「着飾るのは何もないから」偽セレブがマウントを取る理由。“本物の令嬢”の前で見つけた本当の自分

ミドリマチ 作家・ライター
更新日:2025-10-15 17:48
投稿日:2025-09-13 11:45

【武蔵小杉の女・鈴木綾乃 35歳】

 綾乃は千代田区の高級マンションから武蔵小杉に2年前に引っ越して来た。セレブ気取りの綾乃は同じマンション住人でさえない “たっくんママ”を避けていたが、実は彼女は……。【前回はこちら】【初回はこちら

【関連記事】千代田区民は“勝ち”だよね。通勤ラッシュを知らない自分は上流階級層の女【御茶ノ水の女・鈴木綾乃33歳】

 ◇  ◇  ◇

「本当に久しぶり! 20歳以来?」

 綾乃が予約し、セッティングしたマンションのゲストルームで、藤堂さんとたっくんママは、ふたりだけの世界に入り込み、思い出話にふけっていた。

 綾乃の住む部屋よりも広々としたリビング、解放的な見晴らし、高級家具で揃えられたインテリア――本当は、自分の部屋だと偽るはずだった。

 ふたりが学生時代の友人同士だったとは。

「そのくらいかな。ユリ、結婚式も来れなかったし」

「あの時はゴメンね。妊娠中で…」

 彼女たちが青春を過ごしていたのは、アメリカのニューヨークの郊外にある全寮制スクール。ふたりは高校時代そこに留学をしていたそうで、藤堂さんはユリ、たっくんママは本名の真琴からマコ、そう呼び合う仲だったようだ。

セレブママと地味ママの関係に動揺

 綾乃は、話弾むふたりの狭間で呆然と居場所を見失っていた。

「ごめんなさい、置いてけぼりにして。せっかく綾乃さんとも久々に会えたのに」

 藤堂さんが気遣い、話を振る。綾乃は、ハッと目を覚ました。

「いいんですよ。だって久々の再会なんでしょう」

 余裕のあるふりをして、逃げた。たっくんママこと真琴さんと目を合わすことがはばかられたから。

 どうやら真琴さんは、この地域の地主の娘で、このマンションが建てられた土地の一部を所有していたそう。公立出身であるというが、留学ができるのも、高層階に住んでいるのも当然だ。

 さらに旦那さんも地域で何代も続く開業医で、小学校からの幼馴染なのだという。さえない見た目ながらも、地に足着いた準富裕層であった。

「私と綾乃さんは、マンションのキッズルームで最近知り合ったばかりなの。うちのコ、“日本で”お受験を考えているから、娘さんを私立小学校に通わせているという彼女に思わず声をかけてねぇ」

 屈託のない笑顔で真琴さんは綾乃との関係を紹介した。すると、藤堂さんは目を丸くした。

些細なウソがバレた恥ずかしさ

「あら綾乃さん、あの時は、私立は行けないって話していたはずじゃ…」

「た、ただの、謙遜ですよ。落ちたら恥ずかしかったので、隠していたんです。御茶ノ水から引っ越したのも、通学の関係で……神奈川方面の方が自然もあるし、私立の選択肢も幅広いし…」

 まどろっこしい、飾り気の多い、言い訳だらけの現状。その不自然さに話している自分がいたたまれなかった。

 しどろもどろな姿を心配そうに見つめる4つの瞳に、綾乃は全てが露わになっていることを悟り、どこか穴があったら中に入りたい思いに駆られた。

ミドリマチ
記事一覧
作家・ライター
静岡県生まれ。大手損害保険会社勤務を経て作家業に転身。女子SPA!、文春オンライン、東京カレンダーwebなどに小説や記事を寄稿する。
好きな作家は林真理子、西村賢太、花村萬月など。休日は中央線沿線を徘徊している。

関連キーワード

ライフスタイル 新着一覧


「私って不幸かも」つらい現状を変えるために今やるべきこと
 人生は常にハードモードで、SNSなどを見るとキラキラした世界が広がり、自分の現状がイヤになる時ありますよね。  仕事...
真っ先に“にゃんたま”を…これって愛?それともビョーキ?
 あそこに猫がいるよ、と聞けば「そのこは男の子?女の子?」と聞いてしまう。  猫を見つけた時、視線の先は真っ先にに...
数秒で決まる!第一印象を良くする7つの方法とメリット
 あなたは、はじめて出会った人がどんな人なのか、どのタイミングで判断していますか?きっと「第一印象で決めている」という人...
あなたは大丈夫?マジで勘弁と思われる“オバさん化”早見表
 男女問題研究家の山崎世美子(せみこ)です。さて、「おばさん」と「お姉さん」のボーダーラインはどこにあるのでしょう。他人...
コロナ禍のオンライン飲み会がつらい…上手な断り方・NG例
 コロナ自粛中の今、オンライン飲み会が流行っていますね。私の知り合いの間でも毎日のようにオンライン飲み会が行われています...
オネエさんとのライブチャットを体験!パワーをもらいました
 ひとりでお部屋にこもっている時、誰かと話をして思い切り笑いたくなりますよね。そんな時、パワーをくれるのはオネエさんたち...
“美人は性格が悪い”って噂は本当? 理由&真相を徹底解析!
「美人は性格が悪い」と良く耳にしますが、実際のところはどうなのか気になりますよね? そこで今回は、美人が性格が悪いと言わ...
お猿さんより上手でしょ!ドヤ顔が可愛い木登り“にゃんたま”
 ここまで登れる? こっちへおいでよ!  きょうは、サルスベリの木に登るにゃんたま君にロックオン。  猿だっ...
四季を感じて心の癒しと希望をアナタに…植物生活のススメ#1
「STAY HOME」の今、おうちでの過ごし方を色々と模索なさっている方が多いかと思います。家中のお片付けしてみたり、ネ...
“やや緊急性を要する”手術に向けステロイド投与が始まるも…
 潜在的な患者も含めるとおよそ30〜60人にひとりの女性がかかると言われている甲状腺疾患。バセドウ病は、甲状腺機能が亢進...
カレから「大切にしたい」と思われるための重要ポイント!
 カレや気になる男性、そして周りから「大切にしたい」と思われたいですよね。荷物を持ってくれたり、車道側を歩いてくれたり…...
僕も!? 去勢手術のしらせに固まるお兄ちゃん“にゃんたま”
 きょうは前回のにゃんたま君と兄弟、いつもべったり一緒のにゃんたまωお兄ちゃんです。 「去勢日が間近」と知ってショ...
スマホに振り回されてない? SNS疲れの7つの原因&対処法
 あなたは、1日にどれくらいスマホを触っていますか? SNSをしている人の多くは、時間ができるたびにスマホをチェックして...
コロナ禍の今だからこそ…オトナ女子が見直したい3つのこと
 男女問題研究家の山崎世美子(せみこ)です。TVやネットニュース。世間はコロナウイルスの話題ばかりで、精神的にも経済的に...
お家にいる時間が長い今こそ「布ナプキン」デビューのススメ
 10年前から布ナプキンをたまに使っていたのですが、この外出できない状況をきっかけに、布ナプキンと布ナプキンショーツを買...
もうすぐ去勢手術…やんちゃ盛りの“にゃんたま王子”に悲報
 見て見て!カッコイイにゃんたまωでしょう!  にゃんたま君は青空の下に生まれて、優しいお姉さんに保護されました。...