がん→子宮全摘まで“カウントダウン1カ月”の記録<仕事編>

コクリコ 編集者
更新日:2019-10-01 06:46
投稿日:2019-07-09 06:00
 私は42歳で子宮頸部腺がんステージ1Bを宣告された未婚女性、がんサバイバー1年生です。がん告知はひとりで受けました。誰にも頼れず、心の内側にずっと不安を抱えながらがんと闘うのはとてもつらいこと。なぜ私が……と思う気持ちと向き合って、そして不確かな情報に惑わされないように、私の体験がお役に立てれば幸いです。

仕事の引き継ぎを頑張る!

仕事はアイデンティティ(写真:iStock)
仕事はアイデンティティ (写真:iStock)

【Note.10】

 がんによる子宮全摘という大きな手術を1カ月後に控えていた私。この時期は感情の浮き沈みが非常に激しく、異常に元気だったり、攻撃的だったり、泣き虫だったり……。ただ、不思議なことに仕事はしっかりやっていました。

 友人や先輩にがんになったことを話すと「もうそんなに頑張らなくていいんじゃない?」と言われることが多かったです。

 主治医のT先生も「がんになってパニックを起こして、仕事を途中で投げ出してしまう人が多い」とおっしゃっていました。一方で「そうやって投げ出してしまったことで、治ったときにうまく職場に戻れない。戻りにくくなる人がいるよ」とも。

 がんになったことで私は私のキャリアを失いたくない。なぜなら、独身の私にとって仕事はアイデンティティであり、仕事の成功は親を喜ばせてあげられる唯一のものだと思っていたからです。大げさだけど。

 仕事に没頭しているときはがんのことをちょっとだけ忘れられたということもあり、投げ出すことはありませんでした。

 休むまでにとにかく自分にできることをしていこうと、先まわって資料をそろえたり、打ち合わせをしたり。もともと、私は「本の編集」という自分の仕事が好きなんです。がんになって、仕事を休まなければならないことがとても悲しくて、涙が出るほど悔しかった。ちょうどその時期に私が手掛けていた本がとても売れていたのでなおさらです。

 これまで頑張ってきた仕事、そして大好きな著者さんを先輩に引き継ぐ際は「私の大事な著者さんに失礼なことをしたら絶対に許さない」、会議中にも「私は仕事を休むのでこの本から手を引かないといけないけど、どうかこの著者のためにみなさんに本を売って欲しい」と涙ながらに、割と強めに訴え、みなさんには申し訳ないことをしました。

 事情を知らない方々は「なんでコクリコはあんなに大げさなんだろう?」と疑問に思ったかもしれませんが、がんだったからなんです。死んじゃうかもって思ってたからなんです。大好きな著者さんとの仕事を、信用できるかわからない人に引き継ぐのがいやだったからなんです。

 私は、同じ部署の上司、総務、親しい同僚には、がんによって仕事を休むことを伝えていました。幸いにも私は勤続20年の正社員で、かつ私の会社は社員に対してあたたかく、働きやすい環境なので、それによって私が不利益を被ることはなかったです。

 ただ、がんという病気、とくに子宮頸がんには誤った知識からの偏見もあると思いますし(「セックスいっぱいしてたから」と言われる人もいたそうです)、職場に伝えることで、重要なポストから外されたり、手当てがなくなったり、辞職に追い込まれたりした人の話も見聞きしました。

 私はそういう偏見と闘いたい気持ちもあったので、自分と関わる人には隠さずに言っていましたが、どこまで誰に、どこまで具体的に明かすかは、がん患者にとって悩ましい問題だと思っています。

 たしかに、がんだと伝えた途端に泣きだしてしまった先輩、後輩もいました。先輩は自分より若い私が子宮を全摘するという気持ちを慮ってくださり、また後輩は「コクリコ先輩が死んじゃう!」って思ってしまったそうなのですが、がんをいう言葉の重みは自分だけでなく、周りに与える影響も強いので、伝え方は慎重にすべきなのだなとあとで気づきました。

Facebookでお知らせした3つの理由

つながる(写真:iStock)
つながる (写真:iStock)

 Facebookは友人のほか仕事でお付き合いのある方たちともつながっていました。ですので、がんになったために仕事を休むこと、みなさんにもしっかりがんの検査をしてほしいと投稿しました。

 なぜ多くの人に公開したのか。理由は3つあります。

 1つ目は自分がどのくらいの期間仕事を休むかが決まっていなかったので、迷惑をかけないため。その間、仕事の問い合わせなどに対応できない可能性があったからです。

 2つ目は術後の追加治療(抗がん剤、放射線治)の有無が不明だったので、どのくらい自分の見た目が変わるかが分からなかったからです。復帰したときにびっくりされないよう、予防線を張りたかったのです。

 3つ目はみんなにもがんの怖さを知って、検査を怠らずにいて欲しかったからです。FBで自分の状況を知らせて、とてもよかったと思っています。

・自分の情報を開示することで、逆に欲しかった医療情報が入ってきたこと
・この投稿をきっかけに検査に行ってくれた方が何人もいたこと
・同じ病気で闘っている方の存在を知ったこと

 告知することによって、私が知らなかっただけで、同じようにがんに罹患している方が数名いました。その方が病気を乗り越えたお話にとても勇気づけられましたし、これまでその方が患っていたことを知らずに申し訳ないという気持ちにもなりました。

私の周りにはフリーランスでお仕事をされている方も多く、この投稿をきっかけに検診に行ったという連絡をいただけ、とても嬉しかったです。また、復帰を待っていると言ってくださった方がたくさんいらして、とても励みになりました。

「身体の不調はすべてがんのせいなんじゃ?」と思っちゃう期

もしかして…(写真:iStock)
もしかして… (写真:iStock)

 がんで怖いのは転移。いろいろな記事を読んでそれが分かってきたので、身体に痛い箇所があると「この腰痛ってもしかして転移?」「この胃痛は……」「おっぱいにぐりぐりがある!!! これって乳がん???」と、すべてががんのように思え、毎日不安を募らせていました。

主治医のT先生に「どこか気になるところはないですか?」と聞かれ、不安げに「腰が痛くて……」と伝える私。

「それ、がんだと思ってる?」
「はい」
「そうか……。それはね、老化っていいます」

 老化――――――!

 T先生は、「がんを告知された人みんなに“なにもかもをがんと思っちゃう時期”が訪れるけど、病院がちゃんと調べるから大丈夫だよ」と教えてくれました。

 老化もでしょうが、腰痛は長時間のデスクワークのため。これを書いている今も肩と腰が痛くて「骨転移!?」「膵臓???」と不安なのですが、これはただのコリでしょうか……。術後もずっと不安がつきないものです。

 会社の総務に手続きをしたり、保険会社に連絡したり、仕事と飲み会の間に術後に備えてピラティスに通ったり、入院準備もして……。大忙しで手術までの1カ月弱を過ごしていました。

 がんになると本当に忙しい。

 次回(7/16公開予定)は、私の恋愛について書いてみたいと思います。

コクリコ
記事一覧
編集者
実用書の編集者(社畜)。アラフォー未婚のがんサバイバー2年生(進級しました!)。2018年、子宮頸がんにて広汎子宮全摘出術を受ける。現在ホルモン補充療法をしながら経過観察中。SNSをパトロールするのが趣味。“Twitter探偵”とも呼ばれる。でも幸せになりたい。

関連キーワード

ライフスタイル 新着一覧


工場での単純作業は悪くないが…恋愛経験ゼロの女に起きた“タグ付け事件”
 西荻窪の実家で母親の信美と2人で暮らし、工場でパート勤務をしているかおり。彼女は今の生活に特別な不満もなく、趣味のカフ...
私は子供部屋おばさん?彼氏ナシ・非正規でもシフォンケーキで満ちる日常
 工場内に終業のチャイムが鳴った。  機械の停止音とともに「お疲れさまでした」が飛び交う。  同じロゴの入っ...
蛙化現象わかったフリしてない?恋愛中でもどこか冷静な若者のリスク管理
 コミックや書籍など数々の表紙デザインを手がけてきた元・装丁デザイナーの山口明さん(63)。多忙な現役時代を経て、56歳...
うんざりするけども!目上の人の苦労話は“秒”で遮断するのはもったいない
「今の人は恵まれてる、昔はさ~」から始まる目上の人の苦労話、みなさんもうんざりするほど聞いてますよね。  その苦労話で...
台湾最高!くまのプーさん気分も味わえる「40女激オシ台湾産ビール」3種
 仕事の後のビールは、全てを忘れさせてくれる大切な存在。そんな1日の終わりに飲む1杯にはこだわりたいですよね。  そこ...
2024-03-07 18:25 ライフスタイル
戦うべき相手は過去の自分 時には昇ってきた階段を振り返る
 時には昇ってきた階段を振り返る。ずいぶんと上がった、と誇りに思うこともあるし、まだこんなところか…と凹むことも。 ...
親を嫌いになってもええやん? 40女が手放せた“無理と我慢”
 早いものでもう2月。新年をきっかけに、今年こそは! と決意を新たにした方も多いのではないでしょうか。  筆者もそのう...
コミュ力ゼロ、ママ友関係が苦痛でしかない…テッパン切り口&対処法
 子育てをはじめるともれなくついてくるのが、たくさんの人間関係。保育園や学校、ママ友との交流の機会が多いので、コミュ力の...
愛しいおんにゃの子に猛アピール♡“たまたま”君の恋の行方は
「にゃんたま」とは、猫の陰嚢のこと。神の作った最高傑作! 去勢前のもふもふ・カワイイ・ちょっとはずかしな“たまたま”を見...
悔やまれる添い乳よ…子育てが落ち着いた40代ママが語る育児後悔エピ
 子育て期間中は、何が正解なのかわからないまま日々育児と向き合わなくてはなりません。しかも、子供によって成長の速さも性格...
世界的にフラワーバレンタインが来てる!愛の告白より感謝を伝える日に
 立春(2月4日)を迎え、暦の上では春。ですが、この記事を書いている最中にもテレビ画面には「本日関東地方は雪」ニュースが...
入籍お知らせで赤っ恥!させていただきますはダメ、巷でよく聞く変な敬語
 日本語って本当に難しいですよね! 中でも、日本人ですら間違えてしまうのが、敬語です。    案外、正解を知っている...
飛び立つのは怖いけど…いくつになっても思い切りって大事
 北海道で暮らす、まん丸で真っ白な小さな鳥「シマエナガちゃん」。動物写真家の小原玲さんが撮影した可愛くて凛々しいシマエナ...
“万年毛玉ジャージ”のママ友ん家がレベチ!良くも悪くもドン引きしたエピ
 人は見かけでは判断できません。特に、相手の本当の部分が垣間見えるのが「家の中」です。  いつも綺麗な人なのに家がすご...
朝寝坊にイチャイチャバレ…夫の実家に帰省した時の“珍”失敗談4つ
 結婚すると、長期休みや年末年始に夫の実家に帰省する人が多いですよね。そして、夫の実家への帰省中に、夫の家族から引かれる...
発達障害児の長男 児童精神科で勧められた「プレイセラピー」を受けたら
 ステップファミリー6年目になる占い師ライターtumugiです。私は10代でデキ婚→子ども2人連れて離婚→シングルマザー...