女性アイドル界に刻んだ「女性性」への反抗と解放
今月25日、平手友梨奈が20歳の誕生日を迎え成人となった。ここで改めて、10代の平手がアイドルとして、ソロとして何を残したのかを振り返り、彼女の言葉から20代となった今後の展望を紐解きたい。
まず平手が女性アイドル界に最も強く残したインパクトは、「女性性」への反抗と解放ではないだろうか。女性アイドルと言えば、長きに渡り、男性プロデューサーによって、男性ファンを喜ばせる存在として創り上げられ、いつもニコニコ可愛らしく、従順で女の子らしく振舞うことを求められてきた。
14歳で単身上京、欅坂46の一員に
平手は14歳で乃木坂46の姉妹グループオーディションを受け合格したが、そうした女性アイドルらしいキラキラに憧れたわけではなく、鬱屈として閉じ込められたような家庭や地元中学時代の環境から飛び出すためならどこでも良かったようだ。まだ東京都心部と比べて男性が圧倒的優位な地方から若くして単身上京し、16年にデビューする欅坂46の一員となった。
それまで従順な「女性アイドル像」を創ってきた秋元康氏だったが、欅坂46ではメンバーの笑わず媚びない姿から着想を得て「大人に支配されるな」というメッセージを込めた「サイレントマジョリティー」が誕生したとインタビューなどで語っている。
欅坂46「闘うパフォーマンス集団」の“顔”に
そのメッセージを最も体現できる存在として、稀有な表現力と眼力を持つ平手は最年少ながらセンターに据えられた。以降、欅坂46の楽曲は平手に当て書きされていく。
欅坂46は平手に牽引され、プロ意識を高く持ち「女だから」「アイドルだから」ということに囚われず、魂と身を削る「闘うパフォーマンス集団」となって女性アイドルの常識を変えた。
特に欅坂46後期、容姿や立ち振る舞い含め、女性アイドルどころかジェンダーの枠組みをも超越した平手は女性ファンから圧倒的な支持を得ていった。
10代の平手がファンらに魅せたもの
欅坂46の真骨頂であるライブのDVD/BDは女性アイドルでは異例の売り上げを記録し、主要“ロック”フェスに招かれた際には5万人規模のステージに観衆が殺到し、入場規制がかかるほどだった。
欅坂46の中心には「10代の平手」だからこそ持ち得たほとばしるような激情があり、いましか見ることができないという儚さと脆さを内包した閃光を放っていた。
その代償として平手は心身を消耗し、18歳半ばでついにはグループを離れ、そののち欅坂46は伝説のまま歴史に幕を閉じた。
ソロとなったこの1年半、平手は主に俳優業で撮影に追われていた。昨年は、数々の新人賞を受賞した「響-Hibiki-」(18年公開)以来の出演となった映画「さんかく窓の外側は夜」、映画3作目となった「ザ・ファブル 殺さない殺し屋」の撮影に参加した。今年は「ドラゴン桜」(TBS系)で初のゴールデン帯ドラマに出演し、多くの新規ファンを魅了した。
新作「ザ・ファブル」で凄まじいエネルギーを爆発させる
平手はその全ての作品で全く違う顔を見せている。演じ分けているというより、作中で役に入り込んで役として存在しているように見える。欅坂46の多様な楽曲の主人公に憑依し異なる表情を見せてきたのと同じだ。
中でも今月18日に公開となった「ザ・ファブル――」で演じた佐羽ヒナコは、心身共に大人の男に囚われの身となっていた日常から、予告編からも分かるように、クライマックスでは銃口を突き付けながら絶叫し立ち向かう女性へと成長する。陰がありながら凄まじいエネルギーを爆発させる様は欅坂46時代の平手同様、多くの人々の心を打っている。
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