夫の精液で知るSEXの悦び…私も近親相姦する運命なの?#5

蒼井凜花 官能作家・コラムニスト
更新日:2022-12-23 06:00
投稿日:2022-12-23 06:00

「早く孫の顔が見たい」義父の言葉に戦慄

――続けてください。

「世間ではなに不自由ないセレブな家族に見られるでしょうが、時々、ふっと空恐ろしくなるんです。

 実は昨日の夕食時、『早く孫の顔が見たい』と義父がつぶやいたんです。

――楽しみよね。できるなら男の子がいいわ。病院の跡取りにさせたいの……私はA太郎を二十歳の時に産んだのよ。

 E美さんが嬉しそうにワインに口をつけました。

――僕は一人っ子だったから、男の子と女の子が欲しいな。
 

 A太郎さんも笑顔でうなずいています。

 私も笑みこそ浮かべましたが、同時に恐怖感が背筋を這いあがってきたんです。

もし子供が生まれたら

――もし、子供が生まれたら、私は自分の子供とセックスをするの? そして、その結婚相手とも交わるの?

 それを思うと、言いようのない不安に駆られます。

 それでも、愛するA太郎さんとの子供は欲しい……私は今、天国と地獄を行ったり来たりしています。

 時々、E美さんに『お義母様が嫁いできた際も、新婦の儀式を経験したのですか?』と訊きたくなります……。でも、どうしても訊けなくて……何も知らずに、このまま洗脳されてしまうのが、一番幸せなのかもしれません」

しなやかな手指に隠された秘密

――洗脳ですか……。今はおつらいでしょうが、徐々に良い方向に変わっていくといいですね。

「そうですね。もう後戻りはしないと決めたので……。今回、誰にも言えなかった家族の秘密を、じっくり話せる機会をもらえて、心が楽になりました」

――そう言っていただけると、こちらも救われた気持ちになります。

 R子さんは目じりに滲む涙をハンカチで押さえた。

 品のいいフレンチネイルとしなやかな手指が印象的だ。家事を一切することのない手は、しかし、近親相姦の際には大いに淫らな行為を求められるのだろう。

 筆者は少しだけ、息苦しくなった。

「また進展があったり、つらくなったら話を聞いてください。人間、ため込んではいけませんね。人に話すという行為が、どれだけ心を軽くするかがよく分かりましたので……」

 R子さんがほほ笑み、席を立つ。

  ◇  ◇  ◇

 今回の取材が、彼女にとってはセラピーになっていたとしたら、こんなに嬉しいことはない。近親相姦の件はもちろんだが、そう遠くない未来に彼女が子供を持つ日が来たら、彼女はどのような気持ちで我が子を抱くのだろう。

 それを思うと、胸の奥が締めつけられる。

 筆者はR子さんの幸せな未来を願うばかりだ。

(了)

蒼井凜花
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官能作家・コラムニスト
CA、モデル、六本木のクラブママの経歴を持つ異色の官能作家。近著に「CA、モデル、六本木の高級クラブママを経た女流官能作家が教える、いつまでも魅力ある女性の秘密」(WAVE出版)、「女唇の伝言」(講談社文庫)。
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