も違っ...
憧れの“ハンサム女子”になるには?意識したい7つのポイント
 凛としてかっこいい「ハンサム女子」は、性別問わず憧れの存在。そんなハンサム女子に密かに憧れを抱いている人もいるのではな...
季節の変わり目は“ゆらぎ肌”に注意!春のお手入れのコツ5選
 長い冬が終わって待ちに待った春が来たのに、なんだか肌の調子が悪い……と感じたことはありませんか? もしかすると、それは...
不器用でも大丈夫♡ 誰でも簡単にできるまとめ髪アレンジ4つ
 ヘアアレンジが苦手で一年中同じ髪型をしている人は、意外と多いようです。でも、髪型を変えると印象をガラッと変えられるので...
「ヘッドスパ」のやりすぎにご注意! 正しい頻度とメリット
 美容に敏感な女性たちの間で、すっかり定番のケアになった「ヘッドスパ」。女性にとって嬉しいメリットがたくさんありますが、...
【種類別】クマ隠し方法!カラーテクニックで健康的な顔に♪
 目の下のクマでお悩みの人は多いでしょう。クマがあると、顔の印象が大きく変わってしまいますよね。 そこで今回は、頑固なク...
イメチェンするならボブスタイル♡ 定番人気の長さ&種類は?
 ヘアスタイルの中でも、幅広い年代に愛されている「ボブスタイル」! でも、一言でボブといっても、長さやデザイン別にたくさ...
化粧水の重ね付けでうるうる肌に♡ メリット&正しいやり方
 乾燥が気になる季節になると、化粧水を重ね付けしている人も多いでしょう。でも、リサーチしてみると「化粧水の重ね付けは意味...
2022年のトレンド眉毛は3つ! 描き方を変えて垢抜け顔に♡
 顔のパーツの中でも、第一印象に大きく影響する眉毛。でも、眉メイクはいつもの形でマンネリ化してしまいがちなので、気がつけ...
誰でも簡単♡「ぷるぷるリップ」を叶える唇ケア5選&NG行動
 乾燥する時期になると、肌だけではなく唇もカサカサしてきますよね。リップを塗るだけでは改善せず、荒れた唇に悩んでいる人も...
「ぱっつん前髪」基本の切り方のコツ♡重めも軽めも自由自在
 “ぱっつん前髪”ってとても可愛いけれど、切り方が難しくて切りすぎたり、アンバランスになってしまったりと、失敗してしまい...
初心者でも安心♡ サウナの正しい入り方&守るべき注意点4つ
 最近、ブームに再び火が付いている「サウナ」。テレビでも見かける機会も増えているので、「私もサウナに行きたい!」と思って...
スーツのパンツorスカート、どっちが細見えする? 選び方7選
 働く女性の必須アイテムの「スーツ」。仕事やフォーマルな場で重宝しますよね。でも、中には「太って見えるから苦手……」「自...
【ショートカット】スタイリングで使いたいアイテム3つ
 コロナ以降、久しぶりに友人と会うと、髪が短くなっていることって多くないですか? そんな私もロングヘアをバッサリと切って...