出版社OLが“人妻風俗”に転落した理由 美沙さんのケース#4

神田つばき 作家・コラムニスト
更新日:2019-05-20 17:25
投稿日:2019-05-16 06:00
 職場の人たちからも、実家の家族からも距離を置いてしまった美沙さん。一人の給料で健斗と二人の生活費をまかない続けてきましたが……。

禁断の世界に足を踏み入れるしかない

女性上司の優しい言葉も…(写真:iStock)
女性上司の優しい言葉も… (写真:iStock)

厳しい人だと思っていた女性上司から

 美沙さんの危険な兆候に気づいたのは、例の女性の上司でした。

 いつも顔色が悪く、朝からあくびをしている、食欲がないのか昼食をとっていない、洗濯していない服を着ている……など、黄色信号が赤信号に変わりつつあると感じたとき、上司は美沙さんを呼び出し、残業をやめて体調管理するように、と言い渡しました。

「実は私も過労から鬱病になりかけたことがあるの。美沙さん、何か無理をしていない? 失礼だけど、当時の私に似ているような気がしているんだ。仕事以外のことでもかまわないから、私に話してくれないかな?」

 上司のことばは胸にしみました。親身な良い人だったんだ、と気づいたのです。

 それなのに家に帰り、ドアを開け、健斗が散らかし放題に脱ぎ捨てた衣服やシンクにためた食器と残飯の匂いを吸った瞬間に、

「上司は仕事で言っているだけだ。私の人生を賭けられるのは会社の人じゃない、健斗しかいない」
と思ってしまうのでした。

彼を失わないで済むのなら、何でもする!

「俺が負担なんでしょ?」(写真:iStock)
「俺が負担なんでしょ?」 (写真:iStock)

 困ったことになった、と美沙さんは焦りました。残業ができなくなれば生活費が足りなくなります。健斗に相談しましたが、

「わかりにくいな、ハッキリ言えよ! 俺が負担なんでしょ? わかったよ、実家に帰るよ!」
と言われると、

「そんなこと言わないで……! 私のやりくりがヘタなだけだよ。ごめんね、これからはちゃんとするね」
と、心にもなかったことを言ってしまいます。健斗に洗脳され依存していた美沙さんは、健斗を失うことが何よりも怖くなっていたのです。何とかして収入を増やす方法を見つけよう、と決心しました。

 見つけたのは、絶対に健斗に知られてはならない方法でした。健斗が寝ている深夜にネットで「高額バイト」を検索したのです。

 キャバ嬢、コンパニオン、ソープ嬢、AV女優、パーツモデル、脚フェチマッサージ、デートクラブ、チャットレディ……何をするのか想像がつかないものもありました。

 堅い家庭に育った美沙さんには、一生縁がなかったはずの仕事ばかり。それでもこの中から自分にできるバイトを探さなければ、健斗と二人の生活を維持していくことはできません。

 水商売はダメだと思いました。お酒の匂いで健斗にバレてしまいます。デートクラブも、お客の食事やバーに同伴するのでダメ。AVはネットからバレてしまいそう。選択肢は風俗しかありませんでした。

36歳、はじめての風俗デビュー

会社員と風俗嬢の二重生活に…(写真:iStock)
会社員と風俗嬢の二重生活に… (写真:iStock)

苦しいはずの風俗勤務、それよりも…

 美沙さんは「奈々子」という源氏名で“人妻風俗”に勤めはじめます。18時までは受験参考書の会社で働き、19時には待機室で客からの指名を待つ毎日。職場の人はもちろん、健斗に知られてはならない……といつもピリピリしていました。

「30代半ばになって風俗で働くなんて……お客にいやがられたり、バカにされたりするんじゃないかと不安でした。でも、実際にはそんないやなことはありませんでした」

 清楚でまじめな美沙さんは実年齢よりも初々しく見え、リピートのお客が付くようになりました。お客の脱いだ服を丁寧にたたみ、言葉づかいもやさしい美沙さんに、

「あんた、本当に良いところの奥さんなんじゃないの? なんでこんな仕事しているの?」

 と、心配するお客もいました。

 風俗ですから手や口での処理をしなければなりません。かなり抵抗があったはずですが、

「正直、健斗にするより楽でした。お客さんとは仕事だから……」

 と、美沙さんは口ごもります。

「健斗は突然……夜明けの4時や5時に私を起こして、口での処理を求めるので……。眠くて舌の動きが止まってしまったり、歯を立ててしまったりすると怒るし。でも、お客さんとは料金通りのことをすればいいだけなので、慣れてしまうと楽でした」

 健斗には、会社で残業していることにしました。風俗のバイトがばれたら健斗は去ってしまうだろう、と美沙さんは細心の注意を払っていたのです。

 しかし、健斗はそんな美沙さんの変化の裏側を執拗に嗅ぎまわっていたのです。ある夜、デリヘルのバイトを終えて帰宅し、健斗が寝ているベッドに入ろうとしたときのことです。

「おかえり、奈々子さん」

 眠っていると思った健斗に源氏名を呼ばれ、美沙さんは凍りつきました。

(次回に続きます)

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