がん術後は眠気に吐き気の“六重苦”で病床の中のマリオネット

コクリコ 編集者
更新日:2019-11-05 07:02
投稿日:2019-09-17 06:00

2日目はボタン連打で鎮痛剤を増量投与

 いつ朝になったのかもまったく分からぬまま、2日目に突入です。

 母が猛暑のなかお見舞いに来てくれましたが、「あー、暑い暑い」と言いながらイスに座って扇子でパタパタと仰いでいるその羽音さえもうるさい。とにかく、神経が高ぶり、なにもかもが不快。「うるせー! 早く帰れー」とすら思ってました。

 ごめんなさい……。そして、すいー。また寝る。

 何分経ったか分かりませんが、うっすら目を開くと読書している母。「ありがとう。もう大丈夫だから帰っていいよ」と伝え、帰宅してもらいます。

「コクリコちゃん、顔色が悪すぎる」と母が言っていましたが、顔色なんてどうでもいい。やっぱり眠い……と思ったら、ん? 痛い。

 大変です。麻酔が切れてきました! 「気持ち悪い」「不快」「眠い」に加えて、次第に「痛い」も参加。「痛かったら押してくださいね」と言われていたナースコールの形状に似ている麻酔ボタンを押します。ナースコールと麻酔ボタンは絶対に手のそばに置いて寝ないと不安で不安で。

 痛い!! ボタンを連打!!

 このボタンはなにかというと、手術時に処置した硬膜外麻酔の針を術後も留置することで、そこから点滴のように鎮痛剤が持続投与されているんですが、押すとさらに鎮痛剤が増量でき、患者自身が自分で痛み止めを調節できるという仕組みなんです。

 もちろん、安全のために無尽蔵に鎮痛剤が出てくるわけではありませんが、「痛みは我慢しないでいい」「吐き気も我慢しなくていい」ということで、ボタンをバンバン押します。

 麻酔明けでひどい吐き気も襲ってきます。吐き気止めの点滴もじゃんじゃん。薬漬けです。

がん専門病院は嘔吐患者が多い

 そういえば、数日前、廊下で何度も嘔吐している女性がいました。その方は麻酔明けだったようですが、手術以外にも抗がん剤の影響やそれ以外なのか、がん専門病院はとにかく嘔吐している方が多いです。

 ですので、においの強いお花の持ち込みや、香水も厳禁。看護士さんはずっと吐しゃ物のお掃除をしています。大変ですよね……。

 私は麻酔では嘔吐しなかったのですが、後日えらい目に遭って看護士さんにご迷惑をおかけすることになります。この話は追って。

歩けば歩くほど元気になる

 さて、こんな状態なのに「さぁさぁ、術後のお腹の中の癒着を防ぐために歩きましょう」と体格のいい看護士さんが2名やってきました。マジですかい。

 目を開けるのも、口を開くのもだるいのに。ベッドを起こして起き上がるのすらだるいのですが、ベッドのへりに無理やり座らされ、マリオネットのように看護士さんに立たされ、歩行準備。

 でもどんなに時間をかけても1歩も踏み出すことができず、その日は立ち上がるのみ(正確には「立ち上がらせられたのみ」)で終了。歩くってこんなに大変なんだな、足が上がらないよ……。

 会社に胃がんで手術した先輩がいて、入院前には「術後はとにかく痛いけど、歩かされるから。でも歩けば歩くほど元気になるからね。頑張ってね!」と言われていたのに、一歩も歩けなかったなぁ。

日記を振り返る

 気づけば、昨日の夜からずっとスマホのバイブが鳴っています。誰だろう? きっと友達が心配してくれてるんだろうな……。でもスマホを見る気力はありません。眼鏡をかけるのも面倒だ。ひどい近眼なので、目を開けてもほとんどなにも見えず、寝てるのか起きているのか分からないまま2日目が終了。夜中に水をちょこっとだけ飲みました。

 入院中は日記を書いていたのですが、術後2日目、7/18(水)の日記は以下の通りです。

気持ち悪い
痛い
寒い
暑い
眠い
つらい…

 究極の“六重苦”――。次回(9/24公開予定)に続きます。

コクリコ
記事一覧
編集者
実用書の編集者(社畜)。アラフォー未婚のがんサバイバー2年生(進級しました!)。2018年、子宮頸がんにて広汎子宮全摘出術を受ける。現在ホルモン補充療法をしながら経過観察中。SNSをパトロールするのが趣味。“Twitter探偵”とも呼ばれる。でも幸せになりたい。

