29歳、元キラキラ女子の“なれの果て”。冴えないスーパー店員と結婚…その理由に共感できる?

ミドリマチ 作家・ライター
更新日:2026-02-07 11:45
投稿日:2026-02-07 11:45

もう一生会わないだろう

 15分ほどでバスは来た。一緒に乗り込んで、駅へと向かう。駅まで10分ほどの乗車だったが、肩を並べて、無言で同じシートに座る。

「そのモンクレール、あったかい?」

 絞り出すように、優梨愛から尋ねられる。

「ふつう。デザインは気に入っているんだけれどね」

 奈江は目を合わせずに答えた。

「そうなんだ。私が初めて着た時は、世の中にこんなに暖かいダウンあるんだって感動したのに」
「これは、人に譲ってもらったヤツだから。年季が入っていると、湿気とかで品質が下がると聞いたことがあるよ」
「あ…やっぱり」

 そしてまた彼女は口をつぐんだ。

「あ、やっぱり」の意味はよくわからなかったけど、聞かないことにしておく。奈江は優梨愛にいらぬ気を使わせているかもしれないと思った。

「あげようか。彼氏に新しいのをおねだりするから」
「いい。私はユニクロで十分よ。ユニクロでしあわせ」

 首都圏郊外の一般家庭の一人娘で、小さなころから愛されて育ったという優梨愛。恵まれていた分、幸せの感性も敏感なのだろうか。

 優梨愛に、もう一生会わないだろうという予感がした。同時に、彼女の感覚を「うらやましい」と思いはじめている自分がいる。

私はまだ高嶺を見あげていたい

 そんなフツーの女にはなれないから。

 なりたくないけど――まだまだ背伸びをしたい。地に足がついていないと言われようが、自分はキラキラの中で生きていたい。花になれなくとも、もっと高嶺を見あげていたい。

 奈江は、上り電車に逃げるように乗り込む。

 グリーン車にかけこみ、本当に会えるかどうかわからない、恋人かどうかわからない人の元へ向かう。

 約束まで、まだまだ早い時間だったけども。

 Fin

ミドリマチ
記事一覧
作家・ライター
静岡県生まれ。大手損害保険会社勤務を経て作家業に転身。女子SPA!、文春オンライン、東京カレンダーwebなどに小説や記事を寄稿する。
好きな作家は林真理子、西村賢太、花村萬月など。休日は中央線沿線を徘徊している。

関連キーワード

ライフスタイル 新着一覧


ほっこりに感謝♡ おじいちゃんから届いた大爆笑LINE5選
 長い月日を生き抜いてきたおじいちゃんたちは、深い洞察力や豊富な経験を武器に、どんな新しい時代にも対応していく強さを持っ...
佐久間由衣×奈緒 運命の共演!<前>お互いの愛を伝え合って…
 ドラマ『彼女はキレイだった』(カンテレ・フジテレビ系)での桐山梨沙役を好演し、注目度上昇中の佐久間由衣さん(26)が主...
佐久間由衣×奈緒 運命の共演!<後>“脳内結婚したい”相手は?
 ドラマ『彼女はキレイだった』(カンテレ・フジテレビ系)での桐山梨沙役を好演し、注目度上昇中の佐久間由衣さん(26)が主...
裏の顔にドン引き…女友達から届いたマウンティングLINE5選
 上から目線でものを言ったり、自分のほうが優位であることを示そうとする「マウンティング女子」。でも、本人には悪気がないこ...
仕事にも恋愛にも使える!最強ツール“マインドマップ”とは?
 消化しなければいけないタスクがたまってしまった時、皆さんはどうやって整理していますか? 私は学生の時に語学の勉強で使っ...
来年カレンダーの表紙モデル!イケメン“にゃんたま”の立ち姿
 ご好評につきまして、来年のにゃんたまカレンダーが出来上がりました。  きょうは、「開運!にゃんたまカレンダー20...
嫌われない?大丈夫? 友達に送ったドタキャン連絡LINE5つ
「今日の予定、面倒臭い。ドタキャンしたいなぁ……」と思うことってありますよね。そんな時、「どんな言い訳で断ったら、不自然...
コロナ禍の敬老の日に何を贈る? ド定番アイテムとその理由
「私ってそんなに老けて見えるのかしら?」  猫店長「さぶ」率いる我が花屋。ご来店なさったお客様から会うなり質問され...
他人の服を汚した時の4つの対処法!トラブルを避けるには?
 うっかり飲み物をこぼしてしまったなどで、他人の服を汚してしまうと焦りますよね。特に、相手が激しく怒ってしまった場合には...
“にゃんたま”のあとを追って思い出す…ジブリ映画の名ゼリフ
 きのうもきょうも、にゃんたまωのあとを追う!  私はたまに、ジブリ映画「耳をすませば」の“ある台詞”を思い出しま...
ダイソーの「もしもノート」を買ってみた 2021.9.12(日)
 先日、ダイソーで「もしもノート」なる商品を見つけました。  その名の通り「もしも」の時に備え、自分の情報を記すも...
“攻める女”瀧内公美<前>「このままでは役者生命が続かない」
 映画『火口のふたり』(2019年、R18+指定)で柄本佑さん(34)と主演を務め、第93回キネマ旬報ベスト・テン主演女...
“攻める女”瀧内公美<後>「褒められると危険を感じてしまう」
 女優、瀧内公美さん(31)の主演映画『由宇子の天秤』が、9月17日より渋谷ユーロスペースにてロードショー(ビターズ・エ...
嫁姑バトルはLINEでも!嫁が送ったスカッとする返信5選
 核家族化が進んだ現代では、嫁姑が同居しているケースは少なくなっていますよね。にもかかわらず、嫁姑問題は今も変わらず根深...
人気ホステスたちに学ぶ!義理や恩とのほどよい付き合い方
 義理って大切だと思いますか? 私はとても大切なことだと思っていて、恩を感じている人にはなるべくたくさん返したいと思って...
夏を見送るちょっぴりセンチメンタルな“にゃんたま”をパチリ
 夏が去りゆくきょうは、白い砂浜が広がるビーチ入口で、夏を見送るにゃんたま君です。  彼は、幸運をひっかけてくれる...