更新日:2022-06-12 16:38
投稿日:2022-05-27 06:00
高校時代にタイムスリップしたかのよう
ーー続けてください。
「車は駐車場を出て繁華街を越え、国道を進んでいました。ファミレスや名物のラーメン屋も当時のまま……ドキドキしつつも気持ちは高校時代へとタイムスリップしていました。
私が『懐かしい。変わってないわ』と声をあげると、K君も『ファミレスのメニューは変わったけど、相変わらずにぎわってるよ。ラーメン店もネットのお陰で観光客が絶えない』などと応じてくれ……。
窓を開けると、心地よい田舎の夜風がセミロングの髪をなびかせました。
しばらく走ったのち、車は通りから少し離れた路肩に停まったんです。
石門に囲まれた向こうには懐かしい母校がありました。
自己嫌悪…自分の感情をコントロールできないなんて
『懐かしいわ。高校時代の3年間が昨日のよう』と思わず呟いていましたね。制服を着て通学していた日々、そして、K君に逢いたいがために図書室に通っていた日々がありありとよみがえってきます。
タイミングよく、彼が『あの2階の左端が図書室だよ』と言ってくれて……。
彼の体が、助手席に座る私のほうに接近してきたんです。
えっ……と思いました。次の瞬間、私の手は、無意識に彼の腕を掴んでいたんです。
『あっ、ごめんなさい』と私は瞬時に手を離しました。
よりによって自分から……私は、何をやっているのでしょう?
はしたない女、ふしだらな女ーー。自分の感情もコントロールできないなんて最低ーー。私は身を縮こませ、押し黙りました」
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