関連キーワード

ライフスタイル 新着一覧


10年分のカネの流れが怪しい。会員数が集まり⼤喜びしたのもつかの間…
 本コラムは、地元の“幽霊商店会”から「相談がある」と言われ、再始動の先導役を担う会長職を拝命することになったバツイチ女...
円満退職に必要な最低限のマナー6選、「立つ鳥跡を濁さず」は社会人として当たり前!
 終身雇用の時代は終わり、今では6割の社会人が転職経験ありだというデータも出ています。読者の皆さまのなかにも、「転職しよ...
更年期、それはある日突然に…45歳女の体が『倦怠感で満タン』になった
 女性なら誰でも通る茨の道、更年期。今、まさに更年期進行形の小林久乃さんが、自らの身に起きた症状や、40代から始まった老...
生理前を穏やかに過ごすご機嫌アロマ術【調香師が解説】タイプ別おすすめの香り・精油・香水は?
 女性の体は生理が近づくとホルモンのバランスが崩れ、精神的なイライラや落ち込みに加え、むくみや便秘、疲れやすさなど、PM...
兄弟姉妹なのになぜ不仲? 怒る前に知っておきたい原因5つと対応策3つ
 子育てをしていると、兄弟姉妹の不仲に悩む人が多いですよね。一体何が原因なのでしょうか? また、自身が親になっても兄弟姉...
思わず二度見!『バブ』新商品・MEGA級のボコボコ泡の実力は? 自宅の風呂がジャグジーになるのか
 話題のコスメや、広告でよく見かける化粧品や日用品。「webでよく見るあの商品、本当にイイの? 」「買ってみたいけれど、...
手のぬくもりとともに
 自然と手を合わせるときの気持ちって、  みんな、おんなじだよね。
実りの秋! 澄みわたる青空の下“たまたま”狩りに出かけませんか?
「にゃんたま」とは、猫の陰嚢のこと。神の作った最高傑作! 去勢前のもふもふ・カワイイ・ちょっとはずかしな“たまたま”を見...
女と水がいっぱいだ…『娑婆』は何て読む? ヒント:「娑婆はいいな」
 知っているようで意外と知らない「ことば」ってたくさんありますよね。「女ことば」では、女性にまつわる漢字や熟語、表現、地...
ほっこり癒し漫画/第83回「迷いインコ歌をうたう 前編」
【連載第83回】  ベストセラー『ねことじいちゃん』の作者が描く話題作が、「コクハク」に登場! 「しっぽのお...
中目黒「ダコー」はまだ大混雑? 代官山「無印良品」新店はオサレな店員さんだらけだった!【秋の東京散歩】
 8月のオープン時には話題を呼び、大行列をなしていた中目黒のパン屋「ダコー(dacō)」。あれから2カ月が経ち、やっぱり...
下世話な仕事がバレた? 夫や息子の「意外な反応」で主婦が気づいたこと
 大崎の高層マンションに暮らす華は、テレビ局に勤める夫・大輔と二人の子供に囲まれ悠々自適な専業主婦生活を送っている。毎日...
地味な女に負けた? 夢を諦めた“こたつライター”の「プライド」が砕かれるまで
 大崎の高層マンションに暮らす華は、テレビ局に勤める夫・大輔と二人の子供に囲まれ悠々自適な専業主婦生活を送っている。毎日...
私の「仕事」は夫に内緒。専業主婦が下世話なゴシップにのめり込むワケ
 夫を仕事に、ふたりの息子を小学校に送り出してからが、自分の時間だ。  長時間かけて丁寧に淹れたブルーマウンテンを...
プロ作家・村上龍先生をリスペクト。64歳のプロ童貞が語る「自己啓発本を好きなこれだけの理由」
 コミックや書籍など数々の表紙デザインを手がけてきた元・装丁デザイナーの山口明さん(64)。多忙な現役時代を経て、56歳...
「#男児ママ」トレンド入り 小学校低学年の息子が大浴場で誰かに触れて問題になったら?【弁護士解説】
 9月末、X(旧ツイッター)で「男児ママ」がトレンド入り。これは男児を銭湯や温泉、または女子トイレに連れてくる男児の母親...