淡い恋を失った心に入り込む“優しい男”…優紀さんのケース#3

神田つばき 女と性 専門ライター
更新日:2020-03-29 23:10
投稿日:2020-03-29 19:00

少女のころ母親に言われた言葉がよみがえり後悔にかられる

 A氏とモデルがホテルに入る光景が頭の中にちらつき、優紀さんは朝まで眠れませんでした。二人はカレカノなんだろうか? それとも、写真家がモデルとエッチするのはあたりまえのことなんだろうか?

 実家の母に言われた言葉がよみがえってきます、「責任を取ってくれない男性に体を許してはダメ」。A氏の気持ちを確かめたわけではないけれど、自分と責任ある関係になるなんてあり得ない……優紀さんは暗い気持ちでいっぱいになりました。

先生と自分の関係はいったい何なのか?

 その後、撮影に呼ばれることもないまま夏休みが終わりました。

 A氏に「会いたい」という意味のメールを送ってみましたが、

「俺はアーティスト。女性を女として見るだけではなく、一緒に創造するクリエイターとして尊敬する。優紀、俺を超えろ!一緒に制作したいって気持ちにさせてくれ!お前はそれができる。俺はそれを待ってる」

 という、煙に巻くような返事が返ってきただけでした。

叱られて萎縮する心理が遠ざけてしまった友人との関係

親身な友人の厳しい指摘に言葉を失って

 ピアノバーでバイトしている友人に話すと、見る見る顔色が険しくなりました。

「ねえ、それってバイトって言える? その作品がどこに掲載されるとか、出展されるとか聞いた?」と聞かれ、それはわからないと答える優紀さんに友人は言い放ちました。

「なんでホテルになんか行ったの?どこにも作品が発表されなかったら、ギャラで体売ったことになるよ?」

 優紀さんは何も言い返せませんでした。

あの日のことはなかったことにしたい

 作品が発表されず、A氏に付き合う気がないとしたらギャラの5万円で援交したのと変わりません。しかも、相手の手元には自分のセクシーな写真があるのです。

 優紀さんは小さなころから、親に叱られると何も言えなくなり、黙りこんでしまう子でした。友人からは心配してメールが来ましたが、相談することもなく交流を避けてしまったのです。

 私がしたことは間違っていた、何もかもなかったことにしたい、という気持ちしかありませんでした。

孤立した心に染み入った優しい言葉

 そんなある日、コンビニでいっしょにバイトしている男の子が声をかけてきました。優紀さんと同じ大学でワンゲル部に所属している、頼りがいある感じの三年生です。

「思いちがいだったらごめん。最近、元気ないみたいだけど、大丈夫?」

 自分のことを心配してくれていたのかと、孤独な心のすき間に優しさが染み入ってくるようでした。

 次回に続きます。

神田つばき
記事一覧
女と性 専門ライター
離婚と子宮ガンをきっかけに“目がさめて”女性に生まれたことの愉しみを取り戻すべく、緊縛写真のモデルとライターに。私小説「ゲスママ」、イベント「東京女子エロ画祭」「親であること、毒になること」などを企画。最近は女犯罪者や緊縛表現者に関するZINEの制作・販売を開始。Xnoteblog

関連キーワード

ライフスタイル 新着一覧


すいかばかのレシピ~'23年<3>山梨で唯一、すいかを作る星に生まれた男
 山梨県のすいか生産量が全国47位、つまり最下位である理由。それは山梨県ですいかを作っているのは、「寿風土(こどぶきふう...
ヤバい輩湧かない?30代独女が0円で「語学交換アプリ」に1カ月挑戦!
 海外の観光客も戻り、ようやく観光地が賑わいを取り戻した昨今。日本からも海外へ旅行しやすくなり、「外国語を話せるようにな...
2023-07-08 06:00 ライフスタイル
梅雨色の景色を楽しむ 2023.7.7(金)
 この時期の雲は分厚くて、空が低い。  流れる雲を目で追っていたら、湿気を含んだ風が吹いてきた。  こうして...
大人こそ見直したい「自愛メソッド」甘やかしているだけになってない?
 2023年もあっという間に下半期ですが、みなさんちゃんと自分自身を大切にできていますか?「ご自愛ください」と人には言う...
皇居外苑を散策&SDGsなスタバがスゴイ! 2023.7.6(木)
 皇居周りは都心でありながら緑が豊かですよね。集う人々はランニングやサイクリングなど思い思いに楽しんでいます。普段運動し...
超貴重!ブリティッシュショートヘアの“たまたま”に完全降伏
「にゃんたま」とは、猫の陰嚢のこと。神の作った最高傑作! 去勢前のもふもふ・カワイイ・ちょっとはずかしな“たまたま”を見...
「子供産まない」人生を正解とする夫婦の価値観、つらいと感じる瞬間は?
 生活スタイルや働き方、恋愛に関しても自由になってきた今、結婚しても子供を産まないことが「正解」と考える人が増えてきまし...
LINEの返しにも滲み出るのねぇ…「頭がいいな」と思う人のレス3選
 頭がいいかどうかは、会話をするとよくわかるものです。頭が悪い人との会話はテンポが悪く、話していて疲れてしまう時がありま...
マイクロバッグなんて夢のまた夢…鈍器級の「重すぎ荷物」を減らしたい
「ちょっと友だちとランチするだけなのに、鈍器ほど重たい私のバッグはなんなん……」と、ゲンナリしたことありませんか? マイ...
多様性がなにか 小さな子どもはわかってる 2023.7.5(水)
 北海道で暮らす、まん丸で真っ白な小さな鳥「シマエナガちゃん」。動物写真家の小原玲さんが撮影した可愛くて凛々しいシマエナ...
変態案件!? サボテン界の不思議ちゃん「リプサリス」は人気もうなぎ上り
「ワタシ、変態なんで」が、口癖の花屋の男友達K。このコラムでもたびたび登場する彼の性格はよく知っているつもりですが、それ...
休暇や帰省時にも使える!「お土産何がいい?」への最適解LINE3選
 旅行に行っている友達から「お土産何がいい?」と聞かれたら、なんと答えていますか? 「◯◯がほしい!」と要求するの...
今「韓国女子旅」でしたい5つのこと~美・食・楽、そして初体験…30代・40代女性の「好き」がたくさん!
 2023年、女子旅で最も人気の旅行先と言えばやっぱり韓国! 日本中どこからでも飛行機で3時間程度で行ける気軽さに加え、...
[PR] 2023-08-21 18:27 ライフスタイル
かわいいけど今日はもう限界かも…子育てに行き詰ったママに捧ぐ対処法
 必死に子育てに取り組んでいると周りが見えなくなってしまい、限界を感じることがあります。仕事や家事に加えて育児となると、...
ナンプラーもバルサミコ酢も余るよね…“クセ強”調味料を使い切る対処法
 いろいろな調味料がある中でも、あまり使う回数が少ない調味料は余ることがありますよね。結局使いきれずに、賞味期限が切れて...
オニギリ柄のにゃんたま君の“たまたま”は汚れのない純真純白
「にゃんたま」とは、猫の陰嚢のこと。神の作った最高傑作! 去勢前のもふもふ・カワイイ・ちょっとはずかしな“たまたま”を見...