大失恋を経て婚約した男は視えてる? 20代ネイリストの幸福と恐怖 #1

蒼井凜花 官能作家・コラムニスト
更新日:2024-09-03 13:53
投稿日:2023-09-22 06:00

デート中に起きた不思議なこと

――素敵な出会いがあってよかったですね。で、肝心の不安というのは……?

「実は……こうして話す今も心配なんですが……ある日、不思議なことがあったんです。交際して間もない頃、まだ私の自宅マンションに招いていない段階で、彼がデート中に妙なことを言ったんです。

――弓香の家の廊下の電球、切れかかってない?

――えっ。

――玄関に入って……廊下を進んだ2つ目の照明。そろそろ取り換えた方がいいかも。

 驚きました。彼には家の間取りなど、一切伝えていません。

――なぜ、わかるの?

――なんとなくそんな気がしただけ……あ、気を悪くしたらごめんね。

――ううん、大丈夫。今日は帰りに電球を買って帰るね。

 そう笑顔で答えました。帰宅すると、案の定、電球が切れていて……。不思議な気持ちのまま、電球を取り換えたんです。

もしかして彼に悟られている?

(もしかして……彼って『視える』タイプ……?)

 一抹の不安が押し寄せてきました。

 何もかも見透かされている? と思ったところで、私が不審に感じるそれすらも、彼に悟られているのでは? と、ちょっと気味が悪くなって……。

 電球を取り換えた直後、スマホの着信音が鳴りました。

 慌ててスマホの液晶画面を見ると、英明さんです。

――ありがとう。電球……やっぱり切れてたの。買って帰ってよかった。

 私はあえて明るい声で言いました。

――それは良かった。困ったことがあったら言ってね。

――あの……なぜ、切れかかっているとわかったの?

あっけらかんと語った特殊能力

 私は素直に聞きました。これから交際を進めていこうという段階だったので、彼のことは早いうちに知っておきたかったから。

――自分でもよくわからないんだ。ただ弓香と話していた時、頭の中で電球がチカチカして切れる映像が浮かんだ。それだけ。

――それってすごい能力じゃない?

 私が怖さを押し隠して告げると、

――う~ん、商談では何度かうまくいったことがあるよ。あと、上司との付き合いにも役立つかな。

 彼はあっけらかんと言ったんです」

蒼井凜花
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官能作家・コラムニスト
CA、モデル、六本木のクラブママの経歴を持つ異色の官能作家。近著に「CA、モデル、六本木の高級クラブママを経た女流官能作家が教える、いつまでも魅力ある女性の秘密」(WAVE出版)、「女唇の伝言」(講談社文庫)。
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