プラトンで分かる 2500年ぶりに令和に蘇った【エロス】とは

小悪魔ドルチェ寿司 編集者
更新日:2019-07-28 18:23
投稿日:2019-07-19 06:00
 わたしとひろしの48歳差の激しすぎる恋。男は何歳まで男なのか、81歳との恋愛模様とはいかなるものなのか。ホットなイットボーイというより、じわじわ低温やけどさせる現役引退系“脳みそ性器”。そんな男を好いて惚れ尽くしたわけですが、今回はジェロントフィリアを掘り下げる、ギリシア哲学におけるエロスの話をしたいと思います。

女と女、男と男、女と男、みんな違ってみんなエロス

【vol.22】

 前回お話ししたように蜜月期の恋人同士はとにかくどんなに話しても話し足りないわけです。お互いを知ろうと貪欲に、口づけさえ惜しいほど言葉を尽くして会話し、伝えようとします。

 お互いが心の凹凸を充足するために言葉で埋め、その話し足りないなかでセックスをし身体の凹凸を埋め合う。身体の凹凸を埋め合う欲求は根源的なものとして、【エロス】と古代のギリシア哲学では表現されていました。

 ということで、今回はとても大切な身体の凹凸を埋める、プラトンのmissing halfの話を致します。

エロスの語源は…

 プラトンの《饗宴》によれば、そもそもヒトは神々も嫉妬するほどの完璧な姿をしていました。原始における人間はひとつの身体の上にひとつの頭があり、そこにはふたつの顔、そして4本の腕に同じく4本の足を持っており、それがヒトの本来あるべき完璧な姿として存在していたのです。

 しかしあまりにも完璧な姿で神々を脅かす存在になりつつあったので、ゼウスが怒ってこの完全体を真っ二つに引き裂き地上に放ったのです。

 その瀕死の完全体をゼウスがアポロンに命じて修復させました(ヤサシミ……?)

 その真っ二つに千切れ爛れた箇所をアポロンが縫い合わせ、最後の結び目をおヘソとして身体の中心に作りました。それは、自らの驕り高ぶりにより破滅した戒めを、未来永劫、忘れないため。

 それから人間は哀れな不完全体として、惨めに相手を探す業を背負いました。その切り離された片割れ(missing half)を探し続け希求し渇望する説明がつかない衝動を【エロス】と呼ぶのです。

フレキシブルなハーフ&ハーフ

 それにしてもおヘソを見るとなんとなく羞恥心が刺激されて性欲が減退するのは(このわたくしの性欲が!!!)そんな理由があるんですかね……? 誰かお分かりになりますかね……?

 と、説明が長すぎましたが、なんと面白いことに前座はここからです(セルフハードル……)。

 この完全体、さすがというべきかなんというべきか。

【女と女】

【男と男】

【男と女】(両性具有)

という3種族あり、【男と女】の種族はアンドロギュノス(アンドロ:男、ギュノス:女)と呼ばれていました。フレキシブルなハーフ&ハーフ!

 その3種族にはもちろん優劣などなく形態が当たり前として、プラトンが生きた紀元前428頃~紀元前347頃に語られていたのです。
(※古代ギリシアにおける少年愛の正当化によるプラトン議論はここでは別のトピックになるので置いておきます)

プラトンは納得していた

 宗教や法律で制限され、抑圧され、迫害を受けるずっと前に、男と女、女と女、男と男の組み合わせは、同列に、等しく、尊く、完璧だ、というプラトンのディスクールに皆、首肯していたわけです。

 かつて女女であったものは女に惹かれ、男男であったものは男に惹かれ、男女であったものは異性に惹かれる。2種類いるなら3通り、考えてみれば当たり前です。
(※この時点で生物学的女、生物学的男、精神的女、精神的男など組み合わせの数を論じる話はしません。アンドロギュノスの個々対が男だと思えば男、女だと思えば女という話です)

 その3種族が神々から嫉妬されるほどの完全体であるという言説、そして両性具有と同性具有が当たり前に平等であるという価値観が2500年経ってまた回帰しているこの現代……ビバラビーダ(Viva la Vida=美しき生命)と思いませんか?

老人と若人の組み合わせも存在した(かも)

 からの、本題です! ここにきて? はい! ようやく! 本題! ビバラビーダ!!

 とまあ、そんな3種族だからこそ、アンドロギュノスのくくりには男と女のなかでも、老人と若人の組み合わせがあったんじゃないかなぁーなんて思うのです。

男と女の“老若愛”

 ということで、ここからはプラトンから派生してアンドロギュノス的ジェロントフィリアについて、ドルチェ寿司の妄想です。

 完全体として、経験と知識を豊富に持つ老人の片割れと溌剌とした活力で2人の未来を牽引する若人のアンドロギュノス。

 経験からほとばしる老人の含蓄と間違いのない信頼感に、若人は純粋に愛と崇拝を惜しみなく与えます。そして老人は若人によるピチピチと音がしそうなほどのビバラビータを享受し、身体のなかから弾けんばかりに湧き上がってくるエネルギーを身体全体に感じて、ひとつの完全体は最高に幸せです(クラムボンふうに)。
(※ギリシア哲学のなかでは時間の概念から定義し直さなくてはいけないので、ここでは時間の流れは不平等で老人と若人のアンドロギュノスが同時期に誕生したと仮定します)

 ただし、そのエクスタシーがキマっている恍惚状態から引き裂かれたとしたら、発狂しながら探すのは自明の理。

 そう考えると他の誰でもないひろしにピタリとハマったわたしはノーリーズンでしかなかったわけです。

ひろしはわたしのmissing halfだった!

 ひろしに会うまでは、説明つかないこのなにか、がなにか分からなかったのです。一心不乱にどうにかどこかに注ぎたいなんともいえない衝動、粘膜と粘膜に基づく垂れ流しの液体のなかにいるのに、求め続けて何度試しても満たされない渇いた性欲とか、もうぜーんぶ引っくるめたら、プラトンのいう【エロス】になるんです。

 元の状態に回帰しようとする《わたしの、本来に、還る》という原始に組み込まれたもの、それが【エロス】。

 ちょっとスピリチュアルに傾きすぎて小悪魔ドルチェスピみたいになっていますが、まだ行かないで! 転だけでも! 転だけでも読んでいって!

 ということで、起承転結の[転]に向かいたいと思います。

 みなさま……お気づきでしょうか。いやに(※〇〇〇〇)という注意書きが多いということに……。

 次回の[転]では、プラトンからのまさかの太宰治に転がります。

 太宰治《恥》はSNSを使う全民が読むべき短編なのですが、アンドロギュノス的ジェロントフィリアと注意書きまみれの令和元年を太宰で読み解く狂ったコラムはまた次回(7/26公開予定)です!

小悪魔ドルチェ寿司
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出版社で勤務のかたわら、現場主義のスケベライフを送っている最中に81歳と恋に落ち同棲生活開始。

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