そんなえりのボスのもとにはウワサを聞きつけ、今日も悩みを抱えた女性が、ふらりと立ち寄ったようですよ。
1. 自己肯定感が低くて毎日がつらい…
きょうは、美遥さん(31歳女性/仮名)からのご相談です。
「私、ついつい自分を責めてしまうんです。
たとえば、仕事や家事でささいなミスをすると、『この程度のこともできないなんて、自分ってダメだなぁ』とか『私のせいで、まわりに迷惑をかけちゃった…』とか、そういう気持ちで頭がいっぱいになってしまって」
美遥さんは、暗い顔をしてうつむいてしまいました。
えりのボスは優しい表情で、美遥さんの話に耳を傾けています。
「すぐに自分を責めてしまうから、毎日がつらくて。疲れやストレスがたまっているんだなぁ…という自覚はありますが、どうしたらいいかわかりません」
「美遥さんは、セルフコンパッションを高めるワークを始めてみるのがいいかもしれないわね」
「セルフコンパッション…なんですか、それ?」
「自分自身を思いやることを、セルフコンパッションというの。
セルフコンパッションを高めるとありのままの自分を受け入れられるようになって、ポジティブなメンタルを手に入れることができるのよ。自己肯定感も高まっていくわ」
えりのボスの話を聞いて、美遥さんは目を輝かせています。
「その方法、くわしく教えてください、えりのさん!」
これは放っておけません!
2. 自己肯定感とセルフコンパッションとは?
「まず、自己肯定感とセルフコンパッションについてお話するわね」
「よろしくお願いします」
「自己肯定感とは、『ありのままの自分を肯定する感覚』のことよ。他人と比べず、今の自分をそのまま認めてあげることで自己肯定感が芽生えるの」
美遥さんは真剣な表情で聞き入っています。
「一方、セルフコンパッションとは『自分への(Self)思いやり(Compassion)』を意味するの。自分自身を優しくねぎらい、自分の強さも弱さもありのままに受け入れてあげることを、セルフコンパッションというのよ」
セルフコンパッションを高めるトレーニングをくり返すと、ネガティブ思考に振り回されない健やかな心を育むことができます。ストレスを感じにくくなり、自己肯定感の向上へとつながるのです。
「それじゃあ、次は具体的なトレーニング方法を紹介していきましょうか」
3. 自己肯定感を高めるセルフコンパッションの方法5つ
自己肯定感アップにつながる、セルフコンパッションのトレーニング方法を5つ、紹介します。
いずれも簡単に試せるものですが、1度きりのチャレンジでは効果を実感しづらく、継続的に続けていくことが重要です。
すきま時間を活用したり、朝や寝る前のルーティンにしたりして、意識的にくり返しましょう。
3-1. 自分の現状を認める
セルフコンパッションの基本は、あるがままの自分を受け入れること。「こうあるべき」という固定観念は手放して、今現在の自分をそのまま認めることが大切です。
過去のミスや自分自身の「好きではないところ」なども善悪で評価せず、ただあるがままの状態を受け入れていきましょう。
そうすることで、ネガティブな感情に支配されにくくなります。
3-2. 自分に優しい言葉をかける
自分自身に優しい言葉をかけて、慈しんであげましょう。
うまくいかないときには「あのとき、もっとうまくやれていたら…」などと自分を責めてしまいがちですが、温かい言葉を意識的に自分自身にかけてあげると冷静にトラブルに対処できるようになります。
「ありのままで大丈夫」「失敗なんて、誰でもするよ」など、自分に合った言葉を紙に書いて、こまめに見返すのもおすすめです。
3-3. 不安や悩みをありのままに書き出す
セルフコンパッションを強化するテクニックのひとつとして、思い浮かんだ不安や悩みを包み隠さず紙に書き出す「ジャーナリング」という手法があります。
ネガティブな気持ちもありのままに綴っていくと、自分が今なにに苦しんでいるのか客観的に理解できるようになり、冷静に行動できるようになるのです。
3-4. 小さな成功をしっかり認めて、日記に残す
自己肯定感を高めるには、小さな成功体験を積み重ねていくことが大切です。
「自分から挨拶できた」「部屋をきれいにした」といった、ささやかなことでいいので、自分自身をほめてあげましょう。
成功体験やセルフコンパッションを高めるために意識したことなどを日記に書き残しておくと、あとで読み返したときに自分の成長を実感できますよ。
3-5. 失敗するのは自分だけではないと認める
セルフコンパッションの重要な要素として、「他人との共通の人間性」というものがあります。これは、「失敗したりつらくなったりするのは、自分だけでなく他人も同様だ」という考え方です。
共通の人間性を見出せるようになると孤立感がやわらぎ、問題を自分ひとりで抱え込まなくなるので心に余裕が生まれます。
4. セルフコンパッション術を身につけて、自己肯定感を高めていこう
美遥さんは、晴れやかな笑顔でえりのボスにお礼を言いました。
「えりのさん、今日はありがとうございました。教えてもらったセルフコンパッション術を、今日からさっそく実践したいと思います」
「お役に立てて嬉しいわ。自分自身への思いやりを忘れずに、トレーニングを続けてみてね。自己肯定感を高めるには、小さな積み重ねが大切よ」
「はい。まさに『継続は力なり』ですね」
「ええ。それに、気分の落ち込みが強くて日常生活に支障が出るような場合には、無理せずメンタルクリニックに相談することも視野にいれてね。
自分の心身の不調に耳を傾け、つらいときにはきちんとケアしてあげること。これもまた、自分を思いやる行動のひとつと言えるわ」
「わかりました」
「また気になることがあったら、いつでもサロンにいらっしゃい」
深々とお辞儀してからサロンを去っていく美遥さんを、えりのボスは優しく送り出しました。
★サロン「コクハク」のオーナー えりの
顔と口調は若いものの、年齢不詳。タヌキか妖怪の噂も囁かれる謎めいた主人だが、ココロやカラダ、健康に関する知識はズバ抜けており、何気にハイスペック。ムスメ時代に苦労してるため、自分より“後輩”の女にはしあわせになって欲しいと願っている。愛称は、えりのボス。
(漫画/腹肉ツヤ子)
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<この記事の監修者>
あんしん漢方薬剤師 中田 早苗(なかだ・さなえ)
デトックス体質改善・腸活・膣ケアサポート薬剤師・認定運動支援薬剤師。病院薬剤師を経て漢方薬局にて従事。症状を根本改善するための漢方の啓発やアドバイスを行う。健康・美容情報を発信するMedical Health -メディヘルス-youtubeチャンネルでは、お薬最適化薬剤師として「無駄な服薬はお財布と体の敵!」をモットーに薬の最適な選び方を解説する動画を公開中。症状・体質に合ったパーソナルな漢方をスマホ一つで相談、症状緩和と根本改善を目指すオンラインAI漢方「あんしん漢方」でも薬剤師としてサポートを行う。
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