79年の紅白で「カサブランカ・ダンディ」を歌った数時間後、80年元旦に「TOKIO」を歌った

更新日:2024-10-04 10:53
投稿日:2024-10-03 17:00

【沢田研二の音楽1980-1985】#2

 シングル「TOKIO」1980年1月1日発売①

  ◇  ◇  ◇

 この曲を象徴するのが、1980年の元日発売という事実である。

 しかし、単に元日に発売されたことよりも、年が明けてすぐ、この上なくセンセーショナルな形で世に示されたことの方がより重要だ、と私は考える。

「ゆく年くる年」──といっても、今でも続くNHKのそれではなく、かつての年越しに、全民放で放送された方の。

 厳密にいえば「ゆく年くる年」の延長戦のような形で、同じく全民放で放送された「'80年 未来をこの手に」の中で、品川のスケートリンクから、あの大きなパラシュートを背負った沢田研二が「TOKIO」を歌ったのである。

 ついさっき終わったNHK紅白歌合戦で、沢田研二は白組の14番目として、いかにも阿久悠、いかにも70年代沢田研二な「カサブランカ・ダンディ」を歌った。

 この年の紅白の白組は、ツイストやサザンオールスターズ、さだまさし、ゴダイゴと、当時の言葉でいうところの「ニューミュージック勢」が大挙出演して話題を呼んでいた。対して沢田研二は、ニューミュージック勢に対する「歌謡曲勢」のひとりという感じに見えたものだ。

 そもそも79年の音楽シーンは、沢田研二、山口百恵、ピンク・レディーらの歌謡曲勢を、新進気鋭のニューミュージック勢が、ギリギリまで追い詰めた格好のものだったのだ(詳しくは拙著「1979年の歌謡曲」=彩流社=参照)。

 しかし、歌謡曲勢として「カサブランカ・ダンディ」を歌い上げた数時間後、沢田研二は全民放の画面の中で、パラシュートを背負ってTOKIO(東京)の時空へと飛んだのだ。

 その姿を見て、阿久悠とはまったく違う、「TOKIO」の荒唐無稽な歌詞を書いた糸井重里は、こう思ったという--「俺、運命は変わるかもしれない」と(ほぼ日刊イトイ新聞)。その予感は当たり、この後すぐ、糸井は時代の寵児になるのだが。

 その日、80年が、80年代がやってきた。田原俊彦、松田聖子、イエロー・マジック・オーケストラ(YMO)、漫才ブーム……。くすんでいた70年代とはまったく違う、パステルカラーでキラキラと輝くニューウエーブな1年が。

 しかし、「TOKIO」が真にセンセーショナルだったのは、その登場の仕方や、ファッションより、むしろサウンドそのものだった。

▽スージー鈴木(音楽評論家) 1966年、大阪府東大阪市生まれ。早大政治経済学部卒業後、博報堂に入社。在職中から音楽評論家として活動し、10冊超の著作を発表。2021年、55歳になったのを機に同社を早期退職。主な著書に「中森明菜の音楽1982-1991」「〈きゅんメロ〉の法則」「サブカルサラリーマンになろう」など。半自伝的小説「弱い者らが夕暮れて、さらに弱い者たたきよる」も話題に。ラジオDJとしても活躍中。

エンタメ 新着一覧


城田優「だんまり戦法」に見え隠れする“面倒ご免”の大人事情
 俳優・城田優(36)が出演する「キンキーブーツ」のビジュアルが24日、公開された。  今年10月に上演されるブロ...
櫻坂46渡邉理佐 卒業ライブで欅坂46の封印曲を解禁できた訳
 渡邉理佐(23)が今月21日、22日に東京・国立代々木競技場第1体育館で行われた自身の「卒業コンサート」をもって、櫻坂...
こじらぶ 2022-05-26 06:00 エンタメ
眞栄田郷敦の強みは誠実!マッケンより普通にゴードンが好き
「NHKさん、ありがとう!」  思わず叫んでしまいました。  16日スタートの夜ドラ「カナカナ」(NHK総合...
広末涼子“今でも需要”は「脇役でもコツコツ出演」の賜物
 女優の広末涼子(41)が、5月いっぱいで自身のインスタグラムのアカウント閉鎖を発表した。4月14日に初のエッセー本「ヒ...
神尾楓珠“ワイプ芸”を刮目せよ!「3年A組」出世頭の演技力は
 神尾楓珠が凄いことになっています。水曜22時「ナンバMG5」(フジテレビ系)、金曜23時30分「青野くんに触りたいから...
平手&長濱“欅坂46両雄”ドラマ界本格復帰記念にプレイバック
 元欅坂46の平手友梨奈(20)が今月10日、22年7月期放送のドラマ「六本木クラス」(テレビ朝日系)に出演することが番...
こじらぶ 2022-05-14 06:00 エンタメ
吉高由里子主演「光る君へ」NHK&民放MIX“イケメン再演”の目
 NHKは11日、2024年に放送予定の大河ドラマについて、タイトルは「光る君へ」で、主人公の紫式部を吉高由里子(33)...
神木隆之介は元子役クズ説を覆す男、女性の噂も皆無だけど…
 元人気子役というと悪い印象しかないのは、間違いなく坂上忍と杉田かおるのせいでしょう。  子どもの頃あんなに可愛か...
松下洸平“低視聴率”でも高評価 ゴチで得た天然ポンコツの座
 5月1日に俳優業デビューから12年を迎えた松下洸平(35)がノリに乗っており、ツイッターでは「#松下洸平12周年」のお...
ディーン様は浮世離れしていてナンボ!お宝シーンよもう一度
「あいわらずお美しいこと!」  そう言わずにはいられないのがディーン・フジオカ(41)、通称おディーン様です。4月...
浅香航大は“理想の元彼NO.1”!本人自覚ゼロでも色気だだ漏れ
 昨今、やたらと考察ドラマが多いと思いませんか。前クールの「真犯人フラグ」とか「ミステリと言う勿れ」とか「愛しい嘘~優し...
松潤・キムタク・ニノ…主演作の明暗、私生活切売りがアダ?
「ドクターX~外科医・大門未知子~」など数々の人気作を生み出してきたテレビ朝日の木曜ドラマが2クール連続で苦戦している。...
こじらぶ 2022-06-01 12:36 エンタメ
SixTONES松村が傷物に…「恋マジ」時代錯誤設定にキモイの声
 今月18日にスタートしたフジテレビ系ドラマ「恋なんて、本気でやってどうするの?」(月曜午後10時)が、女性から酷評され...
山P「正直不動産」番宣拒否報道もあったがいいやつじゃん!
「正直不動産」(NHK総合)の山下智久(37)を見ていて、山Pもずいぶん丸くなったなあと思う。  山P演じる主人公...
「芸能人二世」サバイバル! 生き残るための“最大武器”は?
 この春も芸能界は二世が注目を集めるようでーー。タレントの中山秀征(54)の長男・中山翔貴(23)は4月8日スタートのテ...
城田優「カムカム」で甘美な声も…驕る“イケメン”久しからず
 日本人と外国人との間に生まれた子どもを「ハーフ」って言いますが、「ハーフ」は半分という意味だから「ダブル」や「ミックス...