真田広之は千葉真一の教え「学業優先」に忠実に従い堀越高校から日大芸術学部に進学
【あの有名人の意外な学歴】#4
真田広之(俳優/64歳)
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昨年、米ドラマ最高の栄誉であるエミー賞18冠という快挙を成し遂げた「SHOGUN 将軍」。プロデューサーと主演を務めた真田広之(64)が今年4月、米誌「タイム」の「世界でもっとも影響力がある100人」に選ばれた。「彼のストイックな生き方が報われた」と感激の面持ちで語るのは真田の母校である堀越高校の関係者だ。「堀越にいた時は芸能人らしさは一切見せず、とにかく勉強に励んでいた」と振り返る。
児童劇団に所属していた真田がデビューするのは5歳の時。これが後に米国で活躍する礎となる。師ともいうべき千葉真一との出会いである。映画「浪曲子守唄」で千葉の幼い息子を演じた。中学に上がると、千葉が主宰するジャパンアクションクラブ(JAC)に入団。世界で通用するアクション俳優を育てる目的で創設された組織だ。公立の中学に通いながらJACでの特訓。映画「直撃!地獄拳」では千葉の少年時代を演じた。
「このシリーズで千葉はサニー・チバとして欧米でもスターになっていく。真田に大きな刺激を与えた」と同作を製作した東映の元社員は話す。
堀越高校ではDコース(現トレイトコース)に入った。通称「芸能クラス」である。単位制を導入し、補講を行うなど、欠席が多い生徒をサポートする体制がとられている。出席日数が足りなくても、学校側の判断で進級させるケースも少なくなかった。しかし、真田は芸能人のために設けられたこうした特別待遇を一切、受けなかった。千葉から「学業を優先しろ」と命じられたからだ。芸能活動も休止した。
「自身に続き、将来は真田も海外に進出すべきとの考えを千葉は持っていた。そのためには単なる役者バカではいけない。広い視野を持つ必要があると」(東映元社員)
忠実に千葉の言葉を守っていた真田だったが、高校3年に上がる前に芸能活動を再開した。映画「柳生一族の陰謀」のオーディションに合格したからだ。ヤクザ路線が行き詰まっていた東映が社運をかけた大作だった。萬屋錦之介と千葉のダブル主演で、真田が演じたのは陰謀に巻き込まれる武士という重要な役だった。映画は大ヒットした。
以降、映画、ドラマと主役級の役が真田に次々に舞い込んできた。そのさなか、日大芸術学部映画学科に入学した。「高校を卒業したら仕事だけに邁進するものと思っていたので、大学進学は驚いた」と前出の堀越関係者は話す。日芸出身者には数多くの芸能人がいるが、入学の段階ではまだデビュー前だったり、タレント2世というケースがほとんど。「売れっ子になってから入ってくるのはめずらしい」(日大教授)という。
学業をおろそかにしないという千葉の教えはここでも守られた。スケジュールの合間をぬって大学に行き、4年間でしっかり卒業した。「彼だからできた」と感心する堀越関係者だが、一方でガッカリさせられたことも。葉月里緒奈との不倫が原因で手塚理美との離婚が報じられた時は「あの真面目一徹の男がなぜ」と耳を疑ったという。すべてが完璧などありえないのかもしれない。
(田中幾太郎/ジャーナリスト)
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