【2023年人気記事】ラブホテルに泊まりました。

新井見枝香 元書店員・エッセイスト・踊り子
更新日:2024-01-03 06:00
投稿日:2024-01-03 06:00

遠征先で「ご宿泊」することに…

 ところで先日、ストリップの遠征先で、ひょんなことからラブホテルに宿泊することになった。私が体当たり系のエッセイストなら誰に配慮することもないだろうが、腐ってもストリッパーは人気商売ゆえ、詳細は省かせていただく。

 そうすることによって、周囲に「浮いた話がなくもないのか?」と思わせる効果もある。全くないより、ありそうなくらいがそそられる、それが人間の心理というものじゃないか。

 そのホテルはスイーツではなく、イルカがテーマであった。入り口の上には実物大ほどのイルカが何頭か宙を泳いでいる。しかし館内にイルカらしさはなく、お任せで入った部屋には、浴室とは別に、白い浴槽がベランダに置かれていた。露天風呂と呼べなくもない。

疑似ナイトプール体験

 ボタンを押すと泡が出て、ランダムに切り替わるライトが湯船の中を照らす。これは昨今流行の、いわゆるナイトプールみたいではないか。

 ビキニ姿でフロートに乗って、決して頭から潜ってクロールしたりはせず、ドリンク片手に映える写真を撮ってキャッキャするやつだ。密かに憧れていたが、なんとここでコンパクトに体験できるとは。

 夜空は切り取られたように狭くても、こちとら貸し切りだ。コンビニで買ってきた檸檬堂もある。起き抜けのモーニングプールも可能だ。

エンタメよりジツがいい

 それから私は、いくつかのラブホテルに行ったが、カラオケができたり、マッサージチェアが使えたり、フェイスパックが用意されていたり、ビールやハイボールが飲み放題だったり、まぁ楽しいことこの上ない。そのうち、テーマに特化したエンタメラブホテルより、実質的なサービスを重視するようになった。

 だいたい、貝殻型のベッドで抱き合って絵になるカップルなんているか? ただでさえラブホテルですることは、冷静に見れば滑稽なのである。ベッドが回転するとか、回転木馬に乗るとか、これ以上おもしろくしてどうする。

スイーツホテルではもう満たされない?

 というわけで、私をスイーツホテルに連れて行こうと密かに画策していた人には申し訳ないが、今後は、ほんの少しだけ非日常感を味わえて、実質的なサービスが充実したラブホテルを探しておいていただきたい。

 いいラブホテルの条件は、冷蔵庫に持ち込んだ酒やつまみを冷やすスペースがあること、電子レンジが室内にあること、プレイステーション2があって「太鼓の達人」ができること、できれば近くにセブンイレブンがあること、間違ってもコスプレ衣装はレンタルしないで欲しい。

 体操服もスク水も、メイド服もバニーガールも、仕事柄、毎日嫌になるほど着ているのでね。

新井見枝香
記事一覧
元書店員・エッセイスト・踊り子
1980年、東京都生まれ。書店員として文芸書の魅力を伝えるイベントを積極的に行い、芥川賞・直木賞と同日に発表される、一人選考の「新井賞」は読書家たちの注目の的に。著書に「本屋の新井」、「この世界は思ってたほどうまくいかないみたいだ」、「胃が合うふたり」(千早茜と共著)ほか。23年1月発売の新著「きれいな言葉より素直な叫び」は性の屈託が詰まった一冊。

XInstagram

関連キーワード

ライフスタイル 新着一覧


28歳独身“知識ゼロ”の私が卵子凍結セミナーに参加してみた
 日本は不妊治療の件数は世界一なのに、体外受精で赤ちゃんが産まれる確率は最下位。そんな状況を変えるために、ミレニアル世代...
女が親友をもつメリット! 女社会にも清い友情は存在する?
「女社会」という言葉を、聞いたことがあると思います。このワードを聞くと、どことなくドロドロとした女性ならではの関係性を想...
彼女と喧嘩して悩む男性に…復縁と恋の花「ガーベラ」の理由
 あるまったりとした昼下がり。いつもの慌ただしい店内とは打って変わって、ワタクシが猫店長「さぶ」のお腹に顔を埋めて癒され...
靴擦れが…今すぐできる即効対策&痛くならない方法や裏技
 気に入って買った新しい靴で靴擦れが起きた時って、とにかく凹みますよね。サイズも合っているし試着もしているのに、長時間履...
「大盛りくださーい!」食べ盛りのおねだり“にゃんたま”
 にゃんたまωが大きくなるごはんくださーい! 食べ盛りなので大盛りくださーい!  にゃんたま君に弟ができたので、ご...
はじめてのホストクラブ どんなところに気をつけたらいい?
「ホストクラブに行ってみたい! でもドンペリをねだられそうで怖い……」と迷っている女性がとても多いです。けれどほとんどの...
介護施設の選び方…入所前に“本性”を暴くチェックポイント
 近ごろ、ニュースで目にするたびに高齢者への虐待に心を痛めています。筆者は、これまで6つほどの介護施設で働きましたが、そ...
失敗しない家の選び方 快適生活のため気をつけるポイント6つ
 筆者は、これまでの人生で実家の引っ越しも入れると、8回ほど引っ越しをしています。そのうち5回ほどは、結婚や仕事の都合、...
えっ転移? 子宮頸がん術後に襲いかかる後遺症リスクのお話
 私は42歳で子宮頸部腺がんステージ1Bを宣告された未婚女性、がんサバイバー2年生です(進級しました!)。がん告知はひと...
やっと会えたね♪ 水辺でデートを楽しむ幸せ“にゃんたま”
 望遠レンズを覗いていると……きょうのにゃんたまωは、水辺で決闘!?  いいえ、水辺で逢い引きです。  雨が...
オンナが恋愛ネガティブになる“不幸のスパイラル”脱出法とは
 いつからだろうか? 仕事は楽しくできるのに、プライベートではなぜかネガティブ。特に恋愛に関しては腰が重い。 「この人...
犬を飼いたいと思ったら…救える命があることも知ってほしい
 近ごろは空前のペットブームですね。「犬って可愛いなぁ」と思う人も多いのではないでしょうか。散歩をさせている犬をみれば「...
小さな優しさが呼んだ奇跡…ワタクシは花のチカラを信じます
 死ぬまでにしたいことはなんですか――? そんなことを突然聞かれても、どれだけの方が答えられるのでしょうか。  あ...
大人のストレス発散方法5つ! イライラ社会をどう生き抜く?
 日々、ストレスを感じることは多くあります。仕事や人間関係でどうにもならないことに遭遇すると、やきもきしてしまいますよね...
愛しいあの子を待ち伏せ…気品あふれる白い“にゃんたま”王子
 きょうは、幸せの白いにゃんたまω。  綿アメみたいにふわっと品性あるにゃんたまなので、「白にゃんたま王子」と名付...
身近な人の変化に気づいて 認知症の兆候が疑われる3つのこと
 身近な人の変化に「認知症かも……」と疑いたくなることはありませんか? 認知症が社会的な話題となり、「もしかして」と思う...