「出会い系」のルーツは江戸時代? 出合茶屋にみる密会模様

内藤みか 作家
更新日:2019-03-28 13:55
投稿日:2019-03-28 06:00
「出会い系」というといかがわしい響きだと感じる人も少なくないでしょう。出会い系サイトというものが、男女の肉体的なものを意味する、いわゆるワンナイトのようなイメージがあるからだと思います。実はこの「出会い系」という言葉のいかがわしさは、江戸時代からあったのです。

江戸時代のラブホテル

 実は、江戸時代には「出合茶屋」というものがありました。各地にもあったようなのですが江戸だと池の端、つまり上野公園の近くにある蓮の葉が茂っているのを見ることができるあたりに何軒も存在していたそうなのです。すべてが出合茶屋ではなかったようなので、なかには普通のお茶屋さんもあったというので、そのエリアでお茶をしていても密会していたわけではない、という言い訳もきっとできたはず。

 今でも池の端では、蓮の花が咲く時期になると、近くのお茶屋さんで食事をしながら蓮を愛でる人が少なくありません。けれど江戸時代はただ食事をする場所ではなかったのです。食事というのは建前で、個室の座敷にこもった男女の部屋の奥に布団が敷かれていて、食事の後にはそこでいいこともしていたのでありました。

江戸時代の出合いとは

 よく見ると、現代では「出会い」ですが江戸時代は「出合」と漢字も違います。現代はネットを介し、全く面識がなかった男女が出会う、つまり知り合うという意味ですが、江戸時代の場合は見知った相手と出合い頭に引きこもる、つまり密会という意味で使われていたのでは、と感じています。

 当時の出合茶屋がどんな感じだったかは、花咲一男さんが書かれた『江戸の出合茶屋』(三樹書房)という本に詳しく書かれています。当時の川柳もたくさん紹介されている興味深い本ですが、その中に「見合い」を間違えて「出合い」と言ってしまい、たしなめられる女性のことも書かれています。当時から「出合い」はいかがわしさが漂う言葉だったのかと思うと妙に感慨深いですね。

ネットがなかった時代の出会い

 この本には、出合茶屋の形態が詳しく書かれているのですが、毎回同じ相手と密会している人ばかりではなく、毎回相手を変える人もいたようです。街で気に入った人に声をかけ、出合茶屋に連れ込むということもあったそうなので、今でいうナンパですよね。

 出合茶屋は1階がお茶屋さんで2階が個室というかたちなので、1階のお茶屋で親しくなった異性を上に連れ込む人もいたのだとか。もしかしたら現代の相席屋に近い感じだったのかもしれませんね。江戸時代の人も、刺激を求めていたのでしょう。

女性主導の出会いがあった!?

 こうした出合茶屋を利用する人は、不倫する人も多かったようですが、江戸城や武家につとめる奥女中や、夫に先立たれた後家もいたようです。場所は浅草にほど近い池の端ですから、浅草寺へのお参り、もしくはお芝居見物などと嘘をついて茶屋へと繰り出していたようです。

 本によると出合茶屋へ女から誘うことも多かったようで、後家さんが近所の若い男に「蓮を見に行かない?」と声をかけていやらしい、などと揶揄する川柳も紹介されています。出合茶屋の座敷料金を支払うのは女性が多かったのだとか。

現代の出会い事情と比べると……

 ある程度経済的にゆとりのある年上女性が、若い男を連れ込む……、あれ? 最近もそういう風潮が出てきているような? 「ママ活」と称して若い男が貢いでくれる女性を探していたり、レンタル彼氏(出張ホスト)を呼ぶ女性がいたり、という動きがありますよね。江戸時代も後家さんが盛んに出合茶屋を利用していましたが、出張ホストでもバツイチ女性からの呼び出しが多いそうなのです。

 働いてお金に余裕がある女性たちが、ふと時間が空いた時に束の間の逢瀬を求めるのは、江戸も現代も同じようです。出会い系アプリのなかにも女性から男性に「いいね!」をすることで始まるシステムのものもいくつか出てきています。今後ますます女性たちが自分好みの男性に声をかけ、男性は女性に声をかけられるために努力する時代になっていくのかもしれません。

内藤みか
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作家
著書80冊以上。大学時代に作家デビューし、一貫して年下男性との恋愛小説を書き綴る。ケータイ小説でも話題に。近年は電子媒体を中心に活動。著書に「あなたに抱かれたいだけなのに」など。イケメン評論家として、ホストや出張ホストなどにも詳しい。
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