窓の開いた部屋…女はなぜ全裸で床を拭いていたのか?

うかみ綾乃 小説家
更新日:2019-11-14 17:02
投稿日:2019-11-07 06:00

全裸で床を拭く女

 シンクの水が流しっぱなしだったので、私の気配には気づないようです。彼女が床を拭いている布を見て、私はさらにゾッとしました。

 以前、彼女とこんな会話を交わしたことがあります。

G「私はお洗濯するとき、洗濯石鹸を使うし、白もの、柄もの、ぜんぶ分けるの。下着や靴下は手洗いするし、休みの日はお洗濯だけで一日が潰れちゃうの」

私「大変ですね。私なんか、靴下も布巾もぜんぶいっぺんに洗いますが」

G「えー、汚い! 布巾は週に一度は漂白剤できれいにするんですよ。今度、私がやってあげますよ」

私「いえいえ……」

 清潔好きを自称する彼女が、いま床を拭いているのは、私がふだんシンク周りを拭く布巾でした。水道の水も盛大に流しっぱなしで。自分の欲望のためなら、欲望対象を汚せる人格を目の当たりにした思いでした。

 次いで気づきました。煌々と明るい私の部屋で、彼女はあえて全裸で動き回っていたのでした。近隣に、「私がここに全裸でいる」と示すために。

うかみ綾乃
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小説家
2011年「窓ごしの欲情」(宝島社文庫)で日本官能文庫大賞新人賞受賞。’12年「蝮の舌」(悦文庫)で第二回団鬼六賞大賞受賞。コラムニスト、映画の原作&脚本家としても活躍中。近著に「蜜味の指」(幻冬舎アウトロー文庫)。2020年から原作映画『モンブランの女』(『モンブランを買う男』AubeBooks)が全国で公開中。
ブログ http://ukamiayano.blog.fc2.com/

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