皮の食感がおいしい
一見すると、ありふれたお刺し身のようですが、よく見ると、ちょっとした違いに気づきます。
「刺し身ですが、皮は引かないの。皮の食感がおいしいんだよ」
刺し身で皮を引かないとは珍しい! 皮目をあぶっているわけでもなく、熱湯にさらしているわけでもない。肝心の作り方はというと、塩で30分締めたら、酢で塩を洗い流す。ただそれだけです。
「今回使った魚は、ヒイラギですが、ワラサやアジでもいい。ヒイラギでの正式の作り方は、塩締めの後、酢でも30分締める。でも、簡単に仕上げて、すぐ食べるなら酢洗いで十分ですよ」
醤油もワサビもつけずに一切れを口に運んでみます。塩で締めたおかげで、身がほどよくこなれています。塩分がちょうどよく、なるほど薬味はいらないかも。それ以上に驚いたのが、ウマ味です。特に皮の周りから広がってくるのがスゴイ。
「盛りつけるときに、身全体を指でギューッとつぶすの。それがおいしく食べるコツで、つぶしなますね。細胞膜が破れるでしょう。魚のウマ味や塩、酢が混然一体となっておいしいんだよ。ほら、ほどよい皮の食感がいいだろ」
これは簡単! 風呂に入る前に塩を振っておけば、あとは酢洗いだけで極上のおツマミの出来上がり。
【レシピ】
1. 好みの魚の半身を用意したら、まんべんなく塩を振って30分おく。
2. 酢で洗う。
3. 刺し身に切り分ける。
4. 皿にツマや大葉などを添え、盛りつける。盛りつけ前に、とにかく指でギューッとつぶすこと。
本日のダンツマ達人…西潟正人さん
▽にしがた・まさと
1953年、新潟生まれ。魚好きが高じて、神奈川県逗子市に地魚料理店「魚屋」を開き、20年営む。その後、2015年、東京・品川にオープンした「あじろ定置網」の料理顧問に。東京海洋大学非常勤講師(魚食文化論)。
▽あじろ定置網
静岡・網代の定置網で取れた新鮮な魚介が毎日、直送される。スーパーには並ぶことのない珍しい魚に出合えるとあって、魚好きで連日、満席。西潟氏が板場に立つのは金曜のみ。東京都港区港南4―5―1。土・日曜定休。
(日刊ゲンダイ2019年12月10日付記事を再編集)
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