更新日:2021-08-17 23:28
投稿日:2019-08-31 06:00
いとこ関係がゆえの切ない裏事情
若い時からピンク映画や日活ロマンポルノの脚本を手がけ、本作でメガホンを執った荒井晴彦監督はこのシーンの原作を読み、「男はそういう数々の誤解と間違いを犯してきているんだな、と冷や汗が出ました」と、コメントしています。さすが、性愛を絡めた男女の機微を描いてきた監督。女ゴコロを熟知しているのでしょう。
本作はエロスがピックアップされがちですが、切ない裏事情も描かれています。実は2人は、子どもの頃から兄妹のように育ったいとこ関係。日本の法律では三親等以内(親・祖父母・親の兄弟姉妹・その子ども)との結婚は禁止されていて、いとこ同士は結婚できます。
ですが、染色体が近いため、生まれてくる子どものことを考慮すると推奨されない風潮があるようです。
作品では描かれていませんが、賢治と直子はお互いにそれを察しているのでしょう。賢治が、「中で出していい?」と行為中に求めるシーンは、濡れ場であるはずなのに切なくなり、胸を締めつけられるのです。
しかも、ラスト近辺では日本の終わり的な状況を迎えます。賢治と直子が危機に直面した姿を見て、「自分が最期を迎える時、誰と一緒にいたいのか」と考えさせられるかもしれません。甘やかな性描写を堪能できるだけではなく、日常のささやかな幸せのありがたさを改めてかみしめつつ、“自身の最期”についても熟考させられる作品です。
「火口のふたり」は、8月23日より新宿武蔵野館ほか全国で公開中。R18+指定。配給:ファントム・フィルム
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