70代女性の官能的恋愛小説「疼くひと」を読んでみた

内藤みか 作家
更新日:2021-09-09 06:00
投稿日:2021-09-09 06:00
 恋愛小説はこの世に山のようにあります。けれど、そのヒロインが70代女性というものは数少なく、ましてや性愛描写も含んでいるだなんてものは、国内ではほとんどないと言っていいでしょう。それを包み隠さず描いた『疼くひと』に、老年期の恋を学んでみました。

老いても恋をしたい

 ここ数年、女性たちの恋愛観に変化が起きています。今までは40代を迎えると「もう結婚は難しい」「子どもも産まずに人生を終えるのか」「このまま一生ひとりで過ごすのかもしれない」などという哀しみや不安を訴える人が多かったのですが、そうではなくなってきたのです。

 その原因は、近年、超高齢化社会となり人生100年と言われるようになったことも大いに関係しているのでしょう。女性たちは「人生これから。いつかはいい人に出会えるかもしれない」「もし子どもを自分で産むことができなくても、養子を迎えるなどして子育てを経験してみたい」などと希望を持つようになりました。ただし問題は「どうやってパートナーと出会うか」ということです。

60代女性の官能表現

 フランスの女性作家マルグリット・デュラスは60代の時に38歳年下の男性と知り合い、同棲生活を始めます。二人には体の関係もあり、その様子を『ヤン・アンドレア・シュタイナー』(河出書房新社・刊)でも描いています。そこには愛の国フランスだからこその、逃げも隠れもせず、堂々とした振る舞いがあります。

 女性が自分から相手を誘い、まだ若く見える私の脚を見て、と囁くシーンも出てきます。何歳になっても自分の美しい部分を見出し、プライドを持って生きるさまは羨ましくさえなります。日本人女性は老いに怯え、衰えた自分を見せたがらない傾向があります。まるで老けることが負けだと思っているかのようです。

文章で愛を語らう

疼くひと』(松井久子・著/中央公論新社・刊)は、70代の日本人女性が、15歳年下の男性と恋をする物語です。二人がどこで知り合うかというとSNS。最初はぎこちないメッセージのやりとりだったのが、次第に熱く互いの思いを文章で語り合うようになります。著者の松井久子さん自身も70代女性であるため、お話がなおさらリアルに感じさせられます。

 これは『ヤン・アンドレア・シュタイナー』も同じで、手紙を通してお互いに深く知り合っていくのです。高齢女性は言葉から恋に落ちるものなのかもしれません。文字のやりとりで相手を知ったうえで会う約束をするので、初対面であるにも関わらず、旧知の関係のように感じ、相手に愛おしさを感じることができるのです。

何歳になっても女でいたい

 70代の恋は、まだその年齢を迎えていない女性にとっては、未知の世界。けれど実際に読んでみると、何歳になっても女は女なのだということがわかります。閉経を迎えても、男性への肉欲もあるのです。そして彼に会いたい、抱きしめられたい、彼に見られるかもしれないしどんな下着をつけていこう、などという恋心も変わらずに存在しているし、ベッドシーンも違和感なくドキドキしながら読み耽ることができました。

『疼くひと』のヒロインである耀子の意識の高さにも学ぶところはたくさんあります。女性らしさを大切にしていて、自分自身のケアを怠らないのです。物語には女性器のお手入れシーンも出てきますし、良い食材を丁寧に調理して食べる様子もあります。美しく老いるためには手間隙も必要なのです。

ロマンス詐欺に注意

 物語は美しく、人生の折り返し地点を過ぎた恋愛ならではのせつなさも味わうこともできます。この本を読んで、私もまだまだ恋愛や性愛を愉しむことができると励まされる女性も多いでしょう。もしかしたらSNSで声をかけてきた男性にときめいてしまうかもしれません。

 けれどSNSで知り合った男性にお金を騙し取られる事例も多いのです。相手の巧みな口説きに熱くなってお金を貢いでしまう女性たちのなかには高齢の方もいます。SNSには「あなたの写真に一目惚れしました」などと甘いメッセージを送ってくる男性がいますが、すべてが善人とは限りません。相手の目的はなんなのかきちんと見定める眼を持つことが必要となるでしょう。

内藤みか
記事一覧
作家
著書80冊以上。大学時代に作家デビューし、一貫して年下男性との恋愛小説を書き綴る。ケータイ小説でも話題に。近年は電子媒体を中心に活動。著書に「あなたに抱かれたいだけなのに」など。イケメン評論家として、ホストや出張ホストなどにも詳しい。
XInstagram

