更新日:2023-09-30 06:00
投稿日:2023-09-30 06:00

ラブホの「ご休憩」は性に合わない

 残念ながら、渋谷のスイーツホテルに行く機会は、まだ訪れていない。

 サイトの写真でじっくり選んだところ、私が希望するルームは平日で16,900円、土日だと、なんと19,900円だった。

 取材費と記した領収書をコクハク編集部に送ったところで、バカ言ってんじゃないと突っ返されるだろう。かといって全額自腹で払ったら、原稿のネタにしても、割に合わない。

 宿泊しなければ、3時間で9,900円なのだが、どうもこの「ご休憩」というシステムは性に合わんのだ。

 3時間のつもりで入って1分でも過ぎたら負けだし、3時間のつもりで入って時間を持て余しても負けである。だいたい、何時間で気が済むかなんて、入ってみないとわからないだろう。

 だからラブホテルは、安心安全の「ご宿泊」がいい。

ラブホテルの存在意義

 ラブホテル街で有名な鶯谷に住んでいた頃、景色として目に入っていた看板には、宿泊でも10,000円を超える価格はなかったように思う。

 相場は土地によって違うだろうが、そもそも最安値を血眼で探して入るラブホテルなんて、ちょっと夢がない。ああいうのはワッと盛り上がって、くんずほぐれつ手近なホテルになだれ込むのがいいのだ。

 たとえ備え付けのドライヤーがそよ風並みに弱くても、フロントにかけた電話がチケットぴあ並みに繋がらなくても、まあ最低限やることがやれればそれでいいのだ。そのためのホテルである。

「お叱り票」システムを採用するラブホ

 ところが、とあるラブホテルには「お叱り票」なるものが設置されていて驚いた。丸裸でお叱りを書き殴る姿を思うとだいぶ滑稽だが、それを各部屋に設置することで、ホテル側がサービスのレベルをキープする効果はあるのかもしれない。

 実際、客室は掃除が行き届き、湯船もピカピカ、それこそドライヤーの風量は台風のように力強く、毛や埃が焦げる嫌な匂いもしなかった。

 大変快適だったことを伝えようにも、室内にある精算機で会計が済んでしまうため、スタッフと顔を合わせる機会がない。できれば「お褒め票」も置いて欲しいくらいであった。

新井見枝香
記事一覧
元書店員・エッセイスト・踊り子
1980年、東京都生まれ。書店員として文芸書の魅力を伝えるイベントを積極的に行い、芥川賞・直木賞と同日に発表される、一人選考の「新井賞」は読書家たちの注目の的に。著書に「本屋の新井」、「この世界は思ってたほどうまくいかないみたいだ」、「胃が合うふたり」(千早茜と共著)ほか。23年1月発売の新著「きれいな言葉より素直な叫び」は性の屈託が詰まった一冊。

XInstagram

関連キーワード

ライフスタイル 新着一覧


ここは僕の縄張りにゃん パトロール中“にゃんたま”をパチリ
 忙しいな忙しいな!日課のにゃんたまパトロール。  にゃんたまは、縄張りに自分の匂いを付けて回ります。  こ...
開運花師が解説します ピンクのバラを恋愛お助けアイテムに
 はじめまして。あなたを幸せに導く一番簡単で手軽な開運アイテム「花」を分かりやすく解説させていただきます、ワタクシ、開運...
焦らずに…赤ちゃんがハイハイで得られる3つの効果と注意点
「うちの子どもはハイハイばかりしていて。歩く気を起こさせるのにはどうしたら?」――。チャイルドカウンセラーとしても活動し...
この縄張りは渡さにゃい! 仁義なき“にゃんたま”抗争勃発中
 今回は、にゃんたま同士の決闘シーン。  きょうこそは、この縄張り問題に決着をつけにゃいと!  目を逸らさず...
別居、DV、酒浸り…IT起業家の暗黒面あるある“7つの習慣”
 起業家――。華々しい響きを放ち、西麻布、六本木、恵比寿、銀座など煌びやかな繁華街でシャンパンをたしなみ、有名女優との交...
真夜中に突然の大量出血で119番、緊急搬送され人生初のERへ
 私は42歳で子宮頸部腺がんステージ1Bを宣告された未婚女性、がんサバイバー1年生です。がん告知はひとりで受けました。誰...
ハッシュタグは“いいね”を超える? 承認欲求の先にあるもの
 SNSで昨年あたりから、ハッシュタグの新しい使いかたに脚光が集まりつつあります。ハッシュタグとは冒頭に「#」をつけた言...
こにゃんたま君のパパ「タンク君」のご立派“にゃんたま”
 きょうのにゃんたまは、先日ご紹介した「こにゃんたま君」(奥に写る子猫)のパパです!  その名も「タンク」君! ...
悲劇はもう二度と…園児の外遊びの大切さと保育士さんの努力
 保育園の子どもたちや働く保育士さんにとって、あまりに悲しい出来事が続いています。園児2人が亡くなった大津市の事故のショ...
ゴロンゴロン♪ “にゃんたま”流ストレス解消法でリラックス
 気が付くとストレスで、体が緊張状態になっていませんか?  きょうは、体の力を意識的に抜いてコロコロしてみる、にゃ...
毎朝のお弁当作り 「苦痛→楽しい」に変える4つのコツ!
 手作りのお弁当って子どもの頃はもちろん、大人になっても嬉しいものですよね。でも、作る側はいつも大変!うんざりして、苦痛...
「SNSイタい女」とは呼ばせない オトナ女子のインスタ技3選
 InstagramをはじめとしたSNSは、今や日常生活に欠かせないコミュニケーションツールになりました。少し前までは、...
「え、悪性って…」病院を出たら子宮頸がん患者になっていた
 私は42歳で子宮頸部腺がんステージ1Bを宣告された未婚女性、がんサバイバー1年生です。がん告知はひとりで受けました。誰...
三崎港で“にゃんたま”発見! おすすめマグロ店をご案内?
 神奈川県・三浦半島にある三崎漁港。  全国有数のマグロの水揚量を誇る漁港近くで、にゃんたま発見です。  多...
怠惰な人にこそ効く!「やる気が出ない」を解消する3STEP
 どうしてもやる気が出ない時ってありますよね。脳科学を利用した「やる気を出す方法」がネットに多々転がっているものの、それ...
京都・伏見稲荷大社で発見 神のオーラ感じる白“にゃんたま”
 朱色の鳥居と、白いキツネがシンボルの神社。  京都・伏見稲荷大社で、白いにゃんたまωに出逢いました。  鳥...