3,030円の努力!健康ランドを朝に晩に美容的に活用してみた

新井見枝香 元書店員・エッセイスト・踊り子
更新日:2022-12-23 06:00
投稿日:2022-12-23 06:00
 書店員として本を売りながら、踊り子として舞台に立つ。エッセイも書く。“三足の草鞋をガチで履く”新井見枝香さんの月イチ連載です。今回は健康ランドのお話。かの有名な「夢の国」以上に夢の国だと思いませんか?

旅の荷物は昔から少ない派

 コロナ前の台湾旅行は、雑誌の付録のトートバッグひとつだった。旅の荷物は少ないに越したことはない。何も、アマゾンの奥地へ旅立つわけではないのだ。

 しかも今回の目的地は、パスポートもいらない大阪の布施。近鉄線に乗れば、ほんの数駅で繁華街「ミナミ」に繰り出せる都会だ。駅ビルには100円ショップとマツキヨがあるし、ネットさえ繋がれば、たいていのものはアマゾンから取り寄せられる。マツキヨで買えないケラスターゼだけ、滞在先に届くようスマホで発注しておけばいい。

 高校生の頃、ビジュアル系バンドの追っかけで、仲間たちと日本全国を旅していた。時にはツアーのほとんどを制覇すべく、1年の3分の1ほど、学校を休んだこともある。

 観光が目的ではなく、バンドが目当てなので、食事も宿泊も行き当たりばったり。わずかな情報を頼りに現地を飛び回るから、荷物は最小限が理想だ。

 身ひとつで新幹線に乗っても何とかなる、ということを、私はずいぶん昔から経験として知っていたのである。

踊り子の遠征費用は自己負担

 布施にある劇場で10日間、ストリップの仕事をすることが、2日前に決まった。こういう突発仕事は珍しくない。仕事で使う衣装や小道具を段ボールにまとめつつ集荷を呼び、最低限の日用品は、使い終えたものから鞄に放り込む。

 会社の出張なら、経費でそこそこそのビジネスホテルに泊まれるが、踊り子としての遠征は、基本的にすべて自己負担だ。

 収入を考えると、楽屋に寝泊まりさせてもらうのが、一般的だろう。部活で学校に泊まり込んで練習する、お金のかからない合宿みたいなものだ。

 その場合、ホテルと違って、使った分だけ補充されるタオルはないし、ごみ箱にかけるビニール袋から綿棒の1本まで自分で用意しなければならない。滞在が10日間ともなれば洗濯用洗剤も必要だ。

背に腹は代えられないドライヤー問題

 どこでも買える安価な日用品を、いちいち鞄に詰めて運んでいたらキリがないから、現地で買うべきものをスマホにメモする。ドライヤーはないと困るから、軽量コンパクトな携帯用を持参すべし。

 しかしぼんやり温かい風を発生させるだけのそれを10日間も使い続ければ、乾かす時間が膨大にかかり、おまけに髪の健康を損なう可能性がある。髪の美しさは踊り子にとって重要な要素だ。できれば素早く乾いて、髪にやさしいものを使いたい。

 劇場での仕事を終えた後、近くのホルモン飲み屋で1皿132円の鉄分とコラーゲンを摂取したあと、楽屋には戻らず、近くの「N健康ランド」へと向かった。入場料金と深夜料金を合わせて3,030円。それで24時間滞在できるという。

 そこいらのビジネスホテルより、だいぶ安い。しかし楽屋に泊まれば、かからない費用だと思うと、贅沢をしているようで後ろめたい。

 そこで私は、この3,030円を帳簿的に「宿泊費」ではなく「美容代」として落とすべく、最大限美容的に活用することにした。これは怠慢ではなく、努力なのだ。

新井見枝香
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元書店員・エッセイスト・踊り子
1980年、東京都生まれ。書店員として文芸書の魅力を伝えるイベントを積極的に行い、芥川賞・直木賞と同日に発表される、一人選考の「新井賞」は読書家たちの注目の的に。著書に「本屋の新井」、「この世界は思ってたほどうまくいかないみたいだ」、「胃が合うふたり」(千早茜と共著)ほか。23年1月発売の新著「きれいな言葉より素直な叫び」は性の屈託が詰まった一冊。

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