ラブ 新着一覧


短所にばかり目が行っちゃう?相手の良さを再確認するために
 別れたパートナーの好きだったところと許せなかったところ、具体的に思い出せますか? もしくは今のパートナーに対して、長所...
七味さや 2021-02-01 06:00 ラブ
居心地が良い彼女になりたい♡ 6つの特徴&目指すポイント
 好きな人と交際に至ったら、「ずっと愛されていたい」と願うもの。そんな「手放したくない」と思わせる彼女になるためには、居...
恋バナ調査隊 2021-02-01 06:00 ラブ
結婚前提の彼の態度が一変…自分の軽率な行動を後悔する女性
 男女の関係では、交際相手や配偶者の態度に悩む人も少なくありません。愛し合っている男女間でも、価値観や物事の判断には個人...
並木まき 2021-01-30 08:02 ラブ
恋人には申し訳ないが…コロナ禍で結婚願望が消えた男の告白
「冷酷と激情のあいだvol.29〜女性編〜」では、長引くコロナ禍で彼氏の気持ちがわからなくなった女性・Fさんの困惑をご紹...
並木まき 2021-02-05 12:22 ラブ
同棲から結婚をする5つのメリット♡気を付けたい注意点
 今、交際中の人の中には、結婚を意識している人もいるでしょう。しかし、「結婚相手は、本当に彼で良いのだろうか?」と、不安...
恋バナ調査隊 2021-01-29 06:00 ラブ
いくつあてはまる? モテる肉食系女子の6つの特徴&注意点
 最近、自分からアプローチをしない「草食系男子」が増えている一方、自分から積極的にアプローチする「肉食系女子」も増えてい...
恋バナ調査隊 2021-01-28 06:00 ラブ
それでも顔で稼ぎたい!コロナ禍にイケメンはここにいる
 コロナ禍は芸能界を目指すイケメンたちにも容赦なく襲いかかっています。出演予定の舞台が感染拡大の影響で次々と延期や中止に...
内藤みか 2021-01-28 06:00 ラブ
もう彼と別れたい…上手な別れ方6選&やってはいけないこと
 大好きな男性と付き合うことになったら、「このまま結婚できたらいいなぁ」と、思う人も多いでしょう。しかし、交際期間が長く...
恋バナ調査隊 2021-01-28 06:00 ラブ
恋愛モチベが上がらない…オトナ女子の恋ゴコロの高め方とは
 恋愛や結婚をしたくないわけじゃないんだけど、そこに至るまでが面倒くさい。恋活サービスもやり取りするのが億劫。気軽に遊ん...
若林杏樹 2021-01-27 06:00 ラブ
チャラい男と付き合うとどうなる? 特徴やあるあるを紹介!
 あなたの周りに、チャラい男はいますか? 一般的に「チャラい男」とは、女慣れしていて遊んでいそうな人のことを言います。も...
恋バナ調査隊 2021-01-27 06:00 ラブ
婚活アプリとお見合いパーティーを並行して痛感したこと
「結婚できるとは思っていなかった」「結婚願望がなかった」。そんな40歳オーバーの男女が結婚に至った経緯とは――。インタビ...
内埜さくら 2021-02-09 14:35 ラブ
大好きだったのに…彼氏に幻滅する6つの瞬間&対処方法
理想の相手と交際できたからといって、すべてが思い通りにいくとは限りません。時には、思いもよらない一面を見て幻滅してしまい...
恋バナ調査隊 2021-01-26 06:00 ラブ
ケンカの絶えない夫婦になる恐れも…「距離感」の相性とは
 人間関係を築く上でとても重要になってくる「距離感」。ここの価値観が合わないと、なかなか苦労することになります。距離感の...
七味さや 2021-01-25 06:00 ラブ
恋愛関係なのに即レスしないのはなぜ?男女の違いを徹底検証
 大好きな彼とやっと両思いになれた時、つい嬉しくて「いつも彼とつながっていたい」と、LINEをたくさん送ってしまうのが女...
恋バナ調査隊 2021-01-25 06:00 ラブ
彼は寂しくないの? 会えない時の不安を解消する5つの方法
「会えない時間が愛を育てる」なんて、恋愛の常套句がありますね。そうはわかっていても、実際彼に会えない時、不安な気持ちに苛...
孔井嘉乃 2021-01-24 06:00 ラブ
天使?小悪魔?“隠れ肉食系女子”の特徴&出会った時の接し方
「肉食系女子」や「草食系女子」という言葉は、誰でも聞いたことがありますよね。しかし最近、「隠れ肉食系女子」という新たなカ...
恋バナ調査隊 2021-01-23 06:00 ラブ