女が部屋で見せてきたもの…私の心はもう限界を超えていた

うかみ綾乃 小説家
更新日:2019-11-28 18:03
投稿日:2019-11-28 18:00

後頭部の髪を掻き上げると…

G「イブだから、デパ地下が混んでて、すっごく並んじゃったの。でもこのパーティセットと、日本酒は頑張って買ってきたの」

 30分で飲み食いできる量ではありません。彼女が荷物を広げる前に、私は立ったまま要件を問いました。

私「会社での辛いことって何ですか」

G「えっとね、うふふ、綾さんの可愛いモコモコの部屋着を見たら、辛いことなんてどうでも良くなっちゃった」

 彼女に直に触られないよう、過剰につけた半纏やレッグウォーマーでした。

 Gがお酒飲みながら、また処方箋の薬を取り出します。そして、後頭部の髪を掻きあげます。

G「私、十円ハゲが出来ちゃったの」

 なんとなく察していましたが、彼女は会社で降格されたようです。部下の女の子たちも何人かが辞めていっていました。

G「でもね、これは、私の直属の上司のNさんが、派閥争いが下手なせいなの。Nさんは部下の人望があるから、ほかの役員たちが嫉妬してるの」

 嫉妬を言い訳にする人間って、よほどふだんから嫉妬で動いているのでしょうか。

G「だけどNさんのおかげで、綾さんの仕事はいままでどおり。そこは心配しないで、Nさんの期待に応えてね」

 もちろん、私はNさんのことは信頼し、だからこそ窓口のGのセクハラパワハラに耐えても未来があると思っていました。でもこの台詞はつまり、私と綾さんの力関係もこれまでどおりよ、と言い聞かせているようにも聞こえます。

うかみ綾乃
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小説家
2011年「窓ごしの欲情」(宝島社文庫)で日本官能文庫大賞新人賞受賞。’12年「蝮の舌」(悦文庫)で第二回団鬼六賞大賞受賞。コラムニスト、映画の原作&脚本家としても活躍中。近著に「蜜味の指」(幻冬舎アウトロー文庫)。2020年から原作映画『モンブランの女』(『モンブランを買う男』AubeBooks)が全国で公開中。
ブログ http://ukamiayano.blog.fc2.com/

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