更新日:2020-04-30 07:03
投稿日:2020-04-29 06:00
後ろを振り返った男性
間もなく列車が終点の奈良駅に近づき、ふたりが立ちあがりました。私も立ち、ドアの前に並んだ彼らの後ろにつきました。
目の前で、ふと大柄な男性の手が動きました。その手が、小柄な彼の手を握りました。小柄な彼は驚いたように、肩をビクッとさせました。そしてすぐに、後ろを振り返ったのでした。私がふたりの手を見ていることに気づくと、彼はすかさず、握られた手を離そうとしました。
あ……。私は自分の軽率を恥じました。先刻の彼の顔を伏せた仕草には、明らかな怯えがありました。いま手を引っ込めようとする仕草にも、板についた畏縮がありました。
私自身は観光地かつエロ仕事という、異国人、異邦人だらけの世界で生きているので、男性カップルを珍しくは感じません。いまはふたりの、寡黙に寄り添い合い、ふたりでひとつを象るような雰囲気に目が惹かれていただけでした。でもその視線は、彼らにとっては凶器でした。
お揃いの黄色いウエストポーチは、この旅行のために買ったもので、今日はそれを堂々と身に着けられる、数少ない機会だったのかもしれません。幸せでなければならない彼らの時間を、私は無頓着な視線だけで、いとも簡単に傷つけてしまったのでした。
ラブ 新着一覧
大好きな彼から「いつまでも長く愛される女性でいたい」と思うのは、女性なら当然のこと。その願望を叶えるためには、男性がど...
恋と愛の違いについて考えたことはありますか? 一般的には、「恋が先にあって、それが愛に変わる」という認識ですよね。では...
彼氏ができるのは嬉しいことですが、同時に避けて通れないのが浮気の心配……。でも、男性が浮気をしてしまう理由がわかれば、...
昔から、女性は「恋をすると綺麗になる」なんて言われていますが、あなたはそれを実感したことがありますか? 実は、これは本...
男女の関係では、交際相手や配偶者の態度に悩む人も少なくありません。愛し合っている男女間でも、価値観や物事の判断には個人...
「冷酷と激情のあいだvol.54〜女性編〜」では、楽観的すぎる夫の性格に価値観の違いを痛感している妻・Kさんの苦悩をご紹...
長引くコロナ禍では「コロナ離婚」と呼ばれる不測の離婚に至った夫婦も珍しくなくなっています。これまで水面下に問題を抱えて...
男性にモテるためには、ギャップが有効♡ 女性の意外な部分に惹かれて、恋に落ちる男性って意外と多いんですよ。そこで今回は...
社内恋愛は、周りに知られないようにこっそり愛を育む人が多いです。秘密で付き合うことで、ドキドキ感を楽しんでいる人も多い...
男性とお付き合いするなら、価値観が合う人を選ぶと長続きすると言いますよね。でも、「価値観が合う人」とは、いったいどんな...
SNSやマッチングアプリで知り合った人と会い、事件に巻き込まれてしまう女性が後を絶ちません。特に初めて会う場合には、自...
好きな人と結婚したはずなのに、なぜか「また、恋愛がしたい」と思う人がいます。そんな人は「相手にバレなければいいだろう」...
オトナな関係になって恋愛が前に進まない——。そんな女性の恋の悩みを聞いていると、毎回彼の家に行ってご飯を作ったり、尽く...
本来、恋愛は告白してから付き合い始めるのが一般的。でも、大人になるにつれて、「告白なしで付き合う」ということも増えてく...
せっかく彼氏ができたのに、その彼が実は「マウンティング彼氏」だったら少々厄介。そこで今回は、マウンティングする彼氏の4...
失恋の中でも特に辛いのが、職場の人に告白して振られたり、別れたりした時でしょう。失恋後も仕事相手として接したり、顔を合...