おひとりさま老後には備えが大切 今から意識すべき2つのこと

東城ゆず ライター・エディター
更新日:2019-06-19 12:49
投稿日:2019-06-19 06:00

安心して年を重ねられないのは辛い

 近ごろのニュースを見ていると、年金の支給も思わしくないようです。超高齢化社会に向かっているというのに、日本の未来が不安で仕方ない人も多いのではないでしょうか。それもそのはず。生きるとなれば資金面や自分の身の回りのことと、実にさまざまな問題が待ち受けています。

 人は誰しも平等に、年を重ねます。孤独死や介護施設の待機など、ニュースを見ると老後の生きづらさを感じますよね。安心して老いていけないのは、とても辛いものです。今回は少しでも老後の不安を無くすべく、元・介護士である筆者が老後について考えておくべきことをご紹介します!

おひとりさまで過ごす老人が急増

 高齢化社会の日本では、“おひとりさま”で過ごす高齢者も増えています。伴侶に先立たれてしまったり、子どもが別居で身寄りが近所にいない人も多いのが現状です。筆者は介護士としての経験がありますが、介護保険の内容や介護事情は年々、変化しています。その概要を全て把握しきることは、高齢者でなくても難しいものです。

 平均寿命は世界でもトップの日本。聞こえはいいものの、「より良い老後にするために」を若い時から考える必要もあります。いつまでも自分が健脚で不自由のない生活をしているとは限りません。平均寿命は延びても、自分らしく過ごせる健康寿命が延びるわけではないからです。高齢者になってから突然襲われた疾病で、障がい者になってしまう可能性は、誰にだって秘めています。

 その時に自分がどうしたいのか、どのように過ごしていきたいのか。それを若い時から考え、その実現に向けた手段について、家族に伝えておくことも大事になります。

老後にどのようなお金が入ってくるかを知る

 40歳になった月から、国民は誰しも介護保険料を納めています。その介護保険料に、ついつい「また保険料が高くなったか」と嘆きたくなる気持ちもわかります。高齢者になった時の自分は想像しにくいですし、誰しもどこか「自分は平気だろう」と思うものです。だからこそ、介護保険が疎ましく思えたりもするかもしれません。

 介護保険は、将来なんらかの事情で介護が必要になった時に、自己負担少なく介護サービスが受けられる積立金のようなもの。本来であれば、多くの介護サービスは自分の資金から用意しなくてはいけないものですが、介護度(介護を必要とするレベル)によって国が補助をしてくれる、ありがたいものです。

介護保険の概要を理解しておくこと

 平均寿命が延びることで「老後の貯蓄も考えなくては」と、多くの人が不安に感じていることでしょう。しかし、介護保険の内容を自分で調べ、少しでも理解していくことで老後のことを前向きに考えられるでしょう。

「こんなことまで?」と思うような補助があったりと、介護保険は介護士から見ても、とてもありがたいシステムだと思います。今から自分の理想とする老後に、どのような補助が受けられるのかを考えることで、貯蓄に対しての焦りや老後の不安は解消されるはず。

 老後の貯蓄も大事ですが、今を生きることも考えなくてはいけません。そのためには、老後にどのようなお金が手元に入ってくるのか、自分の自己負担分をどれくらいかを考慮しておくこと。このようなフローを考えておくことで、今の自分も豊かになるはずです。

介護側の精神的な苦痛を減らす思いやりにも

自分がどんな老後にしたいのか考えておく

 いきなり家族に「どんな老後にしたいですか」と質問されて、その場でスラスラと話すことができる人は多くありません。しかし、筆者は疑問に思います。「誰でも平等に歳を重ねるのに、どうして無関心なのだろう」と。

 たとえば「家族に苦労をかけたくない」ということについてですが、このことを口にする人が多くても、実際にどう家族の負担を減らすかまでは考えている人が少ないのが現状です。家族に負担をかけたくないのであれば、介護施設を利用する。それは、どのような介護施設に入ることを意味し、その際の持ち家はどうするのか。どのようにキャッシュフローを行うのか。

 また、どのようなタイミングで、介護を必要だと感じるのか。全部を介護士に助けてもらいたいのか、少しの手伝いくらいはしてもらいつつ、家族の近くで在宅介護サービスを受け暮らしたいのか。事細かに考える必要はないと思う人も多いかもしれません。しかし、筆者が介護現場で見ていたご家族には、“今となっては聞けない本人の意思”が分からず、困っていた人も少なくありません。

積極的な延命措置を望むか否か

 忘れてはいけないものの一つに、「もしもの時に積極的な延命措置を望むか望まないか」もあります。実際問題、延命措置は経済的にとても負担がかかります。医療として最低限の命を継続させることはできても、その姿は自分らしいものなのか、という点も気になりますよね。自分が介護状態になってしまった時、あるいは“自分の意識がないとき”に家族に決めてもらうのは、家族の精神的な負担が大きすぎるのです。

 このように「家族に苦労をかけたくない」という観点からでも、さまざまな選択肢が出てきます。少しでも今から老後について考え、家族に前もって伝えておくことで、家族も自分も老後が楽になるものです。平均寿命が延びている日本だからこそ、老後の選択肢もたくさんあることを楽しみつつ、前向きに老後の方針を考えておくことで、老後の暮らしに大きな差が出ます。

 若い時に老後のことを考えておくことは、長い年月を備えに利用することができるメリットがあります。理想とするイメージがあれば、逆算して資金の用意や情報選びを余裕をもって行うことができます。そうすることで家族も楽になり、「本当はかわいそうなことをしているのではないか」という“介護側の精神的な苦痛を減らす思いやり”にもなるのです。

早めの準備がコツ! おひとりさま老後に向けて

 おひとりさまで老後を過ごすことについて、筆者はいつも思うことがあります。たしかに、その家には高齢者が一人しか住んでいないかもしれません。しかし、誰にでも一人や二人は親戚や家族がいるものです。どんなに“おひとりさま”になろうと、時には人の手を借りなくてはいけません。

 誰でもやってくる老いに備えるべき必要がある。そのために、自分の意思や備えを若い時にしっかりしておけば、いざその時が訪れても、周囲は慌てることなく前向きに介護をすることができるでしょう。

 自分が「その時になったら考える」といった老後は、委ねられた誰かにとって「人の命」となり、軽視することができないものとなります。自分の命を自分らしく全うする責任や意味を、それぞれが真剣に考え直すべき時代に突入していると思いませんか?

東城ゆず
記事一覧
ライター・エディター
1994年生まれ。11歳の頃からブログを運営。ライターやエディターとして、女性誌メディアや地元新聞のコラム枠まで幅広く活躍中。恋愛やママ友問題、介護士であった経験からリアルな介護問題まで幅広い知見がある。年子兄弟を連れ離婚の経験があり、現在は再婚に至る。

関連キーワード

ライフスタイル 新着一覧


草むらをくんくん…“にゃんたま”君の探し物は何ですか?
 無限に見ていたいパーツNo.1といえば、にゃんたま!  今回は探し物中のにゃんたまにロックオン。  たしか...
苦手な人との向き合い方! 職場の人間関係を円滑にするコツ
 仕事の内容には慣れてきたし、プライベートも楽しくできている。ただ、「職場に苦手な人がいるっ」――。そんな方も多いと思い...
自分で皮下注射も…採卵手術前日までにやるべき3つのこと
 日本は不妊治療の件数は世界一なのに、体外受精で赤ちゃんが産まれる確率は最下位。そんな状況を変えるために、ミレニアル世代...
キリスト教のお盆「ハロウィン」 その由来とカボチャの意味
 ワタクシ、全く上達しないドイツ語の個人レッスンを受けております。上達しない理由は一重にワタクシの不真面目さによるもので...
自然災害に巻き込まれた…子どもとどう向き合ったらいい?
 台風19号の爪あとが各地に深刻な被害をもたらしていますが、近年は相次ぐ自然災害で被災住民が避難生活を余儀なくされるケー...
月吹友香さん<後>41歳専業主婦が小説家を目指して見えたもの
 第18回(2019年度)「女による女のためのR-18文学賞」(※)の大賞受賞作「赤い星々は沈まない」は老女の性を大きな...
今日の議題はにゃに? 夕暮れの猫集会でポロリ“にゃんたま”
 猫の島、日暮れ近くに猫の集会にお邪魔しました。  おのおの一定の距離を保って、茶白、黒白、サビ、三毛、キジ、サバ...
“生活習慣病”も予防して! 介護は認知症だけじゃないんです
 日本は長寿大国です。誰しも安心して生涯を全うできるとしたら、高齢であることはとても素敵なこと。しかし、介護士でもある筆...
月吹友香さん<前> 私がR-18文学賞で高齢者の性を描いた真意
 読書の秋到来。直木賞や芥川賞、日本推理作家協会賞に本屋大賞……国内には数多の文学賞がある中で、「R-18文学賞」(※)...
犬でなく人間だったらと思うと…モラ気質なワンコの実態3選
 モラハラ気質は、人間だけに限ったお話ではないのかもしれません。「うちの犬が人間だったら、モラ男(モラ女)に違いない…」...
子宮全摘だけでもつらいのに…腸閉塞で長さ190㎝の管を挿入
 私は42歳で子宮頸部腺がんステージ1Bを宣告された未婚女性、がんサバイバー2年生です(進級しました!)。がん告知はひと...
お日様パワーでモテにゃんに…ぽかぽか日光浴“にゃんたま”
 きょうのにゃんたまωは、雨上がりの日光浴。  濡れた毛を乾かして、お日様パワーでぽかぽかリラックス♪  気...
魔法の鍋! 自動調理鍋の購入でキッチンはどう変わったか?
 最近話題の自動調理鍋。材料を入れてスイッチを押すだけで、料理ができてしまうという優れもののようです。少しでもラクをした...
癒し系の彼女になって? 恋愛はそういうサービスじゃない!
 あなたには理想の恋人っていますか? 「優しい人がいい♡」「背が高くて色白がいい♡」「お金持ちがいい♡」  好きなタ...
共感されないけど…子どもを欲しいと思わない女の4つの理由
「子どもが欲しいと思わない」――。女性がポツリともらすと、男女問わず「どうして!?」「なんでほしくないの?」と質問責めに...
人はなぜ死者に花を手向けるのか? 古代から続く花のチカラ
 お花屋さんという御商売は、本当にさまざまなお客様のいらっしゃる場所でございます。ワタクシのお店は神奈川でもちょっぴりカ...