呪文で周囲と分断し過去を否定させる…優紀さんのケース#4

神田つばき 作家・コラムニスト
更新日:2020-04-08 06:00
投稿日:2020-04-08 06:00

「自分を確立しろ」は親に抑圧されて育った子に効く呪文

 あの夜のことは、自分の記憶の中でなかったことにしたい出来事です。Cさんに「ギャラと引き換えに体を売ったのと同じ」と言われたときの、みじめな気持ちもよみがえってきます。優紀さんが答えられずにいると、

「嫉妬で聞いてると思ってんのか? 全然わかってないな。俺が優紀に言いたいのは『自分を確立しろよ!』ってこと。自分の意志でやったのか、そいつにやられちゃったのか、大事なのはそこなんだよ!」

 B男はたびたび優紀さんに自分を確立しろと言いました。それは親の言いなりに育ってきた優紀さんにとって、自立した大人になるための呪文のように響いたのです。

 優紀さんは思いきって正直に、A氏が当然のようにホテルに車を乗りつけたこと、どこまでが撮影でどこからがプライベートかわからないままに体を許してしまったことを話しました。どうか嫌わないで、と願う優紀さんにB男は冷たく言い放ちました。

迷い傷つき、頼れるのは彼氏しかいない

「優紀の写真、無修正の裏サイトに流れてるかも知れないな」

「私、そんなのは撮ってない……」

「お前、犯されたんだよ? ホテルに入ってから盗撮されてたかも知れないだろ? 危機意識を持てよ!」

 青くなった優紀さんを置いて、B男は自分の下宿に帰ってしまいました。戻ってきてほしい、どうしたらいいの、と優紀さんがメールすると、B男からはこんなメールが帰ってきました。

「優紀が今すぐにすること:A氏からされたことを告発する、とA氏に言う。その結果がわかるまで、俺は優紀の顔を見たくない」

 優紀さんは迷うことなく、その通りにA氏にメールしました。しかし既読スルーされ、優紀さんは「どうしたらいいかわからなくなりました。自分が確立できてなくて、すみません」とB男にメールしました。

 次回に続きます。

神田つばき
記事一覧
作家・コラムニスト
離婚と子宮ガンをきっかけに“目がさめて”、女性に生まれたことの愉しみを探そうと緊縛写真のモデルとライターに。私小説「ゲスママ」、女性の悩みや疑問を解き明かすコラム「性に纏わるあれこれ」
イベント「東京女子エロ画祭」「親であること、毒になること」などの企画も。X

関連キーワード

ライフスタイル 新着一覧


子どもの嘔吐処理の方法! 間違えると感染源が広がる恐れも
 夏も終わり、季節も移りゆくこのごろ。子どもたちの間ではノロウィルスやRSウィルスなど感染病が流行ってきています。感染病...
助けになりたい! 認知症の初期対応で気を付けるべきこと3つ
 親や身近な人が認知症だと診断されたら、多くの人が戸惑うでしょう。人によっては「本当に認知症なの?」と、疑いたくなるほど...
昭和のアッシーの令和版「ウーバーおじさん」の生態とは?
 古き良き昭和の時代、アッシーと呼ばれる種族が存在していました。  アッシーとは女性が移動手段=足として利用する男...
恐怖のリンパ浮腫疑惑と73歳卵巣がん患者に励まされた晩婚話
 私は42歳で子宮頸部腺がんステージ1Bを宣告された未婚女性、がんサバイバー2年生です(進級しました!)。がん告知はひと...
心身を鍛錬して精神統一…“にゃんたま”師匠に学ぶヨガ精神
 にゃんたマニアのみなさんこんにちは。毎日、快適で安定した心でお過ごしでしょうか?  きょうは、ヨガにゃんたまω師...
外見のことばかり指摘してくる男性にイケメンはいません!
 自分の見た目は、自分が一番よくわかってますよね? 「もう少し目が大きくなりたい」「小顔になりたい」「太ももが痩せた...
身も心もスッキリ♪ 楽しく踊ってストレスと運動不足を解消
 今回おすすめするアフターワークの過ごし方は「HIPHOPダンスを踊ろう!」です。週に1回でもダンスを踊れば、ストレスと...
秋の香り「金木犀」は女性の味方!エイジングケアにも期待
 9月の終わりに差しかかり「もう衣替えかぁ」なんて思い始める頃、ワタクシのお花屋さんの店先では、秋の風に乗ってどこからと...
目が腫れた時の対処法! 泣きたい夜&翌朝にできる7つのこと
 悲しいことや嫌なことがあった時、女性は思い切り泣いて消化し、次へと進んでいくもの。でも、翌朝にボコボコと目が腫れてしま...
ごはんを食べたのは誰? 空のお皿に“にゃんたま”が迷推理
 ええー! ごはんの器が空なんですけどー!  にゃんたま君専用のごはん皿が空っぽ。誰かが盗み食いしたようです。 ...
ポカンと開いたお口…閉じさせるためには何をしたらいい?
 こんにちは。小阪有花です。子どもが歩いてる時やテレビを見ている時、「うちの子ずっと口が開きっぱなしかもしれない……」と...
台湾人と日本人ママの違い…子供への対応次第で育児が楽に!
 台湾人の両親に育てられた私は、無意識に台湾式の教育法になりがちです。今回はどちらが正しい育児法かとか、どちらか正解かを...
がん日記から読み解く更年期障害「ホットフラッシュ」の脅威
 私は42歳で子宮頸部腺がんステージ1Bを宣告された未婚女性、がんサバイバー2年生です(進級しました!)。がん告知はひと...
顔の傷は男の勲章…戦う“にゃんたま”3兄弟のくつろぎタイム
 きょうは、にゃんたま3兄弟ωωωにロックオン♪♪♪  ごはんの後のくつろぎタイムにお邪魔しました。  兄ち...
別れた彼氏から連絡! 復縁ある? 残酷すぎる元カレの気持ち
 LINEにポーンといきなり「元気?」と連絡が来ることありますよね。どうでもいいオトコだったら無視かテキトーなスタンプを...
卵子凍結を行う手順 聞きなれない“ホルモン剤の投与”とは?
 日本は不妊治療の件数は世界一なのに、体外受精で赤ちゃんが産まれる確率は最下位。そんな状況を変えるために、ミレニアル世代...