加齢たるたるのあるある<2>お尻の下のそれはマイナーな悩み

新井見枝香 元書店員・エッセイスト・踊り子
更新日:2022-09-19 06:00
投稿日:2022-09-19 06:00
 書店員として本を売りながら、踊り子として舞台に立つ。エッセイも書く。“三足の草鞋をガチで履く”新井見枝香さんのこじらせ(?)月イチ連載です。
「加齢たるたるのあるある」第2弾は、マイナーだからこそ厄介な「お尻の下のたるみ」について――。

「ちょんちょろりん」問題

 同僚の指と指の間にあるタコ、とも言えぬ小豆大の突起。取れそうで取れないそれを、私は「ちょんちょろりん」と心の中で呼んでいた。

 ちょんちょろりんは赤くも黒くもなく、数年経っても育つわけでもなければ、消えてなくなるわけでもなかった。しかし、「それどうしたの?」と訊ねることはなぜかできなかった。

 本人がそのちょんちょろりんのことをどう思っているのか、わからないからだ。嫌だったら病院で取るだろうとも思うし、取らないから気にしてないとも限らない。

 その場合、他の同僚とちょんちょろりんを話題にしたら、本人にとっては悪口になるかもしれず、うっかり誰かと共有することもできなかった。

お尻「の」下「の」たるみ「の」シワ

 そういう、誰もが気になっているけど、口にはしない身体のこと。私の尻の下のたるみのシワもそうだった。尻の下のたるみのシワ。こうやってたくさん「の」を使う言い回しが大変嫌いだが、「ほうれい線」のようにひとことで言い表せないところからしてもう、ムカつく。

 細かく説明しないと伝わらないということは、マイナーな悩みということだ。ほうれい線ぐらいメジャーなら、ちょっとググれば専用のパックや美容液、改善のためのマッサージなどが、いくらでも見つかる。

 しかし尻の下について調べても、うーん、そういうことじゃないんだけどな、という的外れな情報にしか行き当たらないのだ。

 日常生活において、尻の下にシワがあっても、人の目に触れることは滅多にない。お尻が半分出るようなショートパンツをはかず、水着は日焼け対策も兼ねて長袖長ズボン。セックスはしなければいいし、どうしてもしたいなら、シワの1本まで愛してくれる人を選べばいいだけだ。

人の視線がもたらす効果を期待していたが…

 しかし踊り子はそうもいかない。最後の最後まで全裸にならずにお客を楽しませるストリップもあるが、いつも頑なに腰巻きを取らずに終われば、尻にコンプレックスがあるのかと邪推される。

 気になるところはどんどん出せ、とも言う。私はあえてお尻丸出しのまま踊り、人の視線による引き締め効果を期待した。しかしその効果を実感する前に悲劇は起きたのである。

 私のステージを観た人が、Twitterでひとしきり褒めた最後に「ただお尻の下のシワが残念でした」と添えたのだ。

 うわぁ、あらためて指摘されるとしんどい。心が折れるわぁ。なんでそういうこと言うん?

 こういう商売だから、身体のことをあれこれ言われることは覚悟していた。ただ、昭和の時代じゃあるまいし、なんとなく言っちゃあかんっぽいことってあるでしょう。

ブルドッグと一緒

 私の尻の下には、皮膚が余ってたるんだことによる深いシワが幾重にも刻まれている。加齢というより、私の人体構造上、仕方のないシワであり、乾燥によって生じる小ジワとは全く別物であることを、一目見ればわかってもらえるはずだ。

 ここにいくら水をかけ油を塗ったところで、手触りは変わっても、形状は変わらない。ブルドッグの人相が変わらないのと一緒である。

 お尻を引き上げるエクササイズや、セルフマッサージに励んだこともあったが、思わしい効果は得られずにいる。

 目の下のたるみも然り。前回の記事を読んだお客さんに「目の下のたるみといえば津川雅彦だよなあ!」と言われ、うまい返しができなかったことを悔やむ自分がかわいそうでならない。

 それ全然面白くないし。もう、自分を変えずに世界を変えてやりたい。

嵐の二宮和也、なんかイイ

 デリカシーのないおっさんのことは忘れて、かっこいい男の話をしよう。

 楽屋で女性が5、6人集まれば、好きな男性タレントの話題で盛り上がる。その時はたまたまジャニーズ好きが多く、松田龍平、と正直に答えるのもつまらない。

 うーん、嵐の二宮和也かな。なんかこう、手触りがあって心に引っかかる顔をしているから。聞くと彼は、ドーランを塗っていないらしい。吹き出物を隠すのではなく、それを含めて楽しんでほしいという意味で、すっぴんを貫いているそうなのだ。

 なるほど、能面のようなツルリとした顔ではないからこその、引っかかりだったわけか。

 それで私という女が「なんかイイ…」と思うのだから、二宮氏の戦略は成功している。

 どのみち尻の下にファンデーションを塗っても、肌がなめらかに見えるだけで、溝が深いシワには何の効果もない。

明石家さんま、所ジョージ、二宮和也に続くのは…

 二宮氏のように「シワも楽しんでよ」というスタンスでいれば、やがて世界が私に付いてくるかもしれない。なにしろ芸能界でドーランを塗らないのは、明石家さんまと所ジョージと二宮和也の3人らしいから。

 全員、大成功である。4人目に名を連ねるのは、私かもしれない。

新井見枝香
記事一覧
元書店員・エッセイスト・踊り子
1980年、東京都生まれ。書店員として文芸書の魅力を伝えるイベントを積極的に行い、芥川賞・直木賞と同日に発表される、一人選考の「新井賞」は読書家たちの注目の的に。著書に「本屋の新井」、「この世界は思ってたほどうまくいかないみたいだ」、「胃が合うふたり」(千早茜と共著)ほか。23年1月発売の新著「きれいな言葉より素直な叫び」は性の屈託が詰まった一冊。

XInstagram

関連キーワード

ビューティー 新着一覧


20代男性の声に震撼! アラフォーのドン引きメイクにご用心
 アラフォー女性の皆さん! 20代男性を侮ってはいけませんよ。  彼らはアラフォー女性のメイクをこっそり観...
ポーチ忘れた!セブンに駆け込む→眉ペンシルだけで美眉は描けるのか
 話題のコスメや、広告でよく見かける化粧品や日用品。「webでよく見るあの商品、本当にイイの?」「買ってみたいけれど、口...
予算10万円、もち自腹!韓国美容旅で念願のリジュラン、水玉リフトetc.
 こんにちは! 「旅する複業家」の林知佳です。「韓国の美容医療は最強だ!」とは有名なお話ですが、2泊3日で顔面に“課金”...
「ちらほら白髪」ぐらいなら染めないがいい? 賢く簡単に隠す4つの方法
 30代を超えると「ちらほら白髪」が出てくるようになります。やはり、髪の毛に白髪があるかないかは、見た目年齢に大きな影響...
肩~頭皮までガチガチ【専門家監修】肩こり解放メソッドでもう悩まない
 彼女の名は、えりの。女性の心を癒すためにはじめたサロン「コクハク」のオーナーで、界隈では「えりのボス」の愛称で知られ、...
年齢はここに出る! 40代女性が気を付けたい「老け見えポイント」4つ
 最近では、昔に比べて年齢よりとても若く見える人が増えていますよね! 特に40代では差が出やすく、同じ年齢でもおしゃれで...
アイシャドウのパレットは“捨て色”覚悟で!今すぐできる垢抜けアイメイク
 アイメイクは大体いつも同じパターンになっていませんか?  目元は顔の印象を左右する大事なパーツ。アイメイ...
半信半疑なSHEINの美容グッズ…歯のホワイトニングシートで白くなる?
 話題のコスメや、広告でよく見かける化粧品や日用品。「webでよく見るあの商品、本当にイイの?」「買ってみたいけれど、口...
口臭・体臭・尿の悪臭…私のニオイの源は「糖質オフダイエット」が原因!?
 彼女の名は、えりの。女性の心を癒すためにはじめたサロン「コクハク」のオーナーで、界隈では「えりのボス」の愛称で知られ、...
鹿ちゃんは関係ないよ! 話題の「シカクリーム」の人気の理由は?
 美容アイテムを売っているお店でよく見かける「シカクリーム」。はじめて見た人は「鹿のクリーム?」なんて想像した人もいるか...
2024-01-17 06:00 ビューティー
水蜜桃メイク知ってる?トレンドど真ん中、たった4︎分で叶う衝撃ハウツー
 水蜜桃メイクというメイク法をご存じですか? 中国発でSNSを中心に話題になっているトレンドメイクのひとつで、ピ...
まだまだ流行中のキャップ! 40代コーデで野球少年風を卒業するコツは?
 帽子コーデが好きな人が、必ず定番で持っているのがキャップです。でも、子供っぽくなったり、大人っぽいスタイルにどう合わせ...
30~40%の日本女性が整形!? それでも踏み切れない4つの理由
 今では、美しくなるための手段として珍しくなくなってきている整形。日本では30%〜40%の女性が、生涯のうちに1回は整形...
新年だしスッキリしよ! 昔の服が捨てられない人への処方箋
 必要最低限のお気に入りの持ち物で生活する「ミニマリスト」とは対照的に、「物を捨てられない」と悩む人はたくさんいますよね...
新年初買いはECサイトで30%オフのパンツ!プロの接客と裾上げにも涙…
 冬のセール真っ只中、仕事の合間にD2Cブランドのワイドサテンパンツをポチっとしました(笑)。で、手元に届いた“戦利品”...
【専門家監修】心を健康に! 自己肯定感を上げるセルフコンパッション術
 彼女の名は、えりの。女性の心を癒すためにはじめたサロン「コクハク」のオーナーで、界隈では「えりのボス」の愛称で知られ、...