浮気編<4>懲らしめたらしゃぶるよりもパジャマで〇〇!

小悪魔ドルチェ寿司 編集者
更新日:2019-07-28 18:13
投稿日:2019-06-28 06:00
 わたしとひろし(非仮名w)の48歳差の激しすぎる恋――男は何歳まで男なのか、81歳との恋愛模様とはいかなるものか。ホットなイットボーイというより、じわじわ低温やけどさせる引退系男子。そんな男を好いて惚れ尽くしたわたしの七転八倒からの七転び八起きな話をしたいと思います。

酒粕女にならないよう奈良漬けに徹して見えたもの

【vol.19】

 クリスマス直前に浮気疑惑で家を飛び出してからの3日間というもの、朝から晩まで、晩から朝までの酒池肉林、痴湧き肉躍る痴女のカーニバル。

「ドルチェ寿司から酒を取ったら、酒粕だね!」

 笑顔で見守る親友の温かさ、こうしてわたしは夜な夜なセルフ奈良漬けの時間を過ごし、人の優しさを知るのです。火傷するまで見守る母の愛情、そんなときこそ野の花の健気な心を知るのです。

 とかなんとかいっていても、愛するひろしからの嘆願系音声入力崩壊LINE(@12月25日の21時)を見た瞬間、胸どころか脳みそどころか、子宮が締めつけられ、締まりはOK、スタンバイ完了状態。いますぐ会いたいと、脊髄反射的に「はっっっ!! 仕事が!!」とヘタな猿芝居を打ち、2万円をカウンターに置いて一目散にタクシーに乗り込みました。

 ブレスケアでお酒の匂いを消し、携帯用のリセッシュ(除菌EX 香りが残らないタイプ)で服にまとう淀んだ空気を一新し、アルガンオイルを髪に撫でつけ、アイラインをすぅーっと。

 ファンデーションは重ね塗りせず、保湿のみ。ティッシュペーパーで顔を覆って、オフしながら気持ちを落ち着けます。どうせ帰ったら「しゃぶれ」とか言ってくるだろうし、そう来たら響18年をラッパ飲みしながら酩酊して、そこらへんの男たちと同じように扱ってやる。

 そして明日の朝、ひろしが目覚めたら、また消えてやる。そんなことを思いながら、気だけは急いていきます。そのためには小汚い姿は決して見せてはなりません。最上級の姿で、わたしの心はもう戻らないということを知らしめてやろうと、出陣気分で脳内法螺貝を吹き鳴らします。

 その間、20分。合鍵でお家に入ると、パジャマ姿のひろしがダイニングテーブルに突っ伏しています。ひろし愛用ミラ・ショーンのTHEおじいちゃんが着るパジャマを着ています。

「ドルチェさん、ドルチェさん、さみしかったよう」

 18の春に上京してからというもの、わたしは男ウケばかりを気にしてお母さんが着せてくれていたようなパジャマらしいパジャマを着たことがありませんでした。パジャマを着ることがひどく間抜けな気がして、だからこそ、寝るときにひろし愛用パジャマの着用を強制されるのがいつもうれし恥ずかしな気分でした。

 ミラ・ショーンのパジャマをふたりで着て並んでいると恥ずかしすぎて、居ても立っても居られない気分になるのです。羞恥心の基準が崩壊していますね。いくらでもパンツとか見ていただけるものなら見ていただくわたしが。

 ともかく、物音に気づいたひろしはふと顔を上げて、わたしをみとめると

「ドルチェさん、ドルチェさん、どこにおったんや。さみしかったよう」

 そういって両手を広げて駆け寄ってきますが、わたしは玄関に立ち尽くし口を真一文字に結んで動かない。でも抱きついてきた瞬間、大好きなひろしの匂いに、ここ3日間で初めて呼吸をしたように深く深く息を吸い込みました。

「お前が飲むものをかたっぱしから飲んでやったわ」

 テーブルを見るとひろしの大嫌いな、そしてわたしの大好きな第3のビールがほとんど飲まれていないまま置いてあります。

しゃぶるよりパジャマでひざまくら

「なんや、このチンドン屋みたいな格好は」

 通常、わたしはひろしの選んだ服しか着ません。Theory luxeにエルメスのスカーフを巻いたらフェラガモのパンプスといったコンサバスタイルじゃないとひろしは認めてくれないのです。

 ある日好きな格好(ミュウミュウのサテンホルターワンピ)を着て会社に行こうとしたら、烈火のごとく怒られ、〈一生わしに会わないか、いま着替えてくるか〉という二択を選ばされたことがあります。これも彼なりの帝王学があるのですが、それについてはもう少し後で……。

 そのときわたしは、背中がパックリ開いたLoungedressのオールインワンパンツを着ていました。もちろん、ひろしが嫌いなクール系セクシースタイルです。

「さっさとパジャマに着替えてきてくれ。話はそれからや」

 ひろしが相当弱っているので、可哀想になって、いくらでもしゃぶってあげる、と思って急いでパジャマを着てリビングに戻ると、ひろしはソファで横になっていました。そっと隣に座ると、

「ひざまくらして」

 いますぐしゃぶれ、上に乗っかれ、腰はもっと激しく動かせ、ケツをもっと上げろ、といつも威勢のいいひろしが初めての「ひざまくらして」。

 考えてみると、いままでは全てひろしの思うがまま、ひろしの言うがまま、命令するままに動いていたわたしが言いなりにならないこの3日間、ひろしはずっとわたしに連絡をしてきていたのです。

 それが服従させたいからなのだと思っていたのですが、ただ純粋にこの温もりを求めていただけなのかもしれないな、と。

 ひろしの温もりを太ももに感じながら、もうなんでもいいや、この人がこうしてほしいなら、ずっとこうしていてあげよう――。初めて温もりに幸せを感じながら、ひろしの愛用パジャマを着て、ひざまくらをしてずっとひろしの頭を撫でながら朝までその状態で、本当に、わたしはこの人を大変愛してしまったな、と覚悟を決めたのです。

 次回(7/5更新予定)に続きます。

小悪魔ドルチェ寿司
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出版社で勤務のかたわら、現場主義のスケベライフを送っている最中に81歳と恋に落ち同棲生活開始。

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