夫の不倫を「やらかし」ネタにした妻と去っていった相手女性

うかみ綾乃 小説家
更新日:2020-07-29 06:00
投稿日:2020-07-29 06:00

不倫相手と別れ、帰ってきた夫

 やがて彼らの半同棲生活は一年半で、J子さんから別れを切り出す形で終わりを迎えました。

 Kさんは家に戻り、ときおりH美さんのカフェにも顔を出すようになりました。

 業界関係者たちは「おかえり」と明るく迎えました。

 誰かが、「戻れる場所を守ってくれていたH美さんに感謝すべきですよ」と言います。

 Kさんが恥ずかしそうに、「いやはや、面目ない」とおでこを掻きます。

「今日はバツとしてKさんの奢りね」

「えー、失恋したんだからみんなが奢ってよー」

 そこにH美さんが、ほがらかな笑顔で言います。

「皆さんほんと、うちの主人がやらかしちゃって、ご心配おかけしました。さあ、お酒もあるから飲みましょう」

 やらかした。このひと言で、Kさんの不倫劇は「やらかし」程度の軽いものになり、J子さんは軽く「やられた」女となりました。

不倫相手のその後

 そうして一年も経つ頃には、Kさん自ら、この失恋をネタに話すようになります。

「うちの奥さんは、僕が女の子に恋して悶々としていると、プレゼント用のバッグとか買ってきてくれるの。いまも『あなたの写真、そろそろ色気がなくなってきたから、早く新しい恋愛しなさい』ってせっつかれちゃって」

 知人たちは、「出来た奥さんだよね」「おもしろいご夫婦だね」

 そういうことで一件落着。

 J子さんはその後も業界での仕事を続けていましたが、あるとき、すっぱりと辞めていきました。

 理由はわかりません。H美さんのおかげで肩身の狭い思いをすることはなく、もしあっても、他人の目を気にする人でもありませんでした。

 ただ好きなことをやる限り、いつまで経っても「Kの元彼女」呼ばわりされる状況にうんざりしたのか、あるいはもっとやりたいことを見つけたのか。

 KさんよりもH美さんよりも、いちばんのリスクを背負いながらも、ひたむきに相手と向き合い、生きていたのは彼女だったと思います。

うかみ綾乃
記事一覧
小説家
2011年「窓ごしの欲情」(宝島社文庫)で日本官能文庫大賞新人賞受賞。’12年「蝮の舌」(悦文庫)で第二回団鬼六賞大賞受賞。コラムニスト、映画の原作&脚本家としても活躍中。近著に「蜜味の指」(幻冬舎アウトロー文庫)。2020年から原作映画『モンブランの女』(『モンブランを買う男』AubeBooks)が全国で公開中。
ブログ http://ukamiayano.blog.fc2.com/

関連キーワード

ラブ 新着一覧


40代で一目惚れしたら?グイグイより“さりげなく”攻めるが吉
「40代で一目惚れしたら、その彼と恋愛や結婚はできるのかな……」。  40代で一目惚れした女性が、その後、順調に恋愛→...
恋バナ調査隊 2023-03-17 06:00 ラブ
子育てとセックスは両立できる?レス防止策、無音プレーと発想の転換も
 新婚の頃は夜の生活を自由に楽しめていても、出産をした途端にセックスレスに陥る話はよく聞きますね。実際に子供が成長してい...
恋バナ調査隊 2023-03-16 09:48 ラブ
「DVの兆候」を見抜く 日常生活におけるチェックポイント3つ
 DVによる事件は、コロナ禍の閉塞感もあって、警察に寄せられた昨年1年間の相談件数は過去最多となっています(警察庁発表)...
内藤みか 2023-03-16 06:00 ラブ
リカなのに「リンちゃん」を連呼!女性が経験したがっかりピロートーク
 身体を重ね、愛を確かめ合った後に交わすピロートーク。彼からの甘い一言を期待していたのに、がっかりするような発言をされた...
恋バナ調査隊 2023-03-15 06:00 ラブ
夫の怒りいくばく? 2回目の不倫がバレた時の効果的な謝り方
「また、不倫をしてしまった……」。初めての不倫とは違い、2回目の不倫がバレたとなると、ただの謝り方では許されません。「次...
恋バナ調査隊 2023-03-15 06:00 ラブ
後悔しない結婚相手の選び方 知らないとやばい落とし穴とは
「今付き合っている人と、結婚してもいいのだろうか」 「次選ぶ人と結婚したいと思うけれど、どんな人がいいのだろうか」 ...
若林杏樹 2023-03-15 06:00 ラブ
レスられる側にも問題アリ?なぜ断られるのか、考えてみよう
 普段からセックスレスの不満をSNSで発信している筆者ですが、自分にも原因があると認識しています。何でもそうですが、相手...
豆木メイ 2023-03-14 06:00 ラブ
授かり婚のメリット4つ&“最大の難関”親を説得させるには?
「授かり婚」や「おめでた婚」といわれるようになったのは少し前の話。それまでは「できちゃった婚」と呼ばれるケースが多く、マ...
恋バナ調査隊 2023-03-14 06:00 ラブ
薄毛やおデブはどうにでもなる!男性が結婚したくなるタイミングあるある
 40代で婚活中の女性は、できるだけ効率的に出会いから結婚までを進めたいですよね。実は、男性にも(!)「結婚したくなるタ...
恋バナ調査隊 2023-03-13 06:00 ラブ
女への幻想ゼロ&免疫アリ「女兄弟がいる男性」モテるの納得
 昔から言われるのが、「女兄弟(女性のきょうだい)がいる男性はモテる説」です。実際に、特別優れた容姿でなくても、多くの女...
恋バナ調査隊 2023-03-13 06:00 ラブ
恋愛依存がしんどすぎてやめたい…まずは自分を愛する練習を
 パートナーと喜びや悲しみを分かち合い、日々がキラキラと楽しくなる恋愛ですが、依存してしまうと話は別。「彼がいなければ生...
恋バナ調査隊 2023-03-12 06:00 ラブ
「浮気したヒモ男に愛情皆無」6年の事実婚を解消したい女性
 男女の関係では、交際相手や配偶者の態度に悩む人も少なくありません。愛し合っている男女間でも、価値観や物事の判断には個人...
並木まき 2023-03-11 06:00 ラブ
「本気度を試すための浮気」事実婚を続けたい夫の“?”な主張
「冷酷と激情のあいだvol.133〜女性編〜」では、事実婚を6年間送ってきた夫・トシキさん(43歳・仮名)に別れを切り出...
並木まき 2023-03-11 06:00 ラブ
シングルファザーを好きになった…交際前に持ちたい覚悟5つ
 離婚が珍しい出来事ではなくなった今、恋した男性がシングルファザーだったなんて女性もいるのではないでしょうか?  ただ...
恋バナ調査隊 2023-03-10 06:00 ラブ
悲喜こもごも…一生忘れられないプロポーズの思い出エピ5選
 プロポーズは、男性にとって人生で一番緊張するシーンかもしれません。そして、女性にとっても最高に幸せな瞬間でしょう! だ...
恋バナ調査隊 2023-03-09 06:00 ラブ
気になる男性のLINEが遅い 優先度を上げるたった一つの方法
 好意のある男性から、連絡がなかなか返ってこないと不安になりますよね。 「せっかくLINE交換したのに〜っ、全然返信が...
若林杏樹 2023-03-08 06:00 ラブ