嘘でしょ…娘の友達が「キラキラネーム」? 玉の輿セレブの大きな誤算

ミドリマチ 作家・ライター
更新日:2024-08-10 06:00
投稿日:2024-08-10 06:00

名門一家にふさわしい娘に育てる決意

 武雄の実家は代々医師家系。兄弟ともども小学校から私立の大学付属校に通っていたそう。現在は軽井沢に隠居している彼の両親も白金の生まれで、有名私立に小学校から通っていたのだという。

 だが、義母の昭子は葵が生まれた時、こう言った。

「無理に私の家に合わせなくとも、由香さんのやりかたで葵さんをのびのび育ててあげてくださいな」

 敬虔なカトリック教徒で穏やかな昭子の優しい提案だ。しかし、由香は自らの意志でキッパリと答えた。

「いえ、この家に生まれた子ですから、相応しい女性に育てます」

 自分が望んでいた選択肢を与えられなかった由香。葵にはその惨めさを感じさせたくなかった。そして、家庭環境が同じレベルの学友たちと清い未来に繋がる人間関係を形成していってほしかった。

 もちろん、子供が与えた道を拒めば由香は応じるつもりでいる。しかし乳幼児期の素直な子供は自分の意志などないに等しい。しかも葵は由香の言うことをよく聞く、本当にいい子なのだ。

 幸い、家から歩いて行ける距離に伝統ある名門お嬢様学校があった。義母もその学園の卒業生である。葵が0歳児の頃から幼児教室にともに通い、数十倍もの難関をくぐって、その学校の付属幼稚園にご縁を頂いた。

 由香はやっと、幼い頃から憧れていた高貴で優雅な環境を手に入れられた。

 今は、誇らしさで胸がいっぱいの日々を謳歌している。

娘の友達がキラキラネーム?

 そんなある日のこと、学校から帰って来た葵から由香は無邪気な提案を受けた。

「ねぇ日曜日、愛舞(らぶ)さんをお家に呼んでいいかな」

「ら…らぶさん?」

「山田愛舞さん。かわいい名前だよね」

 目を輝かす葵に由香は言葉を濁す。

 ――この学園に通う子でも、そんな名前の子がいるのね。

 娘に仲の良い友人ができたのはいいが、“愛舞”という見慣れぬ名前に、僅かな警戒心を感じてしまったのは事実だ。

 俗にいうキラキラネームというものではないか。

 つまりは、家の名ではなく、下の方で自己主張しようとする部類の両親である。付属幼稚園に通っている時には聞いたことがない名前のため、小学校受験で入って来た子だと直感した。

「いいけど…」

「やったあ。気も合うし、面白い女の子なんだ」

 嬉しそうな笑顔に由香の心もほころぶ。危機感はあるものの、この学園とご縁がある一定の層であることは唯一の安心材料である。

縁のない「赤羽」に不安…

 そこでふと、名案が思い浮かぶ。

「なら、愛舞さんのお母さまも一緒に我が家にお誘いするのはどうかしら。その方はどちらに住んでいらっしゃるの?」

「うんと、赤羽だったかな」

「え…」

 提案してみたものの、その地名に絶句してしまった。

 赤羽がどうというわけではない。地下鉄で一本だから、通学圏内だ。しかし、付属幼稚園上がりのご家庭では聞き慣れない地名だった。

 入学式や送迎などで山田愛舞の母とは何度か顔を合わせたことがある。ただ、いつも挨拶もそこそこに立ち去ってしまう。仲良くしている父兄はいなさそうだ。

 ――もしかして、一般企業にお勤めの共働きの方かしら。価値観の違う親御さんだったら…? 

 不安と疑念は、考えるたびに募っていった。


#2へつづく:キラキラネームの子供が愛する娘に近づいて…】

ミドリマチ
記事一覧
作家・ライター
静岡県生まれ。大手損害保険会社勤務を経て作家業に転身。女子SPA!、文春オンライン、東京カレンダーwebなどに小説や記事を寄稿する。
好きな作家は林真理子、西村賢太、花村萬月など。休日は中央線沿線を徘徊している。

関連キーワード

ライフスタイル 新着一覧


「世界一いい島だにゃ~」秋の夕暮れを満喫する“にゃんたま”
 にゃんたま君は、日が沈むこの時間が大好き。  地面はお日様のぬくもりが残っていてほんわか温かくて、海を渡って来る...
SNSで好かれる投稿のポイント&嫌われないための注意点は?
 SNSが当たり前の時代。今では、ほとんどの人がSNSを活用しているでしょう。しかし、SNSは便利な半面、トラブルに巻き...
女性の魅力UP! 外見マナー&コミュニケーションマナー9選♪
 好感度の高い女性というと、「美人でスタイルが良い女性」というイメージを持っている人が多いでしょう。しかし、どんなに見た...
存在自体が芸術…神の最高傑作“にゃんたま”撮影に試行錯誤
 きょうは、職業・猫フェチカメラマンのつぶやき。  神が作った最高傑作と云われる「にゃんたま」を、どのように記録し...
恋は色あせない!情熱的な花「ケイトウ」の今風な活用方法
 ただいま世の中、「ドライフラワー流行り」でございます。  以前は、お花屋さんの片隅にちょっぴり「スキマ商売」感覚...
地雷女!トラブルが多発する“アブない女友達”の見極め方3つ
 “女の友情はハムより薄い”という言葉があるように、女性同士の交友関係はとても複雑で、難しいものですよね。昨日まで「私た...
「見えない何か」にクルリ…“にゃんたまの”クールな眼差し
 きょうも、にゃんたまωにロックオン♪  キリっとしたクールな眼差しに、栗饅頭のような癒しのフォルムω……。 ...
女友達にお金を貸したら整形手術を…人間関係を断捨離する時
 男女問題研究家の山崎世美子(せみこ)です。学生時代から付き合いがある相手なのに、なんとなく最近話が合わない。一緒にいる...
秋以降どうなる? コロナ第3波に備える副業女子のエピソード
 この夏は新型コロナ禍の外出自粛で溜まったストレスの羽を伸ばす人たちが散見されました。しかし、秋、冬とインフルエンザの流...
あなたは見つけられる? 腹ペコ“にゃんたま”はどーこだ?
 きょうは、にゃんたまを探せ!  写真の中に、にゃんたまωをスグに見つけたアナタはもう立派なニャンタマニアです。 ...
敬老の日にも…“頭が良くなる”不撓不屈の花「カランコエ」
 猫店長「さぶ」率いる我が花屋に、某有名私立男子校の先生が本日もご来店でございます。  この先生、その筋では大変に...
おうちで楽しくストレス発散!おすすめ気分転換アイデア4つ
 外出しなくても、おうちの中で気分転換する方法があるととっても便利です。自分に合ったストレス発散方法があると、気分の切り...
生まれつき繊細でも…無理なく続けられる“気疲れしない習慣”
「機嫌悪い人がいると気になってしまう」「LINEを送ったら既読スルー、怒らせちゃったかな」「もはや生きているだけで疲れる...
来年も猫と一緒に「2021にゃんたまカレンダー」で開運にゃ!
 にゃんたまωカレンダー2020を飾って下さっている方々から、多くのラッキー報告を頂きました。ありがとうございます!!!...
手術や入院だけじゃない!傷病手当金は働く人のピンチを救う
 毎月の給与明細を見ると、ゴッソリ引かれている健康保険料。正社員の人はもちろん、夫の扶養を外れたり、パート勤務にも社会保...
「これはいけないこと」注意しているのに笑う子どもの心理
 子どもって、これをやったらダメだっていうことをわかっていても、あえてイタズラして親の気を引こうとすることありますよね。...