コロナ禍の現在、人生をも大きく変えてしまう「口腔ケアの大切さ」に筆者が迫ってみました。今回、取材にご協力くださったのは、髙木歯科自由が丘クリニック院長・髙木謙一先生です。髙木先生のWEBサイトは、コラムの最後に掲載しております。
1. ひきこもり
歯のケアを怠って、ひきこもり?と、驚かれる方も多いことでしょう。しかし現在、歯科業界では「オーラルフレイル(口腔機能の低下症)」が問題になっており、かなり重大な負のスパイラルが蔓延しています。
簡潔に説明すると、
1. 口腔の筋肉や活力が衰えて、食物を噛めなくなる。
2. 食物を噛めなくなると、栄養が満足に摂れず、身体機能が低下し、要介護におちいってしまう。
3. 咀嚼(そしゃく)機能の衰えにより、食事の際にむせてしまう。また、話をする際にかつぜつが悪く、発音障害も起きてしまう。
4.「食べられない」「以前のように、うまく話せない」状態になると、メンタルが落ちこみ、社会性の欠如も起こる。外出や運動も少なくなり、身体機能が低下する。
5. 結果、ひきこもりになっていく。
このような負の連鎖があるそうです。いかに口腔ケアが大切か理解できますね。
2. アルツハイマー型認知症患者の脳内から歯周病の菌を発見!
近年、認知症でもっとも多い「アルツハイマー型認知症」の方の脳内から歯周病菌が見つかったことが、話題となっています。
アルツハイマー型認知症では、脳に「アミロイドβ」というたんぱく質が溜まって発症します。この恐ろしいアミロイドβは、歯周病菌の毒素が入って増加するそう。
見方を変えれば、口腔ケアをしっかりしていると、脳が健康な状態を保てるということですね。ここでも、口腔ケアの重要性を物語っています。
3. 口腔ケアをおこたり、誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)で亡くなる人続出!
日本人の死亡原因は、一位が心疾患、二位がガン、三位が肺炎と言われています。
肺炎の中でも、特に高齢者に多いのが「誤嚥性肺炎」。これは、食物や口腔の細菌が、誤って気管や肺に流れこんでしまうのが原因です。
震災死においても、誤嚥性肺炎が最多数を占めたそう。災害時は、断水や水不足により、歯磨きなどの口腔ケアは十分にできませんよね。命を守るため、食物や寝る場所の確保に重点が置かれ、歯磨きなどはあと回しとなってしまいます。
結果、口の中の細菌は急激に増え、歯周病菌を含んだ唾液を誤嚥してしまったため、肺炎を発症する人が急増しました。これが、死につながったのです。
人工呼吸器もまた、殺人兵器となってしまう場合があるそうです。
新型コロナウィルスでウィルス性肺炎を起こした際、人工呼吸器によって新鮮な空気と一緒に、なんと口腔細菌も肺に流れやすくなるそう。それが、人工呼吸器による肺炎(VAP)を発症してしまうのです。
命を救うはずの人工呼吸器が、口腔ケアをおろそかにしたため、細菌も肺に流れて死に至らしめる――本当に痛ましいことです。
◇ ◇ ◇
いかがでしたか? いかに口腔ケアが大切か、ご理解いただけたかと思います。
今回は3項目に絞りましたが、これは氷山の一角にすぎません。
口腔ケアを軽視していると、体調はもちろん、家族や友人とのかかわりあい、ひいては人生までをも大きく変えてしまうのです。どうか今一度、ご自身の「口腔ケア」を見直してみませんか?